森とキノコと雨宿り


チップルの日記 a

グルグルっス! 今日もたくさん遊んだっス。
アニキとポプカと自分の3人で草むらを走り回ったっス。
アニキったら走るのが一番速いのをいいことに、1人だけ先へ先へ勝手に行くっス。
困るっス。でもすごく速かったっス。もうなんとも言えないくらいグルグルカッコよかったっス!

アニキって誰のことって? そんなの決まってるっス! みんなが知ってるクロノアのことっス。
以前に……自分が困ってたときに助けてくれたっス。その時から、クロノアさんを「アニキ」って呼んでるっス。
アニキには本当に感謝してるっス! いつか……じぶんも……アニキのように強くなりたいっス!!!

っとと。ちょっと熱くなり過ぎたっス。日記に戻るっス。
いろんな所を走り回ってたら、へんな森を発見したっス。 怪しくて……暗くて…なんだか怖かったっス。
アニキは「よし!探検しよう!」と張り切ってたけれど、ポプカが言うには、

「やめとけやめとけ。あの森に入ったら二度と出られないっていうらしいぜ。
なんでも幽霊か、とんでもないバケモンがいて、その姿を見たものは別の世界へ連れて行かれて二度と帰ってこれないと言われてんだぜ。
なんていう森だったかな? まよいの森? いやいや、あやかしの森? まてよ、まどいの森? う〜〜〜〜ん………
あ〜もう!忘れた!! とにかくあの森は危険らしいからやめとけって! ってオイ、クロノア!!
言ってるそばから入ろうとするな!バカ!!」

森に入ろうとするアニキを止めるのに苦労したっスよ。 でも……そんな恐ろしい森には行きたくないっス!
う〜〜〜〜〜。なんだか怖くなってきたっス。 もう、今日は寝るっス。 グルグルおやすみっす!

晴れた昼。 二人の少年が走っていた。
いや、正確に言うと足が速い少年と、それに追いつこうと息を切らしながら走っている少年がいた。
足が速い方は、青い服を着て、長い耳をしている。もう1人は、グローブをはめて、ヘッドギアを着けている。
まるでボクサー見習いのようだ。 長い耳の少年は、立ち止まり振り返った。

「遅いよ、チップル。」不機嫌そうに言った。
「そんな事…ハァ…言われても……ハァ…アニキが…ゼェ…速いっスよ。」チップルと呼ばれた少年が言った。
「ちぇっ、走りが速すぎるのも考え物だなぁ。」長い耳の少年…いや、クロノアは言った。
「ちょっと一休みしたいっス。」 「しょうがないなぁ。」 二人は草の上に座った。

「そういや、なんでポプカはいないのさ?」
「なんだか、気分が悪い…とかで寝てるそうっス。 ハッ!もしかして昨日の森に近づいたから…ヒャ〜!ガクガクグルグルっス!」
「そんなわけないじゃん。 もしかして昨日ポプカが言った噂を信じてるの?あんなのデタラメだよ。」
「??? どうして分かるっスか?」 チップルはクロノアに聞いた。クロノアは立ち上がり、説明し始めた。

「幽霊を見たものは異世界に連れて行かれるって言ってたよね。じゃあさ、何でそんなことが分かるのさ?
その話を聞いた人は一体誰から聞いたのさ? 異世界に連れて行かれちゃった人は、どうやってその話を伝えたの?」

「……………そういえばそうっス! 二度と帰って来れないのなら、そんな話を伝えられないっス!
さすがアニキっす!! グルグル賢いっス!」 チップルも立ち上がり、両腕を振り回して言った。
「へへへ、まぁね♪ 噂なんてのはそういうもんだよ。人から人へ伝わっていくうちに、変わっていくもんなのさ。」
クロノアは満足そうに言った。 そして……

「じゃあ、あの森は安全だって判ったんだから、ルプルドゥ!!」
「グルグル……ってちょっと待ってっス!!」
「どうしたのさ?」 クロノアは不満そうに振り返った。
「だ、だからってあの森が本当に安全だなんて分からないっス!危険っス!やめたほうがいいっス!」チップルは必死に止める。

「なんだよ〜。大丈夫だって。 だ〜か〜ら〜、ボク達があの森を探検して、噂が本当かどうか確かめるんだよ。
それに、誰も知らない場所を探検するなんてワクワクしてこない?」クロノアは目を輝かせて言った。
(もうダメっス。これじゃアニキを止められないっス。何を言っても無駄っス。)ため息をつくチップル。

そして、クロノアはチップルの手を掴んでいきなり走り出した。
「ワッフーー!!それじゃあ冒険だー!!」
「探検から冒険に変わってるっス〜。怖いっス〜。行きたくないっス〜!」
抵抗も空しく、チップルはクロノアの冒険についていく羽目になったのだ。 (夕飯までには戻りたいっス…)

