何処に行くんだろう    此処は何処だろう   ボクは何だろう

不思議な空間に1人の少年が歩いていた。
服は青色を基調としていて、青いシャツとズボンを着て、黄色いマークが付いている帽子をかぶっている。
帽子の隙間からは黒い髪の毛がはみ出して、ハネている。
外見はイヌかネコのようで、特徴的な長い耳と尻尾が生えていることから人間ではない事が判る。
大きな手袋をつけて、大きな靴を履いており、どこか可愛らしさを持っている。

「どこまで続いているのかな?」 ふと呟いた。
(いつまで歩くんだろう?) 心の中で思った。
(どうしてここにいるんだろう・・・何も分からないや・・・・・)

その時、目の前にうずくまって泣いている幼い男の子がいるのに気付いた。(どうしたんだろう・・・?)
少年には、困っている人を放っておけない優しさがあった。
「ねぇ、どうしたの?」少年は男の子に話しかけた。 男の子はすっと顔を上げた。

その男の子は少年と同じような姿をしており、大きな首輪をしていた。






             〜 キ ミ と ボ ク 〜

◇  クロノアは落ちていた。 下へ下へと落ちていた。 不思議な空間の中、落ちていた。

「ここは・・・次はどんな世界かな・・・」 今までいろんな世界を巡ってきて疲れ果てていた。
(元の世界はどこなんだろう・・・もしかしたらボクの世界なんて無いのかも・・・・じゃあボクは?)
そんな不安な考えが浮かんできたとき、出口が見えてきた。
「えっ?そんな! いきなり!?」 心の準備をする暇も無く到着してしまった。

ドンッ! 「はにゃっっ!!」
落ちた場所は陸だったが、それほど高くなかったおかげで、尻餅をついただけですんだ。
「イタタタ・・・こ、ここは?」 辺りを見回したクロノアは驚きを隠せなかった。

ここには以前来たことがある。あのときの冒険のゴール地点・・・・

「哀しみの国・・・・・・・フーポニア」

クロノアは国の中へ入り、歩いていた。
「あの時とほとんど変わっていない。いや、少しだけ変わっている?
そっか!レオリナがこの国を立て直すって言っていたっけ。・・ってことは、それほど
時間は経っていないのか。良かった♪」クロノアは安心した。

「ロロは元気かな?ボクが戻ってきたって知ったらビックリするだろうな。
でもポプカは意地を張るかもね♪ ハハハ。 それにしても・・・」 辺りを見回す。

「誰もいない。静かだ・・・まだ本格的には直ってないみたい。なんか寂しいや・・・・・
王サマは、ずっと・・・こんな所に独りでいたのか。誰からも助けてもらえずに・・・・・・。」
いつの間にかかなり奥の方まで進んできた。まるで何かに誘われるように。  その時

(クロノア・・・)  「はにゃ!!だ、誰!?」 (クロノア・・・・) 「どこなの?!」誰かが呼んでいる。
「もしかしたら・・・」クロノアは走り出した。リングをしっかりと握り締めて・・・。

(クロノア・・・) 「やっぱり、あそこから聞こえてくる」 そこは王の間だった。
「やっぱり・・・」誰かが大きなイスのようなものに座っている。頭には大きな冠をかぶり、赤くて大きなマントを羽織っている。

「哀しみの・・・王サマ」クロノアは呆然とした。
「やぁ、クロノア」 哀しみの王はニッコリと微笑んだ。

「な、なんで?!どうして王サマがここに? あの時に・・・」
「クロノア。それは君が一番よく知っているんじゃないのかな?」
「ど、どういうこと?」 意味深な言葉に戸惑うクロノア。
哀しみの王はゆっくりと立ち上がる。少し歩き、絨毯の真ん中で立ち止まる。
「もう・・・気付いてるだろ?キミとボクは・・・」王が言い終わるより早く
「同じ存在・・・一つの人格・・・同一人物・・・・でしょ?」クロノアは言った。

