我ら幸福なボタン押し人間
ボタンを押している間だけ
夢を見る


 ■■ 1 ■■
「六つめの国?」
訝しげな表情で聞き返すクロノアにロロは答えた。
「ええ、大巫女さまが調べてきなさいって……。」

ミラ・ミラを抜けて遥か北、クロノアとロロは何も無いはずの場所へ向かっていた。
雪はもう無く、荒れ果てた黄色い砂混じりの荒地に岩が転がる荒涼とした景色。真っ青に
晴れた空を幻獣バラディウムが菱形の黒いシルエットをくねらせてゆったりと飛んでいく。
誰かに操られさえしなければ幻獣はひどくおとなしい生き物で、こんな誰も知らない土地
を一人で生き抜いていく静かで力強い生物だ。
ここは、まだ名も無い地だった。

「ラ・ラクーシャ(安らぎの国)、ジョイラント(喜びの国)ボルク(怒りの国)、
 ミラ・ミラ(惑いの国)、ヒューポニア(哀しみの国)、
 あと他にもう一つの国があるって? 一体何の国なんだろ?」
ポクンポクンと体に似合わない大きな靴で小石を蹴飛ばしながらクロノアは後ろをついて
くるロロに向かって聞いてみた。
「うーん、なんでしょうね? 喜怒哀楽に惑いに……。」
一つひとつ指折り数えながら口をすぼめ、いかにも分からないといったふうに首をかしげ
るロロ。頭の動きにあわせて帽子に刺さった小さな緑色の羽根もはたはたと揺らめいた。

突然ドバッっと激しい音が歩を進めるクロノアの背後で鳴り響いた。
驚いて振り返ったクロノアだったが、何が起こったのか把握すると額に手をあてて「ふに
ゅぅ。」と小さく唸る。考え込みすぎて足元をおろそかにしたロロが小石に躓いて顔から
まっすぐ地面に倒れこんだのだった。
「ぃ…痛ぁ〜〜〜〜〜〜〜。」
涙目で起き上がったロロはクロノアが呆れ顔で見ているのに気づくと真っ赤になって笑っ
た。鼻をしたたか打ち付けたらしく、擦りむいて血が滲んでいた。
「ロロ、鼻、ケガしてる。」
慌ててクロノアは駆け寄ると、口を開きかけたロロが声を発するより早くロロの小さな鼻
に口を寄せ、ロロの小さな鼻を牙で優しく甘噛みして押さえ、舌で傷口を舐める。
突然の出来事に顔を真っ赤にして硬直したロロの鼻の傷の血を舐め取るとクロノアは口を
離し、心配そうに顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
「ら、らいじょうふれふ…っ!」
ヨタヨタとクロノアから身を離し、慌てて鼻を両手で覆い隠しながらロロは鼻声で言う。
ザリザリしたクロノアの舌の感触がまだハッキリと鼻先に残っていた。そのことを意識す
ればするほど頭に血が昇ってくる。なんとか別の事を考えようと視線をさまよわせたロロ
の視界に突然真っ黒なものが飛び込んできた。
「あ…クロノアさん、あれ……」
ロロの指差す方向を振り返ると、遠く、岩だらけの地平の先に真っ黒な塔が立っているの
が見えた。
クロノアの手に掴まれた大きなリングが、キラリと輝いた。

 ■■ 2 ■■
「この塔、かな? 六つめの国って。」
塔の下、巨大な扉の前にたどり着いた二人は、その天まで届きそうな塔を見上げていた。
遠目には真っ黒に見えたその塔は、近くで見てみると精緻な彫刻が刻み込まれていた。
巨大な巻貝や二枚貝、優美なヒレをはためかせる魚、ヒトデやイソギンチャクやクラゲの
レリーフ。あらゆる海の生物が、黒い岩で作られた塔の表面にびっしりと刻み込まれてい
た。周囲を見回しても、荒れ果てた大地が地平線まで広がるまっ平らな風景の中でこの真
っ黒な塔だけが異彩を放っていた。
「多分、ここだと思います。入ってみましょうか?」
魚介のレリーフを撫でながら、ロロはクロノアに尋ねた。
「うん…。それしかないみたいだね。」
うなずき、クロノアは大きな扉を力いっぱい押す。扉は存外に軽く、ゆっくり
と音も無く開いた。扉の隙間から外気とは違う、湿った空気があふれ出してくる。
「誰がいるか分からないから、気をつけてね、ロロ。」
クロノアはロロの手を取ると、人ひとり分だけ開いた扉を慎重にくぐり抜けた。

「わぁ……★」
二人は一斉に歓声を上げてしまった。真っ黒な塔の中は、まるで海の中のようだった。
マリンスノーのような小さな薄緑色の冷たい光の粒が漂い内側もまた魚介のレリーフでび
っしりと埋め尽くされた真っ黒な塔の壁面を照らし出し、その中を真っ白な魚が何匹もふ
わふわと泳ぎまわっていた。
周囲にあるのは空気のはずなのに、魚が身をくねらせるたびに小さな泡が湧き上がり、立
ち昇っていく。魚たちの鱗が薄緑の光に照らされて、キラキラと輝いていた。
「まるで水の中にいるみたいですねぇ★」
空中を泳ぎまわる魚たちに見とれながら言うロロの声が壁面に反射してこだまする。
「うん……そうだねえ。」
昔、ジャグポットで助けた金色の小さなカラルを思い出し、クロノアも相槌を打った。

一歩踏み出したとき、クロノアの鼻を不思議な匂いがついた。
「ふにゅ? この塔の中、なんかヘンな匂いするね。」
目を閉じ、鼻をヒクつかせながら言うクロノアを見て、ロロも鼻にまわすように空気を大
きく吸い込んだ。
湿った空気の中に、有機物が入り混じって饐えたような、磯のような匂いを感じる。
「そうですね……海の匂い…かな、でもちょっと違いますね。
 どこかでこの匂い、かいだことあるような………?」
ロロも鼻をヒクつかせながら言う。ちょっと不愉快だけど、なぜか体が熱くなるような匂
い。
「ここが六つめの国なら、王様がいるはずだよ。
 その人に会えば何か分かるんじゃないかな?」
なおも鼻をクンクンと動かしながら歩いていくクロノアの足元で薄緑の光を反射してパチ
パチと目を刺す物があるのにロロは気が付いた。近寄ってしゃがみこんで見てみると、そ
れは、夢の欠片。

淡い青色のその結晶は、周囲の光を吸い込みながら、息づくように輝いていた。
(綺麗な夢の欠片……誰の、夢?)
拾い上げて片手で漂う光にかざし、覗き込んでみる。
人々が見る夢が結晶してできる夢の欠片は何かの気候の条件次第では結晶化が甘くなり、
覗き込むと元の夢の中身を見ることができる。それは見も知らぬ誰かの子供の頃の記憶だ
ったり、また訪れたことの無い土地の風景だったり。
ロロはそんな夢を見るのが好きだった。

覗き込んだ結晶の中は吸い込まれた薄緑の光が反射を繰り返し分解されてさまざまな色が
飛び交っていた。
(これは、見えないかな……?)
飛び交っては分解され、さらに様々に色に別れては散る光にちょっと目眩を感じながら、
それでも眺めているとうっすらと何かの景色が見えてきた。
(どこかの海の景色……。)
そこまで思ったところで、欠片の中の視界が移動する。そこに映し出されたものを見て、
ロロはカっと顔に血が昇るのを感じた。慌てて夢の欠片から目を離し、誰もこちらを見て
いない事を確認すると急いで襟元から拾った夢の欠片を服の中にしまいこんだ。
(なんで、なんでこんな夢……?)

「ロロー、どうしたのー?」
先を進んでいたクロノアとはだいぶ距離が開いてしまっていた。
心配そうにロロを呼ぶクロノアに、慌てて駆け寄って追いつく。
「いえ、何でもないです。何でもないです。」
視線をそらして笑うロロを、クロノアは訝しげに見ていた。

塔の内壁はレリーフの合間を縫うようにクネクネと螺旋階段が遥か上空へ向かって伸びて
いる。これ以外は全てレリーフで埋め尽くされ、部屋も扉も何も無いようで、この螺旋階
段を登っていくしか道はないようだった。
「ふわぁ〜……なっ…………がいねぇ〜、この階段。」
真っ暗な上空へ細く消えていく螺旋階段の先を見上げながらクロノアはこれを登る苦労を
考えて嘆息した。
「でも、行くしかないですよ。」
白銀に輝いて遊ぶ魚たちの中、クロノアとロロの二人は階段に足をかけた。

 ■■ 3 ■■
「ふにゃぁ〜……終わらないねぇ。」
「はぁ…は……先は…長そうです、ね……。」
いつまでもいつまでも続く階段だけの単調な景色に飽き飽きした声でクロノアは呟き、ロ
ロは息を切らせながら答える。
登りの途中途中にある踊り場にいくつかの扉を見つけ開けてはみたものの、そこはやはり
レリーフで埋め尽くされた、狭い何も無い部屋ばかりだった。
「なんなの?この塔。」
また目の前に現れた踊り場にもううんざりだという調子でクロノアは壁に寄りかかり座り
込む。ロロもクロノアのすぐ隣にへたりこんだ。