クロノアとチップルは薄暗い森の入り口にいた。
その森は、一見どこにでもあるような森だが、異様な雰囲気に包まれていた。

「別にそれほど怖そうな場所じゃないね。ワッフー♪ それじゃ、行ってみよ〜!」
「アニキ、ちょっと待ってっス。」チップルは空を見上げた。さっきまでは晴れだったのに、今は黒っぽい雲が空を覆っている。
「なんだか雨が降りそうっス。今日は止めといたほうがいいっス。」
「そうだなぁ〜〜〜……」クロノアは考えている。
(良かった。やっと分かってくれたっス。これで安心っス。)
だがそんな安心感は強風といっしょに吹き飛ぶことになった。

「ってことは、雨が降る前に、はやく冒険……いや、今日は探検かな? 雨が降る前に終わらせなきゃ。ほら、行くよ。チップル。」
「全然わかってないっス〜〜〜〜〜〜〜〜。」
クロノアは森の中へと入っていった。慌てて追いかけるチップル。 

雲は一段と黒色に近づいていた。風が強くなっていく。雨が降るのも時間の問題だろう。
そして…その森の入り口が閉じていったことに二人は気付かなかった。

森の中は薄暗かった。背の高い木や低い木があり、それらの葉っぱが、日光を遮っていた。
ところどころで、空が見えるところもあったが、空が曇っていたため明るくなかった。
「わふぃ〜……とっても広いなぁ〜。目印になるものも無さそうだし……帰りは大変かな……?」
「分かってるんなら早く戻ろうっス。迷子になってしまうっス。」
「ダイジョブだって♪ちょ〜っと調べて、すぐに戻るんだから。チップル…心配性だね。そんなんじゃダメだって♪」
チップルの言葉も聞かずにどんどん奥へと進んでいく。チップルは、ただ追いかけることしか出来ない。

(う〜〜……アニキって恐いモノは無いんっスかねぇ?器が大きいのか何も考えてないのか……
 でもアニキの言うことなら信じられるっス!自分はそれについていくだけっス!)
「チップル?どうしたの?早く来ないと置いてくよ?」 
「わわわ! 待って欲しいっス〜〜〜〜」 チップルは慌てて追いかける。
(こんなところで1人になったら遭難は確実っス…………ん? 遭難?)

「アニキ。」 「なに?」 「帰り道は覚えてるんスか?」 
「ううん。見てないよ。チップルが確認してたんじゃないの?」
(えっ!?そんなの聞いてないっス!!) 冷や汗が流れるのを感じた。 もしかして……

後ろを振り返る。 道のようなものはまったく無い。ただ、草と木があるだけだ。 暗い……森が続いているだけだ……。
「遭難……したっスか…?」チップルはその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
「はにゃ?! ウソ?遭難したの?なんで?」 クロノアは今更ながら慌てている。

「だだ、大丈夫だよ!ボク達はまっすぐ来たんだから、まっすぐ戻ればいいんだよ。 さっ、ルプルドゥ!」
そういうクロノアの顔は引きつっているように見える。
「ホントに大丈夫っスか?」 「大丈夫、大丈夫♪ はは…は。」

だが出口に出ることは無かった。何時間歩き続けただろうか。いっこうに出口は見当たらない。
それどころかますます奥に入り込んでるようだ。 時間の感覚も分からなくなっている。

「これは〜…迷子に…なったかな?」さすがのクロノアもかなり慌てている。
「……迷子じゃなくて…遭難っス。」チップルは訂正した。

「だから言ったっス!!入るのは止めようって! もう体中がグルグル疲れて悲鳴を上げてるっス!!」
「なんだよ!! だったらついてこなきゃよかったじゃん! 文句ばっか言わないでよ!!」
「自分は必死に止めたっス!!でもアニキは聞いてくれなかったっス!!暴走してたっス!」
「そんなボクを止めるのがチップルの役目でしょ! なんでちゃんと止めてくれないのさ?!」
「そんなの知らないっス!! それに、いつ自分が止める係になったっスか?」
「……知らないよ。」
「無責任っス! ヒドイっス!! アニキはいつもそうっス!」
いつのまにか喧嘩になってしまった。言い争いはヒートアップしていく。

「車で言うと、ボクはアクセル。チップルはブレーキ。ポプカは…えっと……そ、そう、ハンドルだよハンドル!」
「ワケが分からないっス!ブレーキが利かない車なんて車じゃないっス! もうそれはグルグル回る歯車っス!!」
「なんだよ、ボクは歯車なんかより風車の方が好きさ!!」
「何の話っスか?! 好き嫌いなんか関係ないっス!  もうアニキは知らないっス! わふわふ言ってるだけっス!!」
「な、なにを〜〜。チップルだってグルグルだけじゃないか! ぼくなんかルプルドゥとか、あるんだよ。」
「アニキの言うことは意味がわからないっス!! もう自分はブレーキになんかならないっス!!勝手に暴走すればいいっス!!!」
「……………………………………嫌だよ。」 クロノアは突然ボソッと言った。

「え?」
「1人だけじゃ……楽しい車になれないよ。車には…ブレーキが必要なんだよ……チップルたちが…」
「アニ……キ…?」 クロノアはうつむいている。いつもの元気が無くなっている。
「それって………」 その時!!