「あの時に君を見たときにもしかしてって思ったよ。ロロとポプカは気付いてなかったみたいだけど。
外見が似ているし、声も似ている。それにその首にかけているリングのようなものも・・・似ている。」
「さすがだね。あの時の頃と違って成長したね。すごく冷静に物事を見ている。少し寂しいけどね。」
哀しみの王は冠を取って、玉座に置いた。
「でもそれじゃ説明になってないよ!どうして君がここに・・・」
「落ちつきなよクロノア。とりあえず・・・こっちに来て。」王は、そばに来るように促した。
クロノアは柔らかい絨毯の上に立った。じっと哀しみの王を見据える。

「クロノア、元の世界はまだ見つからないんだよね。どうしてだと思う?」
「・・・・・分からない。」クロノアは俯いた。
「ねぇ、どうしてなの?君は知ってるの?ボクがどこから来たのか。ボクはなんなのか。」
「それは分からないよ。自分自身が分からないのは誰でも一緒さ。そう、誰だって・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」クロノアは黙ってしまう。何を言っても分からないのなら、
今目の前にいる人物の言葉を待とうと思ったのだ。

「ふぅ、クロノア・・・君は未完成だ。いや、不完全な存在なんだよ。部品が足りないとでも言おうかな。」
「??? 部品?」クロノアは一瞬混乱した。
「そう、足りないんだ。キミはボク。ボクはキミ。元々一つの存在だとしたら、それが別れることによって
不安定な状態になったんだ。そんな状態で元の世界・・・があるとしよう。元の世界へ無事に辿りつけると思うかい?
難しいだろうね。クロノア・・・もとの世界に帰りたいのかい?」哀しみの王は尋ねた。
「うん・・・帰る。元の・・・ボク自身の世界へ・・・・そうじゃなきゃ今までのことが無駄になる。」

哀しみの王は目を閉じて、数秒間じっとした。
「わかった。そこまで本気なんだね。僕達は不安定だ。だから・・・一つになる必要がある。一つになるんだ。」
「で、どうするのさ?バーッと不思議な力でなるの?」クロノアは、どことなくワクワクしている。
「・・・わからない。」「・・・え?わからない・・・ってそれじゃどーすんのさ!?」
クロノアのするどいツッコミが炸裂した。
「一つになるって事は、そのままの意味だよ。精神と心を一つにするには肉体を一つにするんだと思う。だから・・・」
哀しみの王は、顔がぶつかりそうになるくらいクロノアに近づき、そして・・・・・
「え・・・・?」

左手で、クロノアの長い耳を撫でるようにして優しく掴み、そっと、唇と唇を重ねた。
「?!!!???#$&%‘¥!」クロノアはあまりにも突然のことに混乱を通り越して3秒間意識が飛んだ。

「わにゃっ!なな、なにお?!」
哀しみの王は構わずに、もう一度キスをして、今度は舐めるようにした。
「言ったろ?一つになるって。物理的にひとつになるにはこうした方が手っ取り早いんだよ。」
「だだだだ、だからっって!」恥ずかしさでどうしても、どもってしまう。ちょっとというより、だいぶ赤くなってしまう。
「じっとして・・・クロノア・・・・・・。」

哀しみの王はキスを続ける。続ける。ひたすら続ける。呼吸が、しづらいくらい舐めまわす。
クロノアは、だんだん頭がボーっとしてきて、足の力が無くなってきた。
「あ・・・・・」そしてペタンとへたりこんでしまう。
「もう、じっとしてってば。」哀しみの王はしゃがみ込んで、キスを続ける。
唾液が溢れて流れ落ち、絨毯を濡らしていく。そして、口を離す。
「ぷはっ はぁ、はぁ・・・息苦しい。」クロノアは呼吸を繰り返した。
「・・・・おかしいな、何も変化が無い。これだけじゃ足りないのかな?そうだ!クロノア。服を脱いでよ。」

「!!! なななな、なんで?!」またもやクロノアは慌てた。
「衣服越しだからダメなのかもしれないな。ボクもこれを外すから・・・。」
哀しみの王は赤くて大きなマントを外し、金色の首輪と、両手足首に付けているリングも外した。
元々、露出度が高いとはいえ、妙に色っぽく見えてしまう。
「ほら、どうしたの?早く脱いでよ、クロノア。」
「で、でも・・・それは〜・・・さすがに〜〜・・・・・ね?」
「ね?・・・じゃないよ。 仕方が無いな。手伝うよ。」