息を切らせ、肩で息をつくロロの上気した甘い匂いがクロノアの鼻をくすぐる。
運動して体温が上がったロロの体臭は、クロノアの鋭敏な鼻には強すぎる匂いだ。
(女の子って、いい匂いするよね……★)
そんな事を考えながら匂いに注意を払うと、ロロの匂いに混じってまたあの匂いが鼻につ
く。
(またこの匂い。塔に充満してる。
 そこらを泳いでる魚の匂いでもないし、一体なにこれ……?)
決して不愉快な匂いではなく、何か身近な気のする匂いなのだが、何か背中の毛を逆撫で
されるように気を散らす匂いだ。
「本当にいつまで続くんでしょうね、この階段。」
ようやく息が整ったロロが、まだまだ続く階段を目でなぞりながら言う。

真っ白な魚は泡をポクポクと散らしながら、光の粒を尾でかき揺らしてゆったりと空中を
漂っている。今度は視線を魚に移し、ユラユラと昇ってゆく魚を追いかけていくと遥か先
の方に、薄っすらと赤い光がチラチラと揺れているのに気が付いた。
「クロノアさん、あれ…あのずっと上の赤いの。」
クロノアも上を見上げ、白い魚と薄緑色の光の粒の合間から赤い光が見えるのに気が付い
た。
「あれ………ベル?」

たどり着いてみると、それは確かにベルだった。
長い長い階段の果て、一際広い最後の踊り場にたどり着いた二人の頭上、塔の天井と思し
き場所に、赤い、黒いまでに赤い、験しの鐘を同じくらいの大きさの小さな鐘が釣り下が
っていた。
「じゃあ、やっぱりここが、六つめの国なんですね。」
「そうみたいだね……鳴らしてみる?」
クロノアは持っていたリングを指先に引っ掛け、くるくると回しながらロロに尋ねる。
「うーん、それしかないですよね。」
ポウ、とロロの体が輝くとクロノアの持った指輪の中に吸い込まれる。
「やってみましょう、クロノアさん。撃ってみてください。」
リングの中からくぐもったロロの声が響く。

クロノアはリングを構え、まっすぐ鐘に向け、力を込める。
ロロの霊力がそれを増幅し、リングが挟み込んだ大きな宝石の周りの空気が揺らぐ。
それは宝石の中央に集まり渦を巻く空気の玉になる。
クロノアの手をビリビリと揺らしながら渦巻く玉をまっすぐ鐘に狙いを定めて放つ。
巻き起こった風が、クロノアの大きな耳をはためかせた。

グオォォォォォォ……………………ン。

風だまに弾かれた鐘は大きさに似合わない音で響き渡る。他の国の鐘のような澄んだ音で
はない、何か禍々しい、全身を震わせるような低い音だった。
「Happy birthday to you,
 Happy birthday to you,」
壁に反響しまだ鳴り続ける鐘の音に混じり、小さな歌声がどこからとなくクロノアの大き
な耳に紛れ込んでくる。
「クロノアさん! 後ろ!」
リングから飛び出してきたロロの声に驚いて振り返ってみると、今までレリーフで埋め尽
くされていたはずの真っ黒な壁に金で縁取られた木組の黒く重厚な扉が立ち現れるところ
だった。まるで漆に金を流すように、扉の金縁がレリーフの中に流れ、扉の形を作ってい
く。レリーフは揺らめき壁に吸い込まれ、木組みに変わっていく。
「Happy birthday dear children,
 Happy birthday to you……♪」
歌声はこの扉の向こうから聞こえてくる。
クロノアはロロを守るように前に立つと中腰に身構え囁いた。
「ロロ、行くよ。」
「…はい。」
クロノアは突然現れた扉に手をかけると、ゆっくりと押し開いた。生ぬるい、色に例える
ならばまるで薄紫色がかったような重い空気が真っ暗な扉の隙間から流れ出し、床を這う
ように広がっていく。

 ■■ 4 ■■
「おめでとう、今【ぼく/きみ】が生まれた。」

そこは他の部屋よりも暗く、魚もいない広い部屋だった。
扉を開いた時、いくらか外から迷い込んだ光の粒が部屋をうっすらと照らし出す。塔の他
の部屋と同じようにギッシリとレリーフで埋め尽くされた部屋の中央に据えられた、これ
も魚介を模した文様に覆われた玉座の上に、猫のような姿の少年が座っていた。
猫に良く似た、しかしそれよりも長い耳をたらし、黒い体毛に目から下の体前面と手足の
先だけが白い獣の姿をしている。何より目立つのは額に白く抜かれたハートマークのよう
な模様と、白い部分がまったく無い、吸い込まれそうな烏羽玉の瞳。
                
「第六の国、リビディアへようこそ【ぱとむるよーな/黒き夢の旅人/クレアの血統】。
 僕がこの国の王、【グロッタ/洞窟/ニンフ】だ。」
グロッタの声は時折いくつもの言葉が重なるように聞こえ、ひどく聞き取りづらい。この
部屋に充満する重い空気がなおそれを聞き取りづらくさせている。
そしてこの匂い、塔に充満していた匂い。あの背中を逆撫でするような匂いがさらに濃く
漂い、クロノアの聞き取ろうとする気を散らし続ける。

「あ……この匂い……は…。」
クロノアの隣に立っていたロロがそこまで呟くと、それ以上の言葉を紡ぎきれず、くずお
れ、床に倒れこんだ。
「ロロ!」
慌ててロロの側にしゃがみこみ、様子をうかがうクロノア。ロロは視線を宙に漂わせ、
お腹に手を当て背を丸め、まるで腹痛にでも耐えるように痙攣している。
「ロロに何をした!」
リングを構え牙を剥き、グロッタに向かって叫ぶ。
「別に、何も。」
視線の定まらない黒い眼がフッと細まり、不思議な笑みの表情に変わる。
「本当に、別に、何も。ただ僕のたれ流す精気にあたっただけだ。彼のように。」
真っ黒な瞳が光を反射してぬるりと揺らめく。視線が移動したらしい。その視線の先の暗
闇から、緑の獣がおぼつかぬ足取りでグロッタに歩み寄ってくる。緑色の体毛、長い耳、
年のころはクロノアと同じくらいの真っ赤な瞳の。
哀しみの王だった。

永い哀しみにもう癒えることの無いその真っ赤な瞳はうつろに、ほのかに笑みを浮かべて
グロッタに歩み寄り跪く。迷うことなく玉座に腰掛けて無造作に足を投げ出したグロッタ
の股間にその顔を埋め、鼻先をうごめかせてグロッタの体毛をかき分け、恍惚の表情を浮
かべながら埋もれていた性器を口に含んだ。

「まったく【ぼく/きみ】は【素晴らしい/いやらしい】じゃないか。」
グロッタはなお目を細め、足の間から伝う刺激に痺れるように大きなため息をつく。哀し
みの王の舌に弄られながらそれはみるみる充血し体毛を押しのけて勃ちあがっていく。
鈍いピンク色に染め唾液に濡れたそれは哀しみの王の唇に挟まれてヒクヒクと脈打ってい
る。

グロッタの性器を口で愛撫する哀しみの王の尻はクロノアに向けられ両腿をこすり合わせ
るように蠢く。柔らかなにこ毛の途切れるお尻の中心ではピンク色のすぼまりが求めるよ
うに開いては閉じを繰り返し、閉じられた腿の合間からはこれも充血した性器が見え隠れ
する。先端からあふれ出した透明な粘液は、内股を濡らして糸を引いている。

眼前でこんな情事を見せ付けられたクロノアは、あまりの情景に身動きもできず、まんま
るに目を見開いたまま硬直していた。
哀しみの王は大きく口を開け、充血し血管の浮き上がったグロッタのものを躊躇なく口に
含み舌を絡める。こもった水音と共に哀しみの王の頭が上下すると、口を半ば開きだらし
なく舌をたらしながらグロッタは腰を突き出し肘掛に腕を置いて体を支え、玉座から半ば
ずり落ちるような体勢で腰を動かす。哀しみの王の口に含まれたそれは、唾液と絡み合っ
てジュポジュポと激しく上下した。
喉の奥まで突き込まれる硬い陰茎に気道を塞がれ苦しげに途切れ途切れな息をつく哀しみ
の王は、それでも嬉しそうに、口の中で激しく動くそれを愛しそうに舌を絡め、舐めあげ
ていた。

「さ、もういい。クロノアのところへ行っておあげ。」
股間に顔をうずめている哀しみの王の両耳を掴み引き上げ、グロッタは哀しみの王の頭を
上げさせる。口の中からずるずると陰茎が引き抜かれ、グポッという音と一緒に勢いよく
跳ね上がり、先端から漏らしていた粘液の糸を飛ばした。グロッタは哀しみの王をそのま
ま立ち上がらせ、背中をポンと押し出す。
その勢いに押されるままに、哀しみの王はふらふらとクロノアに歩み寄っていく。