ゴロゴロ…ビシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!    大きい雷が突然鳴った!

「はにゃーーー!!!」「うひゃ〜〜〜!!!」 二人は同時に叫び、同時にしゃがみ込んだ。
「ち……近かったっス。ずいぶん近くに落ちたみたいっス。」
「う…うん。喧嘩なんかしてる場合じゃないね。………あっ!」

その時、ポツポツと空から水…いや、雨が降ってきた。水の雫は段々と大粒に変わっていく。
ドシャ降りになるにはそれほど時間は必要なかった。
風は強くなり、落雷と大雨と強風という見事な3連コンボとなった。

「まにゃぁぁああ!!!」 クロノアは叫んだ。
「ま、まるで台風っス! いそいで雨宿りするっス!」
「ど、どこで?! どこで雨宿りすれば?! とと、とにかく進もう!」
そして前へ前へと走っていった。数分ほど走ったとき、広い場所に出た。

そこには、かなり高い木があり、湖ほどの大きさの池があった。
池は水が溢れそうなくらい増水していたが、その水は川へと続いていたため
溢れることはなく、均衡を保っていた。
そして、その木は高いだけでなく、幹が丈夫で枝も大きい。そのため、その木の下だけが雨に濡れてなかった。
「あ、あそこだ!あそこへ雨宿りしよう!」 「さ、賛成っス!!」
クロノアとチップルはその木の下へ走っていった。

そしてクロノアとチップルは座り込んだ。何時間も歩いていたから、足は棒のようになっていた。
数分、雨に打たれていたため服はずぶ濡れ。雨水がしたたり落ちている。

「わふぃ〜〜……なんとか助かったね。」クロノアは安心して言う。
「雨が止むまでジッとするしかないっス。しばらくはいろんな意味で動けないっスからね。」チップルも深呼吸して言う。
「ははは。確かにもっと歩けって言われても無理だもんね。足が動かないや。」

「は……ハクションッ! ……っス。」 チップルはクシャミをした。
「う〜〜気温が結構下がってるっス。寒いっス。」ガタガタと震える。
「はにゃ?! 大変だ。ずぶ濡れのままじゃ風邪ひいちゃうよ!? 服を乾かさなきゃ!ほら、服を脱がなきゃ…」

そう言うとクロノアは上着のジッパーを下ろして上の服を脱いだ。
突然のことにチップルはドキッとした。 (い、いきなり脱がないでほしいっス!)

「ん?早く服を脱がないと風邪ひくよ?」 クロノアはそう言いながら、帽子と靴も脱ぐ。
そして木の出っ張っている部分や近くの枝に、洗濯物を干すように引っ掛ける。
「脱ぎにくいのなら手伝ったげるよ。」 クロノアはチップルの服を脱がそうとするが……
「!! い、いいっスよ!自分で脱げるっス!」
慌てながらもヘッドギアとグローブとシューズを外し、上のシャツも脱ぐ。そしてクロノアに倣って、服を枝などに引っ掛けておく。

だが、チップルは何かに驚くようにビクッと体を震わせて振り返り、言う。
「し……下の服も脱ぐっ………ス…か?」                   沈黙…………。

「ぷっ……はははは!! そんなわけ無いじゃん! いくらなんでも下は脱がなくていいよ。っていうか普通は脱がないよ。はは!」
チップルは、(自分は何を当たり前のことを聞いているっスか!!)と、自分自身に言いながらあまりの恥ずかしさに赤くなった。

そしてズボンなどは着たままで、クロノアとチップルは座る。
「びしょ濡れになった時は、服は脱いだ方がいいんだよ。水を吸って服は重くなるし、体力を消耗するんだ。」
「へぇ〜物知りっすねぇアニキは。」
「へへん。まぁね、旅をするときの豆知識だよ♪」 クロノアは嬉しそうに言う。
「でも…まだ少し寒いっス。」チップルは自分の腕を抱く。
「ああ、そういう時は……」

クロノアはチップルの隣に座り、ピトッと体をくっつけた。
(!!!)チップルはまたもや驚く。
「ほら、お互いの体温のおかげで温かいでしょ?男の子と女の子同士なら少し恥ずかしいけれど、
男の子どうしならそれほど恥ずかしくないでしょ?」 クロノアは笑いながら言う。
(男同士でも……十分恥ずかしいっスよ…) しかし口には出さなかった。
チップルはチラッとクロノアの方を見る。

クロノアはどこか哀しそうな表情で前を見ていた。
空を見ているのか、先の方にあるたくさんの木を見ているのか、葉っぱを見ているのか、大きな池を見ているのか、
雨粒を見ているのか、雲を見ているのか、雷を見ているのか、もしかしたら足元を見ているのかもしれない……。
その視線の先をチップルは読めなかった。 それくらい不思議な雰囲気に今のクロノアは包まれているのだ。