哀しみの王は、青いシャツのジッパーに指をかけて、脱がせていった。
「ちょちょ、ちょっと!王サマ!!待って・・・」「待てないよ。テキパキと済ませようよ、ホラ。」
あっという間にクロノアの上半身が裸になる。

「次はズボンかな?いや、その前に靴か。よいしょ。」
あっという間にクロノアは裸足になる。

「手袋は・・・後でイイや。次はズボン・・・・・いくよ。」
あっという間にクロノアの下半身が裸になる。

「帽子はここに置いといて。最後は手袋。そうそう、リングはココに置いとくね。」
あっという間にクロノアのフワッとした髪と、手袋の大きさの割には、それほど大きくない綺麗な手があらわになる。

この間わずか十数秒。
「完璧♪ハハ♪」いつもの冷静で不思議な雰囲気を漂わせている哀しみの王は、無邪気な子供のようだった。
「あ・・・・」抵抗する暇も無く、クロノアは真っ裸になってしまった。
「恥ずかしい・・・・・・・・」真っ赤になってしまう。
「ボクも恥ずかしいよ、クロノア。」軽く微笑んで言う。
(ウソつけ。普段なんにも着てないくせに)クロノアは心の中で思った。
「もういいかな?じゃ・・・・・・いくよ。」 マントを布団のようにかぶせて、横になった。

「ど、どうすんのさ。キスがダメなら・・・・・」
「全身で触れ合えばいいんだよ。こうやって・・・・」
哀しみの王は、両手をクロノアの背中に回して、抱きしめた。
クロノアの鼓動が大きくなってしまった。
「ほら、クロノア。」「う、うん。」 クロノアも哀しみの王を抱きしめた。
その状態でもう一度だけキスをする。横になりながらも続ける。

「ん・・んぁあ。」クロノアはあまりの気持ちよさに身もだえする。
哀しみの王は、クロノアの胸とお腹の部分を撫で回す。 「ひにゃっ!」
「感じやすいんだね。すごく敏感・・・・・。」
「ふにゅう、ゴメン。これじゃあ続かない。」
「ならボクがするから。クロノアはボクを抱きしめたままでいいから。」
そして、クロノアを仰向けにさせる。そして、上から覆いかぶさるようにして、全身で撫で回す。
「う・・気持ち良いよ。王サマ・・・でも、なんだか。」

クロノアは、自分の体の変化に気付いてしまった。ふと、自分の下半身を見たら、
赤っぽいピンク色のモノが出ていた。ぬるっとしている。
「これは・・・・」哀しみの王はまじまじと眺める。
「ふにゃあ!見ないで見ないで。」クロノアは逃げ出そうとするが、押さえつけられる。

「そうか、お互いの大事で敏感な部分を触れ合わせればもしかして・・・。」
哀しみの王はクロノアのモノをぺろりとなめまわした。
「あっ!にゃっ!!だ、だめ!!」
なんとか逃れようとするが、力が抜けていく。立つことですら難しいだろう。
ぴちゃ、くちゃと音をたてながら、液が少しずつ溢れてくる。
クロノアだけでなく自分自身もおかしくなっていってることに哀しみの王は気付いた。

哀しみの王の下半身からも、ぬるっとしたものが出ている。
「え・・?なんで、ボクまで?」哀しみの王は少しだけ戸惑った。
「でも・・・いいや。なんだか変な気分・・・だし。うまく・・・いき・・そう。」

哀しみの王はそのままクロノアに覆いかぶさる。クロノアは哀しみの王の背中に手を回し、抱きしめる。
(体が勝手に動く。反応する。すごく・・・気持ち良い。)クロノアは微かに残った思考回路を動かした。
横になったままで二人はキスをする。口と、足と足の間から液体が溢れてくる。
「ん・・・はっ、ふにゃあ・・・・・・わふぅ・・・・。」
だんだんと二人のボルテージが上がっていく。体の震えが大きくなっていく。
息が荒くなり、体温が急激に上がる。
「ね・・ぇ・・。なんか・・・出そう・・・・なにか・・・・くる。」
「うまく・・・いってるんだよ。多分・・・うっ・・あぁ。」