「か、哀しみの王………?」
クロノアは哀しみの王に呼びかける。哀しみの王は唇を唾液で濡らしたまま、欲情に潤ん
だ瞳でクロノアを見据え近寄っていく。足の間から立ち上がったそれの先端からは透明な
粘液をぱたぱたと滴らせ、哀しみの王の歩く軌跡を床に印す。
「クロノアぁ…………。」
哀しみの王はクロノアの肩に手をかけるとそのまましなだれかかるように首に腕を回し抱
きついてくる。
「ねぇ……クロノアぁ、僕の、してよぉ……★」
哀しみの王の荒い鼻息がクロノアの耳元の毛を揺らす。腰をくねらせてクロノアにこすり
つけると、哀しみの王の固くなったそれも押し付けられズボンの表面を撫で回し、漏らし
た粘液で汚していく。
「だ、ダメだよ哀しみの王! アイツが…!」
哀しみの王の体を引き離そうとするクロノア。しかし足の間に割り込ませさらに体を密着
させようとする哀しみの王の腿にバランスを崩し、そのまま後ろに倒れこんでしまう。
「わにゃ!」
二人分の体重を乗せ硬い石の床にしたたか背中を打ちつけたクロノア。痛みに顔を歪ませ
るクロノアにはお構いなしに、哀しみの王はそのまま体を上にずらし、クロノアの首に顔
をうずめ腰を上下させ、自分のものをクロノアのお腹にこすりつける。

「【まーむ/歌姫】レフィスの子守唄を聞きながらいつまでも
 【眠っていれば/遊んでいれば/安らいでいれば】よかったものを。」
グロッタは哀しみの王に押し倒されたクロノアを一瞥すると玉座から立ち上がり、お腹を
押さえたまま震え続けるロロに歩み寄る。
「今、楽にしてあげるよ。」
ロロの手を取り仰向けにさせると、グロッタはロロの襟元に自分の爪をかけ、そのまま一
気に上着を引き裂いた。
「なにをする!」
哀しみの王にしがみ付かれ動くに動けないクロノアが叫んだ。
「楽にしてあげる、だけだ。」
薄暗い部屋の中でロロの、まだ幼く膨らみきらない小さな乳房となだらかな腹、そこにく
ぼんだ小さなへそがあらわになる。
破れた服の胸元から、チンと澄んだ音を立てて何かが零れ落ちた。それは石の床にカラカ
ラと転がり、淡い青の光を散らした。グロッタはそれを拾い上げ、ふんと鼻を鳴らす。

「哀しみの王も、こんな夢の欠片をもっていたよ。」
拾い上げた夢の欠片を目元まで引き寄せ覗き込みながら、残った手を伸ばし、ひらを上に
かざす。ポウ、とその手が輝くと、その光は渦巻くように収束する。光が消えた手のひらの上
には、もう一つの夢の欠片が乗っていた。

「ルーナティアにロロがいる。これがどういうことか分かっているか、クロノア。
 キミは成長しているんだ。
 ヒューポーと別れ、それを忘れ、【ファントマイル/現実】を生きて……。
 自分とは違う人間が、異性というものがいるということに気づいた。」
両手に一つずつ持っている夢の欠片を転がしながらグロッタはなおも語る。
「そしてロロが現れた。キミの世界に「女性」が現れたんだ。
 ジャングルスライダーでのことを覚えているかい?
 タットを捕まえて、でも慌てて離してしまった時のこと。
 哀しみの国の丘でのことを覚えているかい?
 ロロを抱きしめ、頭を撫でてやったこと。」
両手を傾ける。夢の欠片が転がり落ちる。
「そしてキミは【気づいてしまった/芽生えてしまった】。」
淡い青の光の軌跡がグロッタの手のひらから下に延びていく。

「そして、夢見て、しまった。」
グロッタの足元の硬い石でできているはずの床が揺らめき、二つの夢の欠片はトプンと音
を立て、小さな黒い飛沫を立てて床に沈んでいった。

クロノアの視界が揺れる。

■■ ユメヲ、ミタ ■■
「僕」は哀しみの国の海岸の丘の上に立っていた。
遠い波の音と潮風が僕の長い耳を心地よくくすぐり、一本だけ立っている木はサヤサヤと
揺れていた。
海の上にポッカリと浮かんだ哀しみの国の、傾き今にもくずおれそうな廃墟は、晴れた空
の下、あの永く暗い哀しみから開放されて安らいでいるように見える。
黒い体、両手にはめた大きな手袋。「僕」は夢見る黒き旅人、クロノア。

「レオリナさん、哀しみの国を建て直すって張り切ってましたね。
 私もがんばらなきゃな……。」
そう言って僕の隣に立ち、ロロは微笑んだ。遠くレオリナの飛行機が、ふるふるとエンジ
ン音で空気を揺らしながら飛んでいく。ロロの帽子に刺さっていた小さな羽飾りは、今は
もう無い。
「巫女の資格、返しちゃったんだ……。」
僕は言った。
でも、それでいいんだと思う。潮風に顔をなぶらせるロロの横顔には、はっきりと強い意
志が見えた。臆病で内気な自分に惑いながら、さ迷うこともない。そう、あのミラ・ミラ
の人たちのようには。験しの鐘ももうきっと、一人で鳴らせるだろう。
ポプカは木陰でさっきからずっと昼寝している。こいつも口は悪いし、適当だし、強引だ
けど、いいヤツだから。きっとロロのいいパートナーになるだろう。

ディン・ダン・ドゥ。
全ての鐘も鳴り終えた。僕はもう、行かなくちゃ。
振り返り、一歩踏み出す。

「お別れ…なんですね…。
 そうですよね……ルーナティア、クロノアさんには別の世界ですもんね。
 ……帰る場所、ちゃんとありますもんね。」
後ろから聞こえたかすれ気味なロロの声が、くっと、僕の耳を引いた。
「ロロ……。」
「大丈夫、へっちゃらです。
 へっちゃらです。私、がんばれるから……。」
振り返った僕の視界いっぱいに広がったロロの顔。いくつもの、今にも表に噴出しそうな
感情を抑えつけ、唇の内側を噛み締めて、無理矢理作った笑顔。でもそれも長くは続かな
かった。
抑えきれずに弾けて、柔らかい重みが、僕の体にぶつかってきた。抱きついてきたロロが、
ロロの感情が重かった。
「お別れしなくちゃいけないのは分かってるけど……
 それでもイヤです……イヤなんです………っ!」
パタパタとロロの涙が僕の肩口を濡らした。嗚咽するロロの息が耳元で聞こえる。

でも僕は行かなきゃいけないんだ。ここは僕の世界じゃないから、いたくてもいられない
から。僕はロロを抱きしめたまま、小さく首を横に振った。僕の背中をつかんだロロの手
に、ギュっと力が入る。
「クロノアさん…………一つだけ、
 お別れの前に一つだけお願いがあるんです。」
つかむ手にますます力がこもる。勇気を振り絞って、震える唇で、ロロはそう言った。
「なに?」
「最後に、私と二人だけの思い出……。
 クロノアさんと一緒にいた思い出を、ください……。」

顔を離し、真正面から僕を見つめるロロは、僕の腕をそっとつかみ、自分の足の間に引き
寄せた。ロロの足の間は暖かくて、タイツとパンツの布越しにクシュ、と湿った感触。
「でも、ポプカが……。」
チラっと横目で見るとポプカは後ろを向き、大きな手でまるで猫みたいに顔を伏せてまだ
眠っていた。

「あの子、一回寝たらなかなか起きないから…大丈夫。
 私、巫女になっちゃったらもうこういう事、できないから……だから……
 お願いします、クロノアさん………。」

羞恥でおぼつかない足取りで二、三歩僕から離れると、ロロは後ろを向き、顔を伏せたま
ま、タイツとパンツをまとめてゆっくりと脱ぎ出した。あらわになったロロの小さく柔ら
かそうなお尻がタイツを脱ごうと左右にフルフル揺れるのを見て、僕のズボンの中も充血
し、勃ち上がるのを感じた。
全てを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になったロロは、ゆっくりと草地に腰を下ろして、そのま
ま横になる。内股で大切なところを隠すようにして、唇を引き締め必死に羞恥に耐えなが
ら僕の方を、潤んだ薄目で見つめた。
「ロロ、お別れするのは僕だってイヤだし、こんなことしたら
 ますますお別れしたくなくなっちゃうけど……。」
僕も手袋を外し服を脱ぎ……ロロの前でこんな格好するのは凄い恥ずかしかったけど、ズ
ボンを下ろして裸になると、ロロの上に覆いかぶさった。
ロロの体毛の無い白い肌はすべすべしていて暖かい。恥ずかしくて耐え切れないのか、大
きな耳まで真っ赤にして、プルプルと震えている。手探りで下半身をまさぐり閉じられた
足の間に手を割り込ませ、柔らかな恥丘を指先で探り当て、指先で感触を確かめる。
「あっ……」
ピクンと肩をすくめ、さらに身を固くするロロ。
「大丈夫だから、ロロ……ね?」
下半身をまさぐる手はそのままに、涙ぐんだロロの目を見つめ、ゆっくりと唇を重ね合わ
せた。舌で唇を押し開け、ツルツルした歯の間に滑り込ませると、ロロは脱力したように
口を開き、そのまま舌を絡ませてきた。
「ん……ん…。ふぅ…っ。」
緊張で固く、不器用な舌の動きで、それでも一生懸命僕の舌を探り当て、絡んでくる。
暖かく湿ってねっとりした舌の味と感触が、僕の感情をより高めてくる。ロロの腿に押し
付けられていた僕のものは前にも増して硬くなっていく。