(なんかアニキ……服を脱いでいて…その上、体中濡れていて…哀しげな表情………
 なんだか…なんだか……今のアニキは………色っぽい………ハッッ!!!
 じ、自分は今なにを考えていたっスか!変なことを考えてしまったっス! バカバカバカバカグルグルバカっス!!!)
チップルは自分の頭を両手で叩きはじめた。 当然クロノアは驚いている。
「ウウ……グローブをはめてないから、手と頭が痛いっス……」 涙目になるチップル。
「……なにバカなことしてんのさ?」クロノアは呆れている。
「アニキにもバカッて言われたっス〜〜。」 チップルは、ますます落ち込んでしまう。

「何やってんのサ。…それにしても……お腹すいた〜〜。」 お腹がグ〜っと鳴る。
「昼から何にも食べてないからなぁ〜。今はもう夜なのかな? お腹すいた……みんな…心配してるだろうな。」
「このまま…飢え死にしてしまうっスかねぇ。木の実すら見当たらないし……」チップルは辺りを見回す。
「そ、そんなの困るよ! なにか無いのかなぁ…? ん?これは………」
クロノアは何かを発見したようだ。

「キノコ……?わぁ!いっぱいあるよ♪」クロノアは目を輝かせた。
雨を防ぐのに夢中で、気付かなかったのだろう。木の周辺にはたくさんのキノコが生えていた。
そのキノコは結構大きくて、鮮やかなピンク色をしていた。

「美味しそう〜!!」
「そ、そうっスか? なんだか怪しいっス。毒キノコかもしれないっス。」
「や、やっぱりそうかな?でも………食べなきゃ腹ペコで倒れちゃうよ…。」

二人は考えた。食べなきゃ間違いなく腹ペコでバタリと倒れてしまうだろう。
しかし、もしこれが猛毒をもっていたら、ひとたまりも無いだろう。
食べるべきか…食べないべきか……。 なんだかキノコから良い香りがしてきた。幻聴ならぬ幻嗅というやつだろうか?

「グゥゥゥウウウウ」 クロノアのお腹が大きく鳴った。
「ええい!!もう我慢できないや!!ボクは食べる!!倒れても食べる!毒だろうと食べる!死んでも食べる!
 チップル!ボクに何かあったときは、みんなによろしくぁj;lhp@−^−」。・mんbvw ガブッ!」
クロノアはわけの分からないことを言いながら、キノコにかぶりついた。

「ああ!?食べちゃったっス!アニキがおかしくなったっスか?!」 チップルは震えている。
「モグモグモグ……ムシャムシャ……ペロッ…………美味しい!!!」
「…………………へ?」 チップルは呆気にとられた。
「美味しいよコレ! うん、変な感じもしないから……毒キノコじゃないみたい! わっふー♪」
あっという間に全部食べてしまった。 2本目を食べようとしている。
「じゃ、じゃあ自分も食べてみるっス!」チップルはキノコを手に取った。

このとき二人は気付いてなかった。このキノコがとんでもない事を起こすことを………。

「はむっ…むしゃむしゃ……焼いたらもっと美味しいかもね♪揚げたり煮込んだり刺身にしたり。」
「それは……あまり美味しく無さそうっス…。」
(このキノコ……味は悪くないけど…なんか変な感じがするっス…。なんでだろ?)
そう言いながらもチップルは半分ほど食べ終わっている。 クロノアは2本目も食べ終わり、3本目を手にしている。

「うん!食べられるキノコで良かった♪おかげで飢え死にしなくてすみそうだ♪わっふー!」
クロノアは上機嫌でパクパク食べている。
「アニキ〜。ちゃんと噛まないと消化に悪いっスよ。」
「堅い事を言うなよチップル。……そういえばチップルってボクシングの格好をしなかったら結構、雰囲気変わるよね。」
「えっ、そうっスか?!まぁ、グローブとかは肌身離さず着けてるっスからねぇ。」
チップルは少し照れながらキノコを飲み込む。

「うん。いつも着けてるもんね………………うっ!!!」クロノアが3本目のキノコを飲み込んだときだった。
「うっ!!……ぁっ…うあぁ!!」仰向けに倒れて、苦しそうにもがく。

「!!!!! あ、アニキ!どうしたっスか!しっかりしてくださいっス!」チップルは慌ててクロノアの様子を見る。
「う……がぁっ!か、体が……なんか……へ…ん。」
「や、やっぱり毒キノコだったっスか!? あわわわ、ど、どうすれば? と、とりあえずそこの池で水を……」
チップルが立ち上がろうとした瞬間、クロノアに腕を掴まれた。 (え……?)

「あ、アニキ?」 
クロノアは息が荒かったが、もう苦しそうではなかった。しかし明らかに様子が変だ。
体を半分起こしてチップルをじっと見ている。左手でチップルを掴み、右手で足と足の間を押さえている。
薄暗くて分かりにくいけれど、顔が赤いようだ。照れているわけではなさそうだった。
風は弱くなり雷は止んだけれど、雨はまだ降り続けている……。

クロノアはチップルに抱きよせて、唇を奪う。 湿った体がくっつき合う。
「んん?! あ、アニキ!?」突然のことにパニックになる。
ギュっと腕に力をいれてそのまま口の周りを舐めまわす。チップルは変な気分になる。
(アニキが……キスしている?自分に?……なんでっスか?)