赤いヌルッとしたモノが絡み合ったその瞬間・・・。   熱くてぬるぬるした液が大量に出てきた。
「はにゃっ!これ・・・なに? う・・・あぁ!」まだ出てくる。
「うまく・・・・いっ・・て・・・・ひと・・つ・・・に・・・あ・・・うあぁ!」
物凄い量が溢れ出て、びちゃびちゃになる。顔や腕、足にまでかかる。
そしていつのまにか噴出は止まり、あとには息づかいだけが残る。二人ともグッタリとする。

「これでも・・・・ダメなの・・・?」哀しみの王はそう言った。

「なんで?どうして?・・・・・・」「王サマ・・・・?」
哀しみの王は涙を流した。ほんの少しだが・・・。 
「うまく・・・いかない。これじゃ・・・ダメなのに。」
クロノアは哀しみの王の顔をペロッとなめた。
「!?」「泣かないでよ・・・もう泣かなくてもいい。ほら、きれいにしなくちゃ。」
クロノアは綺麗にしようとなめ続ける。哀しみの王もクロノアをなめる。
「へへ、アリガト。王サマ。」しばらく二人はなめつづけ、やがて粘液は消えていった。

「これでもダメとなると・・・もっと深くやらなきゃいけないのかな?」
「・・・・ま、まだするの?別の方法を考えた方がいいんじゃ・・・。
そ、その前に服を着なきゃ!は、裸は恥ずかしいよ」
急いで服を着るクロノア。そしていつもどおりの格好になる。  体中が湿っているのを除けば・・・・・
哀しみの王も首輪を付け、リングをはめる。マントは・・・濡れすぎてしまい、洗わなきゃ着れないだろう。
「布団代わりにするのは失敗だったかも・・・。」二人は絨毯から移動した。

クロノアと哀しみの王はひたすら考えていた。どうすれば一つになれるのかを・・・。
「あのさ、王サマ・・・・。」
「ん、何?クロノア。」
「ホントに王様とボクは同一人物なのかな?」「どういうこと?」
クロノアは続ける。
「確かにキミとボクはとても似ている。姿かたちがそっくりだ。ボクの分身なのかもしれないって考えていた。でも・・・?」
「でも?」

「でももしかしたらその考えは間違いなのかもしれない。二つに別れたんじゃなくて、新しく作られたってことなのかも。」
「つまり、ボクという人格が新しく生まれたって事?クロノアの分身じゃなくて、僕自身として。」
「多分・・・分からないけど。」
「そっか・・・・そうなのか。アハハ♪」哀しみの王は笑った。とても嬉しそうだ。
「嬉しそうだね♪王サマ。そうだ!いつまでも王様じゃあなんだかアレだから名前でも考えない?」
「ボクの・・・名前? そういや考えたことも無かったな。」
「よしっ!じゃあ考えよ!」 こうして名前を考えることになった。

「ボクがクロノアだから・・・・・シロノア!」
「却下。 キミも白い部分があるから・・・。」 あっさりと却下された。
「・・・・・」  ふりだしにもどる

「毛が緑だから・・・・・ミドリノア!」
「却下。 語呂が悪すぎる。もう少しファンの人のことも考えて・・・」
「何の話だよ・・・」 ふりだしにもどる
しばらく試行錯誤していたが、なかなか決まらない。

「ねぇ王サマは、何で哀しみの王って呼ばれるようになったの?」クロノアは聞いた。
「さぁ・・・いつの間にかだけど。なんでだろ?」
「じゃあそれが名前なのかも・・・いい名前浮かんだ!
哀しみ・・・かなしみ・・・カナシミだから・・・・・カナ!
王様の名前はカナ! どう?いいでしょ?」