ロロもそれに気づいたらしく、体から力が抜け、足を動かして僕のものを押し上げ、感触
を確かめるようにこすり付けてくる。ロロのスベスベした腿と僕のフワフワのお腹の間に
挟まれ揉みしだかれ、チリチリと痺れるような感触がダイレクトに頭に伝わってくる。
「ね……ロロ…………もう、いいでしょ?」
体を離し、ロロの膝をつかむと左右に力を込める。脱力したロロの足は、あっけなく開か
れた。
目の前にあらわになったロロの足の間の大切なところはまだ幼く締まり、細いスリットの
隙間からわずかにピンク色の肉を見せ、それでも精一杯僕を受け入れるために濡れていた。

「や……クロノアさん、そんなに、見ないで……。」
両手で顔を伏せ、指の隙間から潤んだ瞳でこちらを見つめながらそう言うロロはなんだか
とっても可愛くて、愛しくて。
「ごめん…でも見ないとできないから…ごめんね。
 ちょっとだけ…ちょっとだけガマンして………。」
手を添えて僕の先端をスリットに押し当て、ゆるゆると上下にこすり付ける。ロロの漏ら
した透明な液体が絡みつき、僕の先端からロロのそこの間に透明な糸を引いた。
位置を定め、僕のピンク色の充血した先端を押し込むと、ロロの柔らかな恥部はゆっくり
と開き、僕のものを飲み込んでいく。
「あ…あ…クロノぁ……さんの、が……。」

「このまま、最後まで挿れるよ? いい?」
荒い息を整え覚悟を決め、口元を引き締めて、ロロは小さくうなずいた。僕はもう一度、
入り込んだ先端が抜けないように注意しながら覆いかぶさると腰を最後まで落とした。
草の上に赤い雫が、一つ、二つ。

* * * * *

「ミャーナ! レオリナ見てみてあそこ!
 クロノアとロロがしちゃってるし! あんなとこで!
 アオカンってゆーの!? キャーやらしー! キャーやらしー! キャーやらしー! 
 白いのと黒いのが! キャー!」
飛行機の後部座席で双眼鏡を覗きながら、余った手をグルグル回してタットが叫んだ。
「あーいいな!いいな! クロノアと! いいな!
 あたしもー! あたしもー! あたしもー!」
双眼鏡はしっかりとクロノアたちの方へ向ける器用さを駆使しながらタットは後部座席で
ジタバタと転げまわった。飛行機がバランスを崩しグラグラと揺れる。
「……ほっとけ。」
レオリナは操縦桿を握ったまま、一瞥もせずに進路を90度転換する。
「ギャー見えないしー! 翼邪魔ー! レオリナちょっと曲がってー!」

(哀しみの王も、男なんだよな……)
タットの文句を聞き流しながら、ふとレオリナはそんなことを考え、
あわててかぶりを振ると、両手で自分の頬をパンと張った。
「哀しみの国を建て直してからだ!」

* * * * *

「いった……痛い…痛…いぃ………。」
ポロポロと涙をこぼしながらロロは歯を食いしばる。僕のものを根元まで押し込まれたロ
ロのそこからは血のすじが垂れている。
「だ、大丈夫、ロロ?」
あまりの痛がりように僕は動くに動けず、抜き差しならないままロロに問いかけるしかで
きなかった。
ロロは引き裂かれるような痛みに耐えながら、途切れとぎれにつぶやく。
「だ、大丈夫、ですから……そのまま、動い、て……。」
「でもロロ…。」
「大丈夫だから!」
思わず引ける僕の腰を両足で絡め、押さえつける。勢いで僕のものはロロの中にさらに深
くめりこんだ。
「いっ……う……大丈夫だから……
 この痛みもクロノアさんとの大切な大切な思い出だから……
 だから…最後まで……お願い…………っ。」

「う、うん。分かったよ…。」
僕はゆっくりと腰を動かす。それでもロロは僕のもので膣内がこすられる度に歯を食いし
ばり声にならない悲鳴をあげる。
「ロロ…これじゃ、ロロが……。」
「いいんです……いいんです……私の…中に、
 ちゃんと……クロノアさんの、ください…。」
僕は気後れしながら、でも頷くと、大きく腰を動かした。痛がるロロを見ちゃうと心配で
気後れするから、何も考えないように、無心に。
歯を食いしばるロロと僕の荒い息と、つながった場所から漏れる水音だけが、波の音に混
ざっていった。
足の付け根あたり一体がむず痒いような感覚に襲われ、ロロの中にもぐりこんだ僕の茎の
中を何かが上ってくるような感触。
「う…ぁ…ロロ…僕っもうっ……いい?」

歯を食いしばったままのロロが強く頷くと同時に、僕はロロの中で精液を迸らせた。ビク
ビクと腰が震え、二度、三度、四度とロロの中に放つ。
全てを出し終えると僕は自分の体を支えきれず、そのままロロにのしかかった。僕は汗び
っしょりのロロの熱い体の上で、ロロの匂いをかぎながら脱力に身を任せるしかなかった。

ずるっ、と、柔らかくなった僕のものが、ロロから抜け出し、赤い雫だらけのロロの大切
な場所から、白く濁った液体がロロの呼吸に合わせるようにあふれ出し、草の上に流れ落
ちていった。

* * * * *

服を着込んだ僕たちはなんだか照れくさくて、お互いの顔を見れず二人して背中合わせに
寄りかかって座っていた。背中がホワホワと温かい。

「夢見る黒き旅人…クロノアさん、名前のとおり全身真っ黒だったんですね。」
背中ごしにロロが恥ずかしそうに言った。僕もさっき見たロロの真っ白な裸を思い出して、
なんだか自分の毛だらけで真っ黒な姿が恥ずかしかった。

「ありがとう、クロノアさん、思い出、大切にしますね。
 痛くって痛くって涙が出たけど、私、がんばれました。
 だから、大丈夫です……よね……。」
「うん……。」
僕はそれしか言えなかった。ロロはすっと立ち上がった。いきなり支えを失ってよろけな
がら、僕もつられて立ち上がる。
「それじゃぁ、お別れです。クロノアさん、元の世界に戻ってもお元気で!」
お尻についた草を払いながら、ロロは明るく微笑んだ。
「うん、ロロも……巫女試験、がんばってね。」

ホワン、と景色が歪んだ。水面に波紋が広がるように揺れる景色の端で、ポプカは後ろ向
きで顔を伏せたまま、肩をヒクヒク震わせていた。

しょうがないだろ、笑うなよ。
………初めてだったんだから。

■■ ユメヲ、ミタ ■■
朽ち果てた廃墟の中で、あの子は一人佇んでいた。
「僕」はもう幾度ここに訪れたろうか。求められても求められても、「僕」にはあの子を
助けることができなかった。だから真っ赤に泣きはらした瞳のまま、今もあの子は夢の底
でつぶやき続けている。
「ラクルドゥ……ラクルドゥ……。」
そう、今度こそ「僕」はあの子を助けるんだ。
「僕」は夢見る黒き旅人、クロノア。

「ようこそ、ぱとむるよーな……夢見る黒き旅人。」
真っ赤な瞳が僕を見据える。緑色の長い耳がフワリとはためいた。耳をつんざくような音
とともにその子…哀しみの王…は浮かび上がった。
「世界の責任を取るんだクロノアァ──────!」
目の前が黒く染まる、青い哀しみがマーブルに流れる、哀しみの王の心の中。世界を拒絶
する貝殻の中に閉じこもったシェルモード。もう何度も経験した拒絶。
風だまで捕らえた敵を僕は幾度も幾度も投げつける。ボードで疾走する僕の耳にビュウビ
ュウという風切音に混ざって聞こえてくる、かすかな、苦しげな、うめき声。
もう苦しまなくていいんだ、哀しみの王。僕は、助けにきたんだ。助けたいんだ。
力いっぱいに捕まえた敵を投げつける。衝撃に耐え切れなくなった哀しみの王の貝殻は、
キィンと澄んだ音を立てて砕け散った。

* * * * *

廃墟の、多分元は王の間だったのだろう廃墟の中央で哀しみの王はうめく。
「うぅ……なぜ哀しみを嫌うんだ……なぜ僕を受け入れてくれないんだ……
 僕は、僕はこの世界にいちゃいけないのか!」
床に手をついて歯を食いしばり、震える哀しみの王。
堪えきれぬ哀しみの果て…もはや怒りとも見分けのつかぬそれを…天を振り仰ぎ解き放つ
「ア゛アァァァァァ───────────────────
 ────────────────────────ッ!」
閃光と絶叫と共に彼は緑色の卵殻に包まれる。スフィアモード……また、哀しみの王は閉
じこもる。

「ずっと呼んでたのに!なんでそうやって閉じこもるんだ! 出てきてよ!」
僕がどんな大声で叫んでも卵殻の中の哀しみの王には届かない。
あの殻を破らなければ、触れなければ。
僕を拒絶しようとする手段がまた同時に彼の弱点なのも分かっている。僕を追い出すには
僕に触れなければならない。そのために開いている外界との接触点、あの光る球体。

「えるなぷるとぅ!えるなぷるとぅ!えるなぷるとぅ!」
叫びながら叩きつけてくる爪を風だまで切り離し、光る球体めがけて投げつける。
ピッ、とヒビが入る音が聞こえて、最後の卵殻が、
哀しみの王を守る拒絶の殻が砕け散った。

ねぇ、哀しみの王、そんなに怯えた目で僕をみないで。
今まで哀しませて、ごめんね。
王の間の中央に浮かび真っ赤な瞳で僕を見つめる哀しみの王。
「らくるどぅ……助けて、助けて………。」
全ての拒絶の殻を砕かれ、怯え、ポロポロと涙をこぼしながら身を屈めるように立ち尽く
す。
それが本当のキミだね。
誰からも嫌われて、哀しくて哀しくて、全てを拒絶して。
それでも誰かに触れたくてしょうがなかったキミの。

「ゆぅらふぁ(助けに)、ぷぅ(きたよ)!」
一言、一言、間違いなく彼に聞こえるように口に出す。リングを上にかかげ、渾身の力を
込めて風だまを放つ。それはまっすぐ天井へ向かって駆け登り、五つ目の鐘を、哀しみの
鐘を鳴らした。悲しげな音色は、ルーナティア中に響き渡り、包み込んでいく。
カァァァァァァァン………。
鐘の音に包まれて、哀しみの王はゆっくりと床に舞い降りると、力なく倒れこんだ。

* * * * *

やっと触れることができたね。
僕はずっとこうしたかったんだ。キミだってそうしたかったんだ。
だって……。
「みんなそうだ……誰もが僕を忘れたいんだ。
 だから僕はここに一人でいなきゃいけないんだ……。」
僕のひざの上で誰にともなく、まるでこの世界全てに向かうようにつぶやく哀しみの王の
言葉がザクリと僕の心に突き刺さる。
でも僕はもう知ってる。キミのことを思い出して、助けたいと思ったんだ。
「もう逃げなくていいんだ。もう怖がらなくていいんだ。
 世界はもう、哀しみを忘れないよ。」
僕のひざの上で震える悲しみの王の目が、みるみる赤みを増していく。
そう、かつて「僕」はここで幾度も間違えた。
「うそつき! 今だけだ!ずっと忘れてきた!これからも忘れる!
 今まで僕を助けに来た誰もがそうだった!」
悲しみの王は叫び続ける。
「僕をまた追い出して、ラ・ラクーシャやジョイラントに逃げ込む!
 クレア母神にすがって安らぎ!ジョイラントで遊んで憂さを晴らして!
 そうやって僕をまた忘れるんだ!」

もう言葉では通じないんだ、裏切られ続け、絶望した彼には。
幾度となく彼を助けに来た「僕」がいて、たくさんの「僕」がここまで来た。そしてみん
なが彼のことは忘れないと言って……そして裏切った。哀しみの王と出会ったことをまた
忘れ、楽しみと安らぎに溺れていった。
「僕は裏切らないよ……。僕は忘れないよ……キミを、哀しみを。
 もう一人の僕。もう一人のKURO・NOIR。」

僕は、優しく哀しみの王に口付けた。フッと悲しみの王の体から力が抜ける。舌を差し込
むと、小さな白い牙に当たる。哀しみの王の舌は、一生懸命に僕の舌を探し当て、絡めて
くる。暖かく、まるで舌が今にも溶けてしまいそうな感触。まったく同じもの同士がくっ
ついて、混ざっていく感触。

「世界中の誰もが裏切りつづけても、僕だけは裏切らない。
 だってキミは僕の心の中にいて、一人ぼっちなもう一人の僕だと知ってるから。
 この世界を作ったのは僕だから、この世界を夢見たのは僕だから。
 世界が、僕が、望んで忘れ物をしたのを、知っているから。」
口を離してそう言うと、哀しみの王は僕の胸にすがって泣いた。胸元の毛の上にパタパタ
と暖かい感触が伝い、流れ落ちていく。
僕は、哀しみの王をもう一度抱きしめると、彼の足の間をまさぐる。フワフワした毛に包
まれた小さな突起を指でつまみ上げ、前後に優しくこすりあげる。

「あっ…クロノアぁ……。」
ぴったりと頬を寄せ合い、柔らかな哀しみの王の体を抱きしめる。耳元で喘ぐ哀しみの王
の息遣いがくすぐったい。哀しみの王の足の間の小さな突起はみるみる充血し、ピンク色
のツルツルした感触の粘膜を外にのぞかせていく。
「ほら、キミだって外に出たい。誰かに関わりたいんだ。
 だからもう、閉じこめないし……閉じこもっちゃ嫌だよ。」
哀しみの王の長い耳を抱きしめた片手でかきあげ、そっと囁いた。
悲しみの王は、小さく、分かるか分からないか程にうなづいた。見ているだけだったらき
っと分からなかったけど、今はこうしてぴったり寄り添っているから、だからどんな動き
も見逃さない、見逃せない。

哀しみの王はビクっと体を震わせると、身を離し、少し怯えた目で僕を見た。僕のものも、
彼のものと同じように、毛の間から顔をのぞかせていた。
「怯えなくていいよ。僕もキミと同じなんだから。
 キミが今感じているのと同じように、僕も感じているのだから。」
上目遣いに僕の目を見つめ、もう一度僕の足の間を見つめると、哀しみの王はおずおずと
また僕の背中に手を回し、抱きついてきた。硬くなった股間のものを、僕のそれに重ね合
わせてくる。先端からは、暖かくぬめった粘液が滲み出していて、こすり合わせると小さ
く水音がした。
お互い無言で腰を動かし続ける。夕暮れの廃墟の中で、荒い息遣いとチュクチュクという
音だけが聞こえていた。

「あ…っ クロノア、僕もう……なんか……出ちゃいそう…っ。」
哀しみの王の高まりをピンピンと僕も感じ取る。だって二人は同じだから。
「うん、僕も…もう出そう……一緒に、ね?」
そう言うと僕は哀しみの王の顔を引き寄せ、もう一度深くキスをした。哀しみの王の口の
中は暖かく湿っていて、荒い息が僕の口の中にも流れ込んでくる。僕の息使いも彼の中に
流れ込んでいる。
「ん…ん……ふぅ……んっ。」
「ふ…んっ…んく……ん、んっ!」

お互いの唇をついばみ、舌でお互いの中を貪りながら、僕と哀しみの王は同時に果てた。
僕の体毛の中に突き入れられた先端から暖かいものが迸り、僕の毛の下の肌に直に触れた。
僕も哀しみの王の毛の奥に向かって迸らせた。二人で射精の快感に身を任せ、腰をプルプ
ルと震わせると、抱き合ったまま、同時にペタリと床にへたり込む。
哀しみの王の出したものが、僕の下腹に暖かかった。

「クロノアぁ……。」
射精後の気だるい気分に包まれて、荒げた息の中絶え絶えに哀しみの王は僕を呼ぶ。
「うん………もっと、ね★」
僕は体を預けてくる哀しみの王を片手で支えながら背中に腕を回し、背中のくぼみを伝っ
てお尻をまさぐる。手袋越しの指先に、哀しみの王のお尻の間で小さくすぼまった柔らか
な粘膜の感触。哀しみの王の背中がピクリと震える。
「ちゃんと、一緒になろうね。哀しみの王……。」
僕はそう言うと、哀しみの王からゆっくりと身を離す。体を預けていた支えを無くし、哀
しみの王は自然に床に手をついて四つんばいの格好になる。僕は立ち上がると哀しみの王
の背後に回る。

「く、クロノア……?」
不安げに肩越しに僕を見ながら問いかける哀しみの王に笑みかけると、僕は彼のお尻に手
を添えて床に膝をつく。哀しみの王のお尻の肉をそのまま両手で押し開くと、その中央で
息づく小さな蕾に口をつけた。
ピチャピチャと小さな水音と共に哀しみの王のお尻が跳ねる。
「あっ!あっ!くろっクロノっアっ!そんなとこっ…っ!」
羞恥に震える悲しみの王の蕾に僕は舌を何度も突き込み、唾液を塗り込む。舌が中に入り
込む度に哀しみの王はビクンと腰を跳ねさせては喘ぐ。

僕は哀しみの王のお尻から頭を上げる。恥ずかしさと気持ちよさに自分を支える力を失っ
て悲しみの欧はへなへなと床にへたりこむ。僕は後ろから、ゆっくりと哀しみの王の突き
出されたお尻に寄りかかるようにして覆いかぶさる。
「僕らは、一つになるの。いいでしょう、哀しみの王?」
覆いかぶさった僕のお腹に哀しみの王の背中が当たる。その暖かい背中は震えている。肩
越しに僕の顔を見ていた哀しみの王は、それでも、小さくうなづいた。

僕はまだ硬い自分のものに手を添えて腰を動かして位置を定める。哀しみの王の小さなす
ぼまりに先端を押し当て、そのままゆっくりと腰を落とす。柔らかな哀しみの王の肛門は
僕の先端に押されて拡がり、僕のものを飲み込んでいく。
「う……う…、く、クロノアぁ……★」
哀しみの王は苦しげに、それでも歓喜を滲ませた声で僕を呼ぶ。
僕らは一つになっていく。僕のものは、深々と哀しみの王の中に入り込んでいった。
ゆっくりと僕は腰を動かす。哀しみの王を貫いた僕のものが出入りして敏感な粘膜をこす
りあげていく。
「あっ!あっ!あっ!なっなにっ!これ!」
哀しみの王が喘ぎながら言う。僕は後ろから手を回し、四つんばいになった彼の足の間を
まさぐる。僕の先端で中の気持ちいい場所を押され、ピリピリと痺れるような快感に、哀
しみの王のものもまた、力を取り戻し勃ち上がっていた。

「気持ちいい、哀しみの王? 僕と一つになって、気持ちいい?」
覆いかぶさって腰を動かし、哀しみの王のものを片手で上下にしごき上げながら、僕は耳
元で囁く。
「うん…っ! うん…気持ち………い、い★ あ、あ…っ★」
僕の愛撫に悶え、肛門から、性器から伝わってくる快感に悶えながら哀しみの王は答える。
僕は夢中になって腰を動かし、幾度も幾度も哀しみの王を貫いた。

「あ…あ……っ!ま、また……あっ!」
哀しみの王がプルプルと震えるのが密着したお腹に伝わってくる。次の瞬間哀しみの王の
腰がビクンと跳ね上がり、握っていた僕の手に濡れた熱い感触。
哀しみの王の放ったそれは、床に飛び散り、白くにごった水溜りをいくつも作る。
僕の手の中ではじける哀しみの王のそれをもてあそびながら、僕も哀しみの王の体内に熱
い液体を幾度もほとばしらせた。

射精の快感にわななき、完全に自分を支える力を失った悲しみの王はずるっと手足を滑ら
せ、潰れてしまう。上に乗っていた僕も哀しみの王の上にぺしゃんと潰れる。
「ね……僕ら、一つだよね……。」
僕は哀しみの王の背中の上から、そっと聞いてみる。

顔を伏せたまま息を荒げている哀しみの王は涙に濡れた、それでも喜びの混じった声で一
言「うん。」とうなづいた。

 ■■ 5 ■■
クロノアが我に返るとまだ哀しみの王はしがみ付き、グロッタはさっきいた場所に立ち尽
くしたままだった。意識を失ってからまだいくばくも時間は経っていないようだ。
今見たもの……それはクロノアがかつて幾度となく見た夢だった。
グロッタが拍手しながらクロノアに呼びかける。
「ずいぶんと都合のいい夢を見るな。
 興奮しちゃうじゃないか、え? クロノア★」

体毛の上からでも分かるほど頬を赤らめ恍惚の表情で息をつくグロッタ。股間のものはま
すます硬くそそり勃ち、ビクビクと鼓動にあわせて上下する。グロッタはそれを握り締め
激しくしごきたてていた。
クロノアのものもズボンの中で硬く立ち上がり、ズボンの布地を押し上げテントのように
張り詰めている。まるでたった今本当に起きたことのように、鏡を見るように思い出せる、
生々しい感触のある夢で、あまりの生々しさに体もしっかりと反応してしまっている。

「あはぁ★ クロノアのも…こんなに大きくなってる★」
足に当たるクロノアの立ち上がったものの感触に気づいた哀しみの王は片腿をクロノアの
足の間に割り込ませ、自分のものをズボン越しにこすり付ける。悲しみの王の暖かい圧力
でこすられ、クロノアの腰が跳ねる。
「あっダメ!ダメだってば!やめて!」

「抵抗することはないだろう、クロノア。
 そのまま哀しみの王を抱いてやれよ。あの夢のように、優しく。
 男同士で性器をこすり合わせお互いに精液をかけあう、
 倒錯的な、変態的な、いやらしいセックスをすればいいじゃないか★」
グロッタはニヤニヤと笑みを浮かべ、自分のものをしごき立てながら続ける。
「夢の中で、ロロの濡れそぼった性器を、哀しみの王のヒクつく肛門を、
 毎晩毎晩、そのズボンの中でいきり立ったもので貫き、
 何度も何度も何度も何度も、飽きること無く、射精したじゃないか★」
「そっ! そんなこと! おまえには関係ないだろ!」
クロノアは自分の夢を覗かれた羞恥にひどく赤面し、足の間のものをこすり上げられる刺
激に震えながら、それでも叫ぶ。
「大有りだ、クロノア。だから僕が生まれたのだから。」

グロッタはロロの黒いタイツに手をかけると、一気にそれを引き裂いた。腰から下、膝頭
の辺りまで剥ぎ取られ、白い肌が一層露出する。もはやロロの体を隠すものは股間を覆う
小さな白い布切れ一枚。グロッタはそれにも手をかける。
「眠れず、一人悶々と自分のものをしごきたてる夜ごと、
 眠りの中で夢精し、ズボンの中を濡らす夜ごと、
 ひっそりと、キミの内で芽生えたものは葉を広げ、茎を伸ばし、蕾を付け
 ……………そして花開く。」
ロロはまったく抵抗しない。むしろ喜んでグロッタの無体を受容するように頬を赤らめ薄
く笑みを浮かべたまま、脱がせやすいように腰を浮かす。ロロの体を覆っていた最後の布
切れがずり下ろされ、大切な場所がグロッタの面前に晒される。

そこも胸と同じように幼く、上気し薄桃色になった恥丘は閉じその奥の肉のピンク色がか
すかに覗く程度だったが、それでも受け入れる準備を整え、白く濁った粘液をあふれさせ
ている。ずりおろされた白い布切れの、そこを覆っていた場所とロロのピンク色のスリッ
トの間に引かれた粘液の糸が光を反射しながら切れた。
脂肪の薄いお尻の肉は、その奥の排泄のためのすぼまりを隠すことができず、これも肉の
ピンク色の蕾は呼吸に合わせて小さく開いては締まりを繰り返している。

「ロロ、今楽にしてあげるからね。」
グロッタは横たわったロロの体をまたぐように立ち、言う。
股間から立ち上がったものが脈打ち、先端に雫を作っていた透明な粘液が落ちロロの頬に
ぱたぱたと水の跡を付けた。
「あぁ…クロノアさん……クロノアさん……★」
自分の相手が誰かも理解できないのか、クロノアの名を呼びながらグロッタを誘うロロ。
「ほら、キミを楽にさせるものだ。ちゃんと舐めて濡らして。」
グロッタはそう言うとロロの顔の前に腰を落としてしゃがみこむ。グロッタの硬くなった
ものが、ロロの顔の目の前に突き出され、ヒクヒクと脈打った。

「ロロ!ロロ! やめて! それ僕じゃない!僕じゃない!」
ロロに向かって叫びながら上に乗った哀しみの王をどかせようともがくクロノア。しかし
全身余すところ無く密着させようとしがみ付く哀しみの王のために起き上がる事もままな
らない。
「うるさいな、クロノア。キミは哀しみの王をしっかり満足させてやれ。
 ほら、哀しみの王、キミもだ。何度も教えてあげたじゃないか。
 自分ばかり気持ちよくしてないで、クロノアにもしてあげなよ。」

 ■■ 6 ■■
グロッタの呼びかけに答えるように、哀しみの王は首に埋めていた顔を上げ、クロノアと
目を合わせる。
「あ…ごめんねクロノアぁ……ちゃんとキミも気持ちよくしてあげるから…★」
潤んだ瞳でクロノアをまっすぐに見つめそう言うと、哀しみの王はクロノアの鼻先に自分
の鼻先を押し付ける。そのまま、口のラインから首まで一気に頬を合わせるように強くこ
すりつけた。ビリっとクロノアの頭に眉間まで突き抜けるような心地よさが伝ってくる。
「わ、わにゃぁぁ……っ!」
思わず声を上げて手足を突っ張ってしまう。
哀しみの王も同じように気持ちいいらしくビクビクと体を震わせ、またその快感を得よう
と頭を持ち上げ鼻先をあわせ、幾度も頬同士をこすりつける。
「やめっ!やめっ!あっあっ! ふにゃああぁっ!」
クロノアは抵抗しようと試みるが、頬を毛並みに沿って強くこすられる度に突き抜けるよ
うな快感に襲われて抵抗も半ばで途絶えてしまう。

「ねぇ、哀しみの王。言ったとおりだろう。
 キミの好きな場所は、クロノアも好きなんだよ。」
目を細め、ニィーと笑いながらグロッタが言う。
「ほら、こっちも。ロロ、気持ちよくして。」
お尻の下にいるロロにそう言うと、腰をぐいっと突き出す。ロロの眼前にグロッタのもの
が大きく突き出し、唇を亀頭がこする。また先端からあふれ出ていた透明な粘液は唇を濡
らし、亀頭がそれを塗りこめていく。
ロロはそれを舌を出してぺろりと舐め取ると頭を上げ、両手をグロッタの足の間から生え
たそれの根元に添えて位置を定めると、先端の透明な粘液を溢れさせている穴を舌先でチ
ロチロと舐め上げる。

「ふにゃああああぁ〜〜〜〜★」
クロノアは幾度と無く襲い掛かる毛が逆立つような快感に、最早手足を突っ張らせる力も
無く流されるままになっていた。
「ふふ…クロノア、僕ので感じてくれて嬉しいよ……★」
哀しみの王はそう言うと、クロノアの背中を掴んでいた片手を外し、横からクロノアのお
尻と床の隙間に手を差し込む。そのままクロノアのお尻から生えている長い尻尾の付け根、
尾てい骨のあたりをギュっと握り締めた。

「ぅわにゃぁ────っ!あ──────っ★」

お尻の下から脊椎を取りぬけ、全身を痺れさせる電撃のような激しい快感がクロノアの体
を突き抜ける。ビクンビクンと魚のように背を反らして跳ね上がったクロノアのズボンの
中央、テントを張っていたその先端がジワっと黒く濡れる。
「あっあっあっ!あぁっ!あぁっ!」
大きく広がったズボンの裾から、黒い毛で覆われた腿を伝って白濁した粘液がだらだらと
こぼれ出してくる。
「クロノア★ ふふっ★イっちゃったぁ……★」

まだビクビクと身を震わせるクロノアの顔を見ながら、哀しみの王は満足げに笑うと尻尾
の付け根を掴んでいた手を離す。クロノアは射精の快感にもう抵抗する余裕もなく、激し
く息をつきながらぐったりと石の床に全ての体重を落とした。
「ね、クロノア、僕にもして……★」
クロノアの鼻の頭をペロペロと舐めながら、脱力したクロノアの腕を掴み、自分の背中に
回す。
「ほら、ここ。ここをギュってして……★」
尻尾の無い哀しみの王のお尻の尾てい骨のあたりにクロノアの手の平が来るように動かす。
クロノアは射精の余韻でまだ朦朧とした頭で、それでも悲しみの王が導いた場所を手で強
く背骨を挟み込むように押さえ込んだ。
「うっあっ★あっああっ★」
哀しみの王の腰が浮く。ズボンに押し付けられていた硬くなったものがプルプルと震え、
白い粘液がほとばしる。
それはまっすぐ空中に白い線を描き、クロノアのズボンの上にビチャビチャと音をたてて
こぼれた。
「あっ……ぁ………ふぁぁ……あぁ〜★」
お尻を震わせ、最後の一滴までクロノアのズボンに精液をかけると、哀しみの王はそのま
まクロノアの上に覆いかぶさるように脱力する。
腰の間で二人が漏らした精液が押しつぶされ、ビチャ、という音をたて飛沫を飛ばした。

 ■■ 7 ■■
「楽しそうじゃないかあっちは★
 ほらロロ、もっとしっかりしゃぶって……。」
グロッタは自分の足の間に顔をうずめ、亀頭を舐め続けるロロを促す。
「ん……。」
ロロはグロッタの顔を上目遣いに見上げ、うなずくと、唇を唾液で濡れ光るグロッタの亀
頭にあてがい、そのまま表面を唇でこすり上げるように一気に根元まで飲み込んだ。
「うぁっ…あっ! ロロ上手ぅ……★」
暖かく湿ったものに性器を根元まで包み込まれ、背中がゾクゾクするような感触に気をや
りながら言う。

ロロは口の中で熱く脈打つそれを唇で押さえつけ、舌で全体の凹凸を確かめるように絡め、
なぞっていく。口に含んだものの根元に添えていた片手をそのまま下にぶらさがった袋に
持っていく。中に二つのボールを入れたような感触の毛に覆われたフワフワの袋を親指か
ら数える三本の指でゆるゆると優しく揉みしだく。
「あぁ…ロロ、気持ちいいよ。きもちいい★
 ロロ、それっ……クロノアに教わったのか……?」
股間から這い上がってくる快感に体を支えきれず、グロッタはしゃがんだ体勢から膝をつ
き、両手をついて四つんばいになる。
グロッタの腰が細かく揺するように上下に動き始める。それはだんだんと大きな動きにな
り、ロロの頭の上でグロッタのお尻はこね回されるように激しく動きだした。

ロロの口内に歯に当たるのもおかまいなしにグロッタの猛るものが出入りする。上あごを
こすり、舌の上を這い、先端は喉の奥にまで潜り込もうと突き込まれる。
「んっ!んぐっ!ぅぷっ! ケホッ!」
ロロは喉の奥まで入り込んでくるグロッタの陰茎に咳き込みながら、それでも頭を動かし
てグロッタの快感を増そうと唇で、舌で、それを愛撫する。右手はグロッタの茎の根元を
掴み、唇で足りない刺激をさらに加えようと動き、左手は腰を動かすたびにタプタプと揺
れる袋を愛しそうに揉みしだいた。

その左手が、その袋のさらに上、会陰がお尻の肉と合わさる場所で快感にうごめく肛門を
探り当て、その外周をなぞるように指の腹で撫で回す。
「うぁ……っ★ ロロっ! そんなとこまで……★」
腰の動きを止め、肛門への愛撫を感じようとお尻を突き出すグロッタ。
亀頭だけ口に含みカリの裏から裏すじまでを舌を往復させながら、肛門のすぼまりの中央、
中に入り込む部分に指の腹をあてがい中に向かって押し込む。グロッタの腰が肛門を押し
込まれるたびにピクピクと震える。

グロッタは体勢を立て直し、再びロロの顔にまたがるようにしゃがみこむ。
ロロの口からグロッタのものが抜け出し、ビクビクと上下に脈打った。
「ロロ、じゃあここも……舐めてくれる?」
そう言いながら、自分のお尻に両手をあてがって広げてみせる。
ロロの目の前に、グロッタの肛門がいっぱいに広がり、期待するようにきゅぅきゅぅと息
づくように動いた。

「うん………クロノアさんのなら……私…舐められます……。」
鼻先に突きつけられたグロッタの肛門に顔を寄せ、恐る恐る舌を伸ばすロロ。そしてその
まま少し躊躇した後、意を決したように顔をグロッタの尻にうずめ、グロッタの排泄のた
めの穴に舌を押し付け、会陰へ向かって舐める。濡れた柔らかい肉の感触が、グロッタの
お尻から会陰を通り抜ける。
「あぁ〜〜〜〜★ ロロ、それ凄い気持ちいい★ もっと、もっとぉ★」
舌をだらしなく垂らして恍惚の表情を浮かべ、ねだるようにお尻をゆすってロロの顔にこ
すりつける。お尻を掴んでいた手を離し、我慢できずに肛門に集中したロロの愛撫に加え
るように自分のものを握り締め、強くしごきたてる。

「んっんっ…んぷ……んん…ん……。」
しわの一本一本を舌で広げるように伸ばし、ロロは目一杯舌を伸ばしグロッタの肛門に突
き入れる。
「あっあっ! もっロロっ! でるっ!でる!」
視点の定まらない目で空を見つめ、下半身から伝ってくる快感をより引き出そうとさらに
激しく自分のものをしごき上げながら腰を上げて自分の物の先端をロロの顔に向ける。
「うぁっ! でっ射精る! うふぅっ★」
跳ねるようにグロッタの腰が動き、握りこんだものの先端の穴が口を開け、真っ白く濁っ
た粘液がビュルッと噴き出す。二度、三度と白濁した液は空中に筋を描いて飛び、ロロの
顔にビチャビチャを音をたてて飛び散る。

「あふ……う……うぷ……★」
ロロは暖かく濡れた感触が顔中にふりかかるのを感じると、口を開け舌を伸ばしてそれを
受け止める。幾筋かのそれは口の中に飛び込み上あごを濡らす。顔にかかったものもタラ
タラと流れ落ち、口の中に流れ込んでいく。
「あは…ぁ★ クロノアさんの……いっぱい★」
鼻腔に、口腔に広がる生臭いような精液の匂いと味をさらに求めるようにロロは両手で顔
に付いたそれをかき寄せ、口に流し込む。
「こんなにいっぱい出してくれて、嬉しいです、クロノアさん……★」
グロッタは最後の一筋を飛ばし終えると、そのままポスンとロロの顔の上に座り込むよう
に床に膝を落として脱力した。

 ■■ 8 ■■
「あは★ ズボンが精液でビチョビチョ★ 二人でいっぱい出しちゃったねぇ★」
激しい射精の快感に酔い、朦朧としたクロノアのズボンの前の合わせ目に手をかけボタン
を外すと、哀しみの王は一気にそれをずり下げた。自分の放った精液にまみれドロドロに
なったクロノアの性器があらわになる。
「いい匂い…★ クロノアの精液、凄い匂い★」
精液にまみれたクロノアのそれに鼻先を近づけ匂いを嗅ぎながら哀しみの王は言う。その
ままクロノアの性器を舌ですくい上げるように口に含み、ちゅうちゅうと吸う。
一度果てて萎えた敏感なそれを舌でこね回され、クロノアの腰がピクピクと跳ねる。
「味も……すっごい濃いぃね……★」
口を離した哀しみの王はクロノアの腿に手をかけて広げると、同じように自分の精液にま
みれた股間をクロノアの股間に押し付けぐりぐりとこすりつける。二人の漏らしたものが
ニチャニチャと淫靡な音を立てる。

「ふっ…ふにゃぁ……ふにゅぅ★」
射精したばかりの敏感なものを哀しみの王のまだ硬く充血したものにこすり上げられ、ク
ロノアはあごを仰け反らせて喘ぐ。
哀しみの王は両手でクロノアを胸をまさぐり、体毛に埋もれた小さな二つの乳首を
探り当てると、指先でつまみあげる。
「わぅ……あっ! あっあっ!」
喘に揺れるクロノア胸の小さな二つの突起は哀しみの王の愛撫に答えるように体毛の中で
ぷっくりと膨らんでいく。合わせるように足の間の萎えていたものも力を取り戻し、立ち
上がっていった。