クロノアはチップルの胸と脇腹を撫で回す。そしてそのまま前に体重をかけてチップルを組み敷いた。
「チップル……ボク…なんか…体が…おかしい…よ。」クロノアは見下ろしながら寂しそうな表情で訴えかける。
クロノアのズボンは湿っていた。雨に濡れてから時間が経ったはずなのに再び湿っていた。
チップルは自分の体になにか硬いものが触れているのを感じた。
その硬いモノはクロノアのズボンの中にあり、ズボン越しにチップルの体を突いていた。
クロノアはキスを続ける。チップルは押しのけようとするが、力が入らない。
(アニキ………一体どうしちゃったスか?まさかあのキノコのせいで?やっぱりただのキノコじゃなかったっスか………)
キスをされながらも、チップルは必死に考えていた。
「えへへ……チップル……気持ちいい……ふ…あぁ…」
やはりキノコのせいだろうか? クロノアの思考回路は少しずつおかしくなっていっている。

クロノアは不意に口を離して体を起こす。そしてズボンをゆっくりと脱いだ。
そこからは赤く光っていて脈動していて、破裂しそうなほど大きくなっているモノがあった。      痙攣している。

チップルは恐怖に似た感情に襲われた。股間にあるモノが、こんな風になるのを初めて見たからだ。
(な!?なんっスか?! コレは! なんか…生き物みたいに動いてるっス……。こ、怖いっス)
「なんか……すごく気持ちいいんだ。あのキノコには多分…いい感じになるようなのが…入ってたのかも…。でも……。」

クロノアは自分のモノを手でもみほぐす。その度に、クチュ…ピチャと音をたてる。
「なんだか……ココが……苦しい…破裂しそう……痛い…お願い……チップル………なめて……。そしたら…鎮まる…から。」
そう言うと、股間をチップルの顔へ近づけていく。チップルは戸惑う。
(こ、これをなめるっスか?!それは………でも…アニキ苦しそうっス…。なんとかしなきゃ……)
チップルはソレを咥えた。やり方はわからないが、ゆっくりと舐めまわす。
「う……あぁ!」あまりの快感にクロノアは暴れる。チップルは両手をクロノアの腰に回して、動かないよう固定する。

だが、舐めれば舐めるほどソレは、ますます熱くなり、蜜が口から溢れてくる。
気のせいか、さっきよりも大きくなってきたようだ。 だけどチップルは舐め続ける。
口の中が液で一杯になり、息苦しい。でもやめる訳にはいかない。アニキのためだ。
あふれてくる甘い味がする蜜を飲み込む。なぜだか分からないけど、口からこぼすのはもったいない気がしたのだ。

しばらく舐めていたら、「へへへ♪チップル……もっと…もっと な め て……」
クロノアはチップルの頭を掴んで、口の奥へと突き上げる。
「んん!?」いきなりのどの近くまで突き上げられて、息苦しくなる。
だが、クロノアの勢いは止まらない。自分の腰と両手を激しく動かす。

あまりにも苦しくて涙目になるチップル。でも我慢が出来た。自分が慕っている人のためだから。
クロノアは優しくチップルの頭を撫でる。
「ねぇ……なんだか…ココから出そうだよ…おしっこ……かもしれないけど………出していい?」
(!!!そ、それはいくらなんでも!? 自分はトイレじゃないっス!!)
そう言おうとしたけれど、声が出ない。さらに返事も待たずにクロノアは動きを一層激しくする。

「やめて欲しい?」 「ひゃめて…ほひぃっス……」なんとか声を振り絞る。
「じゃあさ………ボクのこと…アニキじゃなくて………おにいちゃんって呼んでよ……。」
「ふぇ?」 クロノアの突然の言葉に理解できなかった。
「ほらぁ……呼んでよ…おにいちゃんやめてって………じゃなきゃ…出ちゃうよ……いいの?」
もうクロノアのモノは真っ赤になっていた。いつ出てもおかしくないくらいに。
「ふぁ…や、やめてっス!アニ……アニキ……ぅ…ぉ、おにいちゃん!やめてっス!おにいちゃん離してっス!!!」
「えへへへへ♪もうダメだよ……。もう…出ちゃう……ゴメンねチップル。もらしちゃ……うっ!!」

耐え切れずに勢いよく飛び出した熱い液体を口の中へと放った。
その痙攣は一回で鎮まることは無く、何回も何回も放った。チップルはあっというまにベトベトになる。
「アニキ……ひどいっス。ちゃんと言ったのに…止めてくれなかったっス…。ん?これ………おしっこじゃない?
 なんスか、コレ?白くて……ネバネバしてるっス…。変な……味がするっス。」
「ぅん?多分……コレは…"ミルク"じゃないかな?だって白っぽい色をしてるし……多分。」
確かにその液体は白に近い色をしていた。
「"ミルク"っスか……。確かにそうかもしれないっス…。初めて知ったっス。動物さんにしか出せないと思ってたけど……
 こうやったら自分達にも出せるなんて…………不思議っス……。」

(キノコのせいで出せるようになったんスか?それとも、もともと出せるようになっていたけど、キノコがそれを手伝った…?
 なんだかよく分からないけどキノコがアニキをおかしくしたのは間違いないっス。
 3個も食べたんだから……………あれ?そういえば自分も食べたような………あっ!)