「カナ・・・・。なんだろ不思議な気持ちだ。ボクの・・・名前。」
哀しみの王・・・いや、カナは不思議な暖かさにつつまれた。

その時。 カナの体が光り始めた。
「はにゃ!カナ。光ってるよ。どうしたの?!」
「え?あれ?何が起こってるの?」
気のせいか、じわじわとカナの輪郭がぼやけてきて、光の粒子が空気に溶けていく。
「え?え?どうしたの、カナ! 何が起こってるの?なんで消えてくの?」
「分からないけど、もしかしたら・・・・・。」
カナは話し始める。
「名前が付いたから・・・・・哀しみの王からカナという存在に変わったから・・・。
あやふやだった意識体がついに崩壊したのかもしれない。いや、それともこれは初めから・・・・・・?
クロノアの分身から個人に? だとしたらこの世界でのボクは・・・」

「そんなムズカシイコト言われてもわかんないよ! で?どうなるのさ!? ボクのせいなの?
ボクが名前をつけたから? そのせいで王様は消えるの? 嫌だよ!絶対に嫌だ!!」
「クロノア・・・・」 
クロノアは大声で叫ぶ。その様子を哀しい目で見つめるカナ。

「もう・・・大事な友達を失うのは・・・別れるのは・・・・・嫌だ。」
クロノアは消えてゆくカナを力強く抱きしめた。

「ほ、ほら。こうして抱きしめてる限りは大丈夫さ。だいじょうぶ。だい・・・じょ・・・・ぶ。」
だが無情にもカナの体は光へと変わっていく。もう足元は完全に消えている。
クロノアはボロボロと涙を流す。次から次へと溢れる。拭うことも忘れて・・・。

「大丈夫、泣かないでクロノア。どこにも行かないよ。すぐにまた会えるさ。
今度は哀しみの王じゃなくて・・・キミの友達のカナとして。」
もう半分ほど消えている。

「以前なら、このまま消えていっただろう。でも今は違う。
みんなが忘れないでくれる。いつまでも憶えている限り、ボクはどこにも行かないよ。」
「グスッ・・ホントに?」
「あぁ。ホントさ。 案外、明日くらいにでも会えるんじゃないのかな?もしかしたら一時間後には会えるかもね?」
カナは冗談を言った。クロノアを元気付けているようにも見える。

「冗談なんか言うキャラじゃないくせに・・・。」
「そういうクロノアも、泣き顔は似合わないよ。ほら笑って。」
そういうとカナはクロノアにキスをした。優しいキスを・・・・・。

「とぅらっぱ・・・カナ。」 「とぅらっぱ・・・クロノア。」
そしてカナは光になった。 クロノアはいつまでも見上げていた・・・・・。

「これから・・・どうしよ? とりあえずみんなに会おう。会って色々話がしたい・・・。
みんな・・・元気かな? 元気だよね。きっと・・・・大丈夫。ボクは・・・。」
涙を腕で拭う。自然と笑顔になった。
(もう泣かないよカナ。けれど哀しみは絶対に忘れない。約束だから)
帽子をかぶる。リングをしっかりと握って歩き出す。
「どうしよ?とりあえず寺院に行こう」 寺院に向かって歩き出した。

歩いている途中、景色を眺める。以前のような異変はまったく無く、平和だ。凶暴な幻獣もいない。
水も綺麗だし、花は咲いているし、空気も綺麗だ。お弁当があれば最高だな。
そう考えていたとき、よく知っている人物が目の前にいた。

ロロとポプカだ。二人とも固まっている。信じられないというような表情だ。
しかし、すぐにその表情は変わる。
「く、クロノアさん? ホントに、ホントに・・・・う・・わぁぁぁ」
ロロは駆け寄って、クロノアにしがみついた。あの時の別れのときのように。
「なんで?どうして?でも・・・良かったです。また・・・会えて」
「へん。ひ、久しぶりだな。元気か?」
ロロはとても嬉しそうだ。ポプカは相変わらずの様子だが、嬉し泣きをしている。
「へへ。また来ちゃった♪」クロノアは満面の笑顔で返す。

三人は寺院に向かって歩いている。懐かしい(といっても数週間ぶりだけど)話をしている。
ロロは巫女試験に受かるために、勉強中だとか。
ポプカは毎日寂しがっていたとか。(本人は否定)
レオリナは国を立て直しているとか(女王の座を狙ってる?)
タットはレオリナの手伝いをしているとか。
どこも相変わらずだけど、平和な日々を過ごしているとか。
大巫女様のところに、哀しみの王様に似た子供がやってきたとか・・・・・・・・・・・・・え?

「今なんて?」クロノアは聞く。
「はい。クロノアさんが元の世界に旅立った後すぐに、大巫女様のところに王様に似た子供が来たんです。」
「あぁ。そっくりだぜ。大巫女様が眠っているそいつを抱きかかえて、嬉しいような困ったような感じだったぜ。」
ロロとポプカは説明する。 クロノアは呆然として聞いていた。
「ん?どうした?クロノア。」ポプカは様子が変なクロノアに聞いた。

突然クロノアは走り出した。いきなりのことに二人とも驚いたが、慌てて追いかける。
「ど、どうしたんだよ!クロノア」「く、クロノアさん!?」
そして寺院にたどり着く。三人とも息が切れている。
「ハァ、ハァ・・・。いきなり走るなよな。」「はぁ、はぁ、クロノアさん。どうかしたんですか?」

クロノアは扉を開けた。そこには大巫女様と小さな子供がいた。
そのこどもは緑色の毛で、耳が長い。哀しみの王と瓜二つだった。
「クロノアさん!?どうしてここに?」大巫女は驚いた。
「クロノア・・・?アハ♪クロノアだ〜。」その子供は嬉しそうにクロノアに駆け寄った。
そしてクロノアにしがみつく。とても嬉しそうだ。
「おいおい、クロノアにスゲ〜なついてるな。」
「やっぱりこの子は、あの王様の生まれ変わり・・・なんでしょうか?」

「あの、大巫女様。この子に名前はあるんですか?」
「いいえ。まだないのですが・・・。」大巫女は答える。
「じゃあ・・この子の名前はカナ!いい名前でしょ。」

「へぇ。とてもいい名前ですね。」「なんか単純だな。」
大巫女は優しく笑っている。まるでこの事を予測していたように。
クロノアはカナを抱きかかえて高く上げる。
「気に入ったかい?カナ。」 「ありがとう、クロノア。」カナは笑顔で答える

(これでいいんだ。たとえ生まれ変わりでも。別の存在だろうと同じ存在だろうと。カナはカナだ。)
そしてクロノアは大声で言う。「行こう!」

「え?ど、どこへですか?」ロロは聞く。
「冒険にだよ。」クロノアは元気に答える。
「なんでいきなりなんだよ」ポプカは言う。
「わ〜い冒険冒険♪」カナは嬉しそうだ。
ポプカを頭に乗せて、ロロとカナの手を握り走り出す。まだ知られていないようなところに向かって・・・。
この世界にいつまでいられるか分からない。でも大丈夫さ。ボクはまだここにいる。もうすこしだけここにいる。
きっと見つけられるさ、ボク自身を。その時はみんなで喜べばいい。
ボクが世界を忘れない限り、世界も忘れない。ボクが自分を見失わない限り、ボク自身も失くしたりしないさ。

「よ〜〜し!新しい冒険に向かって・・・るぷるどぅ!!!」 そうしてボク達は走り続けたんだ。新しい冒険に向かって・・・◇

その男の子は少年と同じような姿をしており、大きな首輪をしていた。
「一体どうしたの?」少年は男の子に話しかけた。
「哀しいんだ。とても・・・哀しい」小さな男の子は言った。
「どうして哀しいのさ?」「・・・・わからない。でも哀しいんだ。」
少年はすこし考えてこう言う。
「哀しい理由を忘れたのなら・・・無理に哀しむ必要は無いんじゃないのかな?」
「え・・・・?」男の子はキョトンとする。
「無理に哀しむ必要は・・・いや、独りで哀しむ必要はないよ。一緒に哀しもう。そして・・・一緒に笑おうよ♪」
少年は男の子に手を差し出す。男の子は恐る恐る少年の手を握る。そして立ち上がる。

二人は先の見えない道に向かって歩き出す。二人なら・・・大丈夫さ。きっと・・・・・・・




                  〜キミとボク〜   END