「クロノア…あの時、僕のここ、触ってくれたね。
 誰もが僕を嫌ってた世界で、キミだけが僕の一番汚れた部分にまで触れてくれた。
 あの時のことを、僕は忘れやしない……。」
クロノアと下腹を合わせ間に挟まったお互いの性器をこすり合わせながら
哀しみの王はクロノアの耳元でささやく。
「そしてここも……★
 ずっとうずいてる……キミのを挿れてもらってから……★」
正座のように座り込み、クロノアの足を掴んで下半身を引き上げる。逆さまになったクロ
ノアの精液で汚れたのお尻が哀しみの王の目の前にくる。力なくたれた尻尾の下に普段は
隠れて密かに息づく小さな排泄口がピンク色に息づいている。

哀しみの王は舌を伸ばすとその排泄口を舌先で回すように舐める。
「あっ!ふにゃっ! あふぅっ★」
まだ誰にも触れさせたことも無い場所を、しかも舌で舐めまわされ、クロノアは羞恥と下
腹全体を痺れさせるような感触に悶える。
哀しみの王は肛門の中央に突き立て掘り返すように舌先でしゃくる。
「ふにゃぁっ★ あっ!あにゃっ★」
胴を哀しみの王にしっかりと抱え込まれた逆さまの体勢でクロノアは足をジタバタさせな
がら肛門を舐め上げられる快感にさらに悶えた。
哀しみの王はクロノアを抱えていた腕を緩める。重力に従ってクロノアはズルズルとずり
落ち、哀しみの王の目の前で精液にまみれ勃起した性器と唾液に濡れた肛門を晒しながら、
だらしなく足を開いて肩で息をしながら横たわる。

「今度は僕が、クロノアのここ、してあげる……★」
腿を下からすくい上げ、クロノアの下半身を自分の腿の上に乗せると硬く勃起した自分の
先端をクロノアの濡れた肛門にあてがい、クロノアに覆いかぶさるように一気に突き入れ
た。
「ふぁっ! あにゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
哀しみの王のもので一気に押し拡げられ、中まで突き入れられたクロノアは悲鳴にも似た
嬌声を上げる。哀しみの王の先端はクロノアの直腸の中で脈打ち、前立腺を押し上げる。
クロノアは今まで感じたことの無い、自分の性器の先端まで痺れ射精する寸前の感触が持
続するような激しい快感に首をすくめ、足を痙攣させながら耐える。

「クロノア……気持ちいい? 気持ちいいよね?
 僕もクロノアにしてもらった時、そういう風に気持ちよかった……★」
クロノアの中の感触を味わうようにぐいぐいと自分の腰を押し付けながら哀しみの王は言
う。
「今度は僕が、ね?」
そう言うと、哀しみの王は腰を持ち上げクロノアの中から半ばまで自分の性器をずるりと
引き抜き、そのまま勢い良く腰を打ちつけるように一気に落とし込んだ。
「うわにゃぁぁっ!」
再度体内を押し拡げられ、硬く熱いもので前立腺を突き上げられたクロノアはビクビクと
足を痙攣させながらさらに快感の奔流に押し流される。
「気持ちいい? 気持ちいい?」
哀しみの王は涙目で喘ぐクロノアの顔を見つめ、問いかけながら何度も何度も自分の性器
でクロノアの肛門を貫き続ける。
クロノアは下半身から襲う激しい痺れに満足に返事もできずにあえぎ続けた。

「あぁ…あー★ 僕もう、嬉しくて、射精ちゃいそう★
 でも、がんばるから、ね……クロノアが気持ちよくなってくれるまで★」
舌を出し唾液がたれるのもそのままに、激しく息をつき腰を動かす哀しみの王。
二人の漏らしたもので汚れた腰とお尻が打ち付けられるたびに、びちゃびちゃと湿った水
音が広間に響き渡った。
「わひゃっ!はっあっあっ!あっでるっ!」
クロノアの先端に感じていた痺れるような感覚がじわじわと広がり始める。激しく突かれ
る肛門の上で、フワフワの袋がキュゥッと縮みこむ。
「わにゃっ!あ──────っ!」
上下する哀しみの王のお腹の下でクロノアの性器は弾け、二回目だというのにまた大量の
真っ白に濁った粘液がほとばしる。
「あっ!ふにゅっ!ふにゅぅーっ!」

幾筋も飛び散ったそれは仰向けのクロノアの腹といい胸といいところかまわず飛び散って
はパタパタと音をたてて黒い肌を白く汚す。
「あっはっ★イった★イっちゃったっ★ 僕もっ!僕もっ!もう射精るぅ★」
哀しみの王はガクガクと腰を動かすとクロノアの中に自分のものを深々と突き刺す。悲し
みの王の脈動に合わせて、クロノアの中に暖かい感触がじわぁ、と広がる。

「あっあ!あっ…はっ……★で、でちゃったぁ★」
動きを止め、息を切らせながら下半身をプルプル震わせながら哀しみの王が言う。
ずるりと粘液にまみれた性器をクロノアの肛門から引き抜くと、横倒しに崩れ落ち、二人
は並んで横たわったまま射精の快感の余韻にうち震え続けた。

 ■■ 9 ■■
「ほら、そんなものだ、クロノア。」
いつのまにかグロッタが横に立っている。仁王立ちのまま傍らのロロを引き寄せ、自分の
精液まみれのものを口に含ませる。
射精後の気だるさとお尻にまだ残る哀しみの王の熱にボーっとしたまま、クロノアは横目
でそれを見る。まだ先端から糸を引きながらたれ落ちるグロッタの精液の匂いが鼻をつく。
(あ……これ、同じ。
 塔の中でずっとしていたこの匂い、グロッタのの匂い。
 僕の出したのの匂いと、同じ………。)
ぼやぼやとした頭の中で、クロノアは感慨もなく、そう思った。

「誰もが逃れられない、誰もがいずれ花開き、僕を【迎え入れる/生み落とす】。
 クロノア、キミも同様だ。そうやって肛門を犯し、犯され、
 性器をしゃぶり、精液を飛び散らせるのに夢中だ★」
グロッタは自分の股間に顔をうずめているロロ頭を掴み、クロノアに向けさせる。グロッ
タの放った精液にまみれぬらぬらと濡れ光り、口いっぱいにグロッタのものをほおばった
その顔はとても淫らで、それを見ながらクロノアはまた下半身のものが膨らんでいくのを
感じた。

グロッタは膨らんでいくクロノアのそれを一瞥するとドカリと座り込み、ロロを抱き寄せ
て自分にまたがらせる。
ロロはグロッタの立ち上がったものに手を添え自分の秘所に導くと、腰を落としてそれを
飲み込んでいく。欲情しきったロロのそこは腿を濡らすほど愛液を漏らし、グロッタのも
のをズルズルとくわえ込んでいく。
「あぁ…クロノアさん…クロノアさん……硬い………っ★
 また一緒に、一緒になれました、ね…★」

クロノアの目の前で上気して薄桃にそまったロロのお尻がくねる。グロッタのものが根元
まで深々と突き刺さり広げられたところから動くたびに愛液が飛び散り、床にしみをつけ
る。その上についた肛門もまた、動きに合わせて呼吸するようにヒクヒクと蠢いている。
「血管を浮かせそそり勃起、脈打つ男性器。
 淫汁を溢れさせそれを求めパックリと開き、くわえ込む女性器。わななく肛門。
 とても【グロッタ様式/グロテスク】じゃないか。」
ロロの動きに合わせて腰を突き出し、ロロの愛液にまみれた性器を突き上げながらグロッ
タは、どこからともなく一枚のメダルを取り出した。

「クロノア、今からキミが選べる選択肢はたったの二つ。」
グロッタはクロノアの目の前にメダルを投げ出す。それは床の上で跳ね、チリチリと音を
立てて回転する。
「一つは今感じ得た快楽に身を任せ、自分の成長を祝福してあげること。
 キミの下半身のお相手は【僕ら/グロッタ/哀しみの王】じゃない、ロロじゃない。
 目覚めるんだ、クロノア。そしてもう、二度と帰ってこない。」
ロロの頭を抱え込み、体を密着させなおもロロを突き上げるグロッタ。
ロロの情欲にまみれた嬌声が広間にキンキンと響き渡る。
「もう一つは成長を拒否すること。
 今の自分を認めず、なかったことにして、世界がキミを中心に回っていた昔、
 誰もがキミを誉めそやしてくれる、キミがヒーローだった【夢/妄想】に戻ること。」
メダルの回転が止まり、床の上にチリンと音を立てて倒れる。
メダルに刻まれた、星に大きな翼をあしらったレリーフが周囲を漂う光の粒に照らされて
ちらちらと反射して輝いた。

「どうするクロノア、夢見る黒き旅人★」
クロノアの視界が、世界が、波紋を広げるようにゆがみ始める。
グロッタは声高に、宣言するように声を放った。

「僕の名はグロッタ!この国の王だ!
 ようこそクロノア、夢見る黒き旅人!
 我が国【リビディア/性衝動の国】へ!」

ロロとグロッタの結合部から飛び散る液体がメダルにぴちぴちとふりかかる。

Good morning, You.