遅かった。気付いたときには今度はチップルの体に変化があった。
クロノアほどではないが、股間のモノが反応している。熱い……。胸がドキドキする。もし目の前の相手に気付かれたら………。
遅かった。もうクロノアはチップルの異変に気付いてしまった。顔が赤くなり、息も荒くなっているからだ。
なにより足と足の間が、先ほどのクロノアのようになっている。これでは気付くなという方が難しい。

「チップルも……"ミルク"…出したいんだね…。ボクがミルク搾り…したげるよ。」
「まっ……待ってっス!!ダメっス!グルグルになっちゃうっス!!」
だが無駄だった。チップルは下の服を下ろされ、生まれて初めて大きくなったモノをあらわにされる。
クロノアはそれを右手で揉み始める。今までに感じたことの無い快感がチップルを襲う。

「や…ヤダっス。やめてっス……。気分が……おかしくなるっス…。」
「もぅ〜。うるさいなぁチップルは。」
チップルを黙らせるためにキスをして口を塞ぐ。抵抗できないように左手をチップルの背中に回す。
「あのね……ボクの耳ってね…。こんな使い方もできるんだよ。」 「?」
クロノアは長い耳をピクピクと動かす。そしてその耳でチップルの股間を揉む。
柔らかくてフサフサした耳は、手で揉むことでは表現できない快感を与えた。
空いた右手は、胸と脇腹を撫でるのに使っている。
(なんで?なんで体を撫でられただけでこんなに感じてしまうっスか?今までこんなこと無かったのに……)

「ふふふ。ボクの耳は羽ばたけるだけじゃないんだよ。少しだけならこんなことも出来るんだ。みんなにはナイショだよ♪
 ボクも………チップルの…ミルクが欲しいな。ねぇ……出して?ミルク…出して?いいでしょ?チップル………。
 やめて欲しいのなら………もう一度……ボクのことをおにいちゃんって呼んでよ。そう呼ばれるたびに、変な気分になるんだ。」
「アニキ………お……に……クロノアおにいちゃん………ミルク………だめ……気持ち………」

クロノアに刺激されたソレは、あっけなく果ててしまった。
フサフサな耳はミルクでぬるぬるになってしまった。
それを手ですくい取り、ペロッとなめる。 「チップルのミルク…美味しいよ」

ミルクを出すのって……こんなに疲れるもんっスか…?動物さん……こんなに大変だったんスか…。
 今まで……考えたこと無かったっス…。でも………悪くはない気分っス……すごく気持ちいいっス)
 ぐったりと重力に身を任せる。さっきまではあんなに熱かったのに、出した瞬間、体がだるくなってしまう。

「チップル……すごく……その…かわいかったよ…。なんか……また…おかしくなりそう…。」
クロノアは再びチップルに襲いかかった。ミルクを出して、疲れ果てたチップルは抵抗することもなく受け入れた。
キスをして舌を押し込む。ピチャピチャと水を舐めるような音がする。
胸とお腹を揉んで、ぐいぐいと体を擦り付ける。 チップルはクロノアの体に手を回し、しっかりと抱きしめる。

「ねぇ……………男同士の場合って…どうするか分かる?」
「? 何のことっスか?」チップルは突然の質問の意味が分からなかった。
「こういうことさ。」
クロノアはチップルの足を持ち上げてそこにある穴に一気に自分のモノを挿した。
「うっ!うああぁぁ!!!い、痛っっ!!痛いっス!」
小さい穴に大きすぎるモノを差し込まれて、激痛がくる。
ぐちゅっという嫌な音がして、液が溢れてくる。血も滲んできた。

「うぁあ……ダメっス……。いくらなんでも………きつすぎるっス…。」涙が出てくる。
「う……うん。さすがに…ボクの方も…圧迫されて…痛いや。これは…やめるよ…………………あれ?」
「ど、どうしたんスか?は、早く抜いて欲しい…っス…。」
「あ、あの〜チップル。言いにくいんだけど………」
クロノアは、ばつの悪そうな表情になる。   嫌な予感がした。

「……………抜けないんだ」 (……………………は?) またもや貧乏くじを引いてしまったような気がした。

クロノアはなんとか抜こうとして動かす。しかし、動かすたびに双方に快感と痛みが走る。
「どうするんスか?まさか………一生このままっスか?」
「それはさすがに…やっぱり……このまま出すしか!」
そういうと、一気に突き動かした。想像を絶する快感が襲ってくる。気を失いそうだ。
「ぃ…いやっ!痛い…気持ちいい……おかしくて…なりそ…ス…うっ!ひゃっ!!」
「チップル…チップル…チップル…チップル…チップル…チップル…チップル…チップル…」
ぐいぐいと腰を押し上げる。チップルの中でどんどん大きくなっていく。壊れそうなくらいに……。

不意に、目が合う。お互いにじっと見続ける。妙に胸がドキドキするのはなぜだろうか?
チップルは目を閉じて、クロノアにしがみつく。クロノアは顔を近づけ、そのままキスをする。
初めて気持ちが一致したような気がした。 股間のモノは破裂するくらいに大きく膨れ上がる。

「ぁ……いいっスよ。出していいっス。アニキのミルク…体の中に欲しいっス…。」
「言われなくても…。」 激しく上下運動を行う。体中がガクガク震えてしまう。
口からは唾液がこぼれて、なぜか涙が出てくる。 なぜかは分からない。嬉しいからか哀しいからか……気持ちいいからか。
雨の音と喘ぎ声が混ざり、奇妙な感じがする。でも、もうどうでもいい。この気持ちよさがあればそう思える。
「もう……限界かな…?出すよ?チップル…出しちゃうよ?もう止まらないよ?我慢できな…い。
 だって…ここが…こんな…もう……好きだから……気持ちよくて………あっ!…はにゃ!!」
「うっ!!ぅああ!!あ……もう…ぐるぐる?っス……アニキ……」

そのままチップルの中へミルクを出した。勢いよく、何回も出した。
そして二人の意識は闇の中へと落ちていった。深くて広い闇の中へと……。
ただ雨の音だけが鳴り続けていた。

夢を見ていた…。
暗くて…真っ暗で…何もない…誰もいない…自分すら見えない。
どこに行けばいいのか分からない……先へ進むのが怖い…一歩を踏み出したら堕ちてしまうかもしれない。
いつもの元気は無くなってしまう…その場にしゃがみ込む…怖い恐いこわいコワイ!!
どこにも行きたくない!でも逃げ出したい! 見たくない!でも知りたい!
1人でいたい!でも助けて欲しい! ここはどこ…?自分は誰だ? 
よく分からないけれどボクはこう思ったんだ………。 家に帰ろう……って。

その時何かが見えた。いや、見えたような気がした。道が……前へ進む道が…。
前へ前へ進むための道が……誰かといっしょに…助け合って…生きていくための道が…。

そうだ!ボクは……ボクは……!!  そしてまわりが明るくなった。 夢から覚めたのだ。暗くて…哀しい夢から…。
でも今見た夢ははっきりと覚えてる……なぜか消えない。だれかが目の前を横切った……気がした。
緑色で…自分のように耳が長くて……何処かで逢ったような……キミは誰?ボクは……クロノア。

ぱっと自分の目が開いた。今のも夢だったんだろうか? 分からない。でも……はっきりと覚えている。それだけは確かだ。

「あれ…? ここは……。」
クロノアは目が覚めた。あたりはまだ真っ暗だ。雨はもう止んでいる。
「ここ…どこだろ? どうして…はにゃ?」
その時自分が服を着ていないのに気付いた。早く言えば、真っ裸だ。
そしてその体を眠りながらも抱きしめている相手がいる。チップルだ。
クロノアとチップルはどちらも裸で、お互いを抱き合うように横になっていた。

(ど、どうなってんの? なんで? なんか…記憶があやふやだ…。たしか…そうだ!森に入って……迷って…雨が降って…
 そうそう! 雨宿りしたんだっけ…? そしたらお腹が減って……なにか食べたんだ…キノコ?
 キノコを食べて………そしたら……そしたら………あっ!!   思い出した)

クロノアは思い出した。自分が…いや、自分達がなにをしたのか。まだ自分達には早すぎることをしてしまったことを。
ブルッと体が震える。(寒いや…) 横になりながら手を伸ばして、木に干していた服を取る。
そして自分達の体に掛ける。布団を被るように…。
「ぅん…アニキ……」 チップルが寝言を言いながらギュッと体にしがみついてきた。
「………チップル」 クロノアはそっと口を近づける。あと少しというところで…………

「ふあぁ…おはようっス、アニキ。あれ?まだ暗いっスね。あれ?どうしたっスか?」 目を覚ました。
「はにゃ!? い、いきなり起きないでよ! ビックリしたなぁ!」  「?」

まだ少し寒いため、二人は体を寄せ合う。
「ねぇ……チップル。……………ゴメンね。」
「え!い、いきなりどうしたっスか?!」 クロノアはあの時のような哀しげな表情をしていた。

「だって…いくらなんでも…キノコのせいだからって…あんな事しちゃって………ホントにゴメン。
 それに…いつもいつもボクが無茶をしてるせいで…みんなに迷惑かけちゃってる…。
 ホントにダメだね…ボクは……いつもいつも………」
「そ、そんなことないっス!!アニキは……アニキは……えっと…その…いつも元気で…明るくて…
 みんなを引っ張って…え〜と…だから…その…何て言えばいいのか…」
うまく言葉が見つからない。でも…クロノアにはみんなをひきつけるような魅力がある。

「それよりも…ダメなのは自分の方っス。いつもいつも何も出来ずに…アニキみたいに強くもない。
 勢いもない、何をするにも受け身ばっかりで…強くなりたい…そう思ってるのに…
 こんな…ボクシングの格好をしてても……バカみたいで……かっこ悪くて…何をすればいいのか…」

「進めばいいと思うよ。」 「え?」 クロノアはそっと抱き寄せた。
「何も考えずに…ただ前に…何かに向かって…どんな結果でもいいから…進むんだ。
 強くなるためでもいい……カッコよくなるためでもいい。優しくなるためでもいい……。
 だから……ボクは…ボクだって最近気付いたんだけど………どう?ちょっとカッコイイかな?えへへ♪」

(カッコ……よすぎるっス、アニキは。……そんなところに……惹かれたのかもしれないっス。)

「そういえばアニキ? 何であの時……その…おにいちゃんって呼んでって言ったっスか?
 そういう趣味があるんスか? それともその場の勢いっスか?」
クロノアは顔を赤くして、慌てる。
「も、もう。なんだよ………。そうだなぁ…チップルには弟たちがいるよね?
 でもボクは一人っ子だから……その…寂しかったのかもしれないな。……よくわからないけど…。」

クロノアとチップルはお互いを見た。そして、いろんなことを話し合った。
今までに話したことがない話。自分だけが知ってる秘密。普段話さないような話。
すごく……楽しい時間が過ぎていった。 雲が少なくなり、明るい月が見えた。
そして驚くことに、その光を受けてキノコたちが光りだした。

「うわぁ…綺麗だ。」「ホントっス………とても不思議な…キノコっス。色々なものを魅せてくれる…不思議な…。」
ボウッと輝くキノコたち。辺りをじんわりと照らしていく。怖くはなかった。

クロノアは立ち上がって服を着ていく。
「帰ろう!帰り道を探そう!」
チップルも服を着る。
「そうっスね!グルグル探すっス!! でも…どこを探せば…?」

なにかないかと周りを見渡す。なんでもいい。目印になるものは……。
「あの大きな池から流れてる川……どこに続いてるんっスねぇ。」
「川…そうか! この川をたどればもしかして! 森の出口に続いてるのかも! ルプルドゥ!」

まだ夜の闇は続いていた。しかし、あちこちにあるキノコたちが道を照らしていた。
そのおかげで川を見失うようなことはなかった。
しばらく歩いていたら、だんだんと見覚えがあるような場所に出てきた。
空が少しずつ明るくなっていく。 出口が近い。 そう思えてきた。

「ねぇチップル。」 「なんっスか?」 「今度はポプカも誘ってみる?」
「ははは♪きっと楽しくなりそうっスね…。でも…しばらくはアニキとだけが…いいっス」
空の月が薄くなっていく。夜ももうすぐ終わるだろう。

「アニキ。」「なに?」
「もう一度……その…キスして欲しいっス。」
「え?! ………………うん。」
今度は目を閉じずにそっとキスをする。あのときのようなキスじゃなく、とても短くて暖かいキス。
しばらく黙ってお互いに見つめあう。
「やっぱり……やっぱり間違いじゃなかったっス!」
「へ?なにが?なにが間違いじゃないの?」
「ナイショっス♪」 チップルは先に歩き出す。
「教えてよ〜、ケチ」今度はクロノアが追いかける。

「「あっ!!!」」 同時に声を出す。  出口だ。 森の出口がそこにあった。
チップルはクロノアの手を取り、走り出す。 明るく笑いながら………。
そして二人は明るい光に包まれた………。

チップルの日記 b

っと、ここまでが自分が体験した話っス。
最後までお疲れでしたっス。 と言っても、自分しか読んでないっスけどね。
ちょうど朝方にアニキと自分は村に戻ってきたっス。
村では大騒ぎだったっス。もう大変だったっス! グルグル叱られたっス!
もうコリゴリっス。 これからはちゃんと晩ごはんまでに帰りたいっス。

そうそう、あの森に名前がついたっス。正確に言えば、アニキがつけたっス。
「きのこの森…なんてのはどう?」って言ってたっス。 そのままっス。センス無いっス。
でもわかりやすくてけっこういいと思うっス。 自分とアニキしか呼んでないっスけどね。

あれから…時々アニキと、きのこの森に行ってるっス。
散歩に行ったり…探検したり…冒険したり!
アニキの家に泊まるときは……その…あのキノコを採りに行ってるっス。
アニキの言うように、あのキノコはどんな料理にも合うっス! とても美味しいっス。美味っス!

もちろん………アニキと自分だけ食べてるっス。 誰にも……ナイショっス。

ふあぁ…もう眠くなってきたっス。育ち盛りは大変っス。
じゃ、そろそろ眠るっス。明日もまた………たくさん遊ぶっス♪

それじゃ………おやすみっス♪



森とキノコと雨宿り   おしまい♪