DOOLS LOOK
「わーいやったぁ!勝ちました!」
「やったね!にゃはははっ」
コートの向こう側でガッツポーズをするロロとタットに、クロノアはため息
をつきながらボールをポプカに渡した。
「あーあ、負けちゃったよ。がんばろうね、ポプカ」
「わぎゃ…お、オイラはイヤだなぁ…逃げねぇか?なあ」
「だめだよ、約束は守らなきゃ。ボクもイヤだけどさ…」
ひそひそと話しながら、クロノアはかぶりをふった。コートの向こうではロ
ロとタットが楽しそうにしている。
「クロノアさん、ポプカ、約束ですよ!」
ものすごく嬉しそうなロロに、クロノアは苦笑いでうなずいた。
「まさか負けるなんてねー…。」
「オマエ、ロロを甘く見てたろ。まあオイラもだけど」
渡された衣服に袖を通しながら、二人は呟いた。ビーチバレーで負けたら、
ロロとタットの好きな服をそれぞれ着なければいけなかったのだ。クロノアに
渡されたのは、タットからの服。見た目に女物とわかって、袖を通すのがかな
り恥ずかしい。フリルのたくさんついたミニのワンピースに白いタイツ、それ
からロングの手袋と黒い帽子。
人形に着せるような服に辟易しつつ、クロノアはポプカの服を見やる。
「ポプカはそれ…なに?マジシャン?」
「シルクハットだしなぁ、たぶんそうじゃないか?オマエのは──」
帽子だけかぶってワンピースを見せると、ポプカは沈黙した。数秒後、ポン
と肩に手が当たる。
「がんばれ」
「楽でいいなぁ、ポプカ…」
仕方なくワンピースに着替えながら、クロノアは何度目かのため息をついた。
「わあぁ!よく似合ってるー!」
「アタシのセレクトはバッチリなのにゃねー!」
部屋から出てきたクロノアに、ロロとタットが口々に呟いた。先に部屋を出
たポプカもぽかんと口が開いたままだ。
「こ、これ、スカート短かすぎない?」
必死に両手でスカートを押さえながら、クロノアは恥ずかしそうに顔を上げた。
「なに言ってるんですか、普通ですよ!」
「あれあれクロノアちゃん、白タイツはき忘れた?」
ふとタットが言うと、クロノアはハッとして、
「あ!すっかり忘れてた!」
「でも、これならタイツなんてなくても問題ないですよ」
取りに戻ろうとするとロロがフォローした。
「それより私、二人にいろんな服着せてみたいです!」
「にゃはははっ、それ賛成〜!」
「え、まだやるの?!」
クロノアは驚いて思わず叫ぶ。
「もちろんです!」
ロロがなぜか自信満々に答える。と、部屋に誰か入ってきた。
「おい、クロノアいるか?」
「あっ、ガンツさん」
赤いジャケットに銃火器を背負った男が部屋を見回す。ガンツと呼ばれた男
はため息をついた。
「いねェか。見かけたら教えてくれよ。…ん?」
不意に視線がフリル付きワンピースのクロノアに向く。
「アイツに妹とかいたのか?」
──ぶっ
ガンツの台詞に全員が吹き出した。が、当のクロノアは泣きそうな顔をして
ガンツに近寄った。思い切り殴りかかって、そのまま部屋の外に駆け出すと、
振り向きざまにクロノアは叫んだ。
「──ガンツのバカぁっ!!」
走り去るクロノアにぽかんとしながら、ガンツは目をしばたいた。それから
ようやく、ハッとする。
「──まさか、本人だったのか!?」
「もうガンツさん、気付くの遅いです!」
「クロノアちゃん怒っちゃった〜、ひゃははっ」
辟易しながら額に手を当てて、ガンツはかぶりをふった。
「連れ戻さなくていいのかよ?用事あったんだろ?」
ふとポプカがつぶやいて、ガンツはまた部屋の外に飛び出した。
夕方の公園は誰もいない。一見すると普通の女の子がベンチに座り込んで泣
いている事以外は、全く普通の光景だった。
その一見普通の女の子も、本当は男の子なのだが。
「ガンツのバカ…妹なんているわけ…ぐすっ」
本人と気付かれなかった上に他人と思われたことが悲しくて、クロノアは手
袋を涙で湿らせた。
「でも…ボクそんなに女の子に見えたかな…ちょっとショック……」
涙目のまま、自身の身体を眺める。生まれて初めて袖を通したフリルだらけ
の典型的な女の子の服。本人は知るところではないが、今の姿を見ていると普
段の格好すら想像つかない。夕日と涙のせいで、その表情はすっかり普段とは
違う見え方になっていた。
「そんなところで泣いて何やってんだ?お嬢ちゃん」
不意に野太い声が聞こえて顔を上げると、いかにもガラの悪そうな男二人が
目の前にいた。クロノアは思わずビクッと身を竦める。
「な…何でも、ないよ。ほっといてよ!」
逃げるが勝ちか。そんなことを本能的に悟り、クロノアはじりじりとベンチ
を横に移動した。
「そうつれなくすんなよ。彼氏と喧嘩でもしたのかぁ?」
「……」
喧嘩。そんなのではないと胸中で思いながら、クロノアはベンチから立ち上
がった。些細なことだ。別に泣くほどのことでもなかったような気がする。
「泣かせちゃう彼氏よりも、オレらとあそばねぇか?へへへ…」
本能的にゾクッとして、クロノアはその場から駆けだした。一瞬布の裂ける
音がして、背後に手をやるとスカートが若干切れていた。肩越しにちらりと見
ると男二人がナイフを手に追いかけてくるのが見えた。
追いつかれるのも時間の問題かとリングに手をのばそうとして、クロノアは
着替えの時部屋に置き忘れたことに気がついた。
「公園からでなきゃ──」
背後に二人の男が近づくのを確認しながら、クロノアは走った。が、慣れな
いローファーのせいで躓いて転びかける。その腕を誰かがつかんだ。想像通り
の相手が腕を掴んでいるのを確認して、クロノアの背筋に冷たいものが駆け抜
けた。怖い。本気で、恐ろしさがこみ上げてくる。
「は、離せぇ!」
じたばたと暴れても相手の力は思ったより強く、クロノアは地面に押しつけ
られた。
「いいじゃねぇか少しくらい。たっぷり可愛がってやるぜ?」
いやいやと首を振るクロノアに、男が手を触れた。ワンピースの上からはい
回る手の感触に、クロノアはビクッと身体をふるわせる。
「や、やだ、やめ──」
精一杯じたばたと暴れても、相手はびくともしなかった。
「イヤだ!離してよ!」
スカートの中にまで手が延びてくる。両脚をしっかり寄せていやいやとかぶ
りを振ると、クロノアは泣き出した。
「──テメェら、何してやがる!」
不意に聞き覚えのある声が聞こえて、クロノアはしっかりと閉じていた瞼を
押し上げた。
「──ガンツ…!」
一生懸命走っていたのか、肩を上下させながら、ガンツはクロノアにちらり
と目をやる。
「──なんだよ、本命様の登場かよ?」
ガラの悪い男二人がクロノアから離れて、ガンツに向かってナイフを突きつ
けた。
「ケッ、コイツを選んだのは間違いだったみたいだなァ…?後悔させてやらァ」
構えをとるガンツがいつもの二丁拳銃を手にしていないことに気づき、クロ
ノアは泣きながらいやいやと首を振った。遠距離戦を得意とするはずのガンツ
が接近戦でそう簡単に二人を相手にできるのだろうか、相手はナイフまで持ち
出している。
「ガンツ、やめて、怪我しちゃうよ!」
「バカ野郎!オメェは隠れてろ!」
そんなことを言われても、クロノアは足がすくんで動くことができない。恐
怖とかそういうものが原因ではなく、先程受けた辱めのせいだろう。身体の奥
からじわじわと熱がこみ上げていくのがわかる。恥ずかしそうに俯くクロノア
に、ガンツは舌打ちして男二人をにらみつけた。ナイフの斬撃を避けて、足払
いで一人を地面にたたき伏せる。
それでも明らかに苦戦しているようで、ガンツの頬や腕には擦り傷や切り傷
が増えている。不幸中の幸いなのか、相手は二人ともガンツよりは動きが遅か
った。
いつも抱えている重い銃がないせいか、ガンツはいつもより素早く動けるよう
だ。と、不意にガンツがクロノアの所まで走り寄って、素早くその身体を抱き
上げる。
「!!?」
「逃げるが勝ちだぜ」
にやっと笑いながら、ガンツはクロノアを抱え公園から走り去った。ちらり
と後ろを見やると、男二人は追いかけてきていなかった。
嗚咽をかみ殺しながら、クロノアはガンツの腕に消毒薬を塗り付けた。痛そ
うに顔を歪めるガンツの表情に、また涙がこみ上げる。
「……ンなに、泣くなよ。こんな傷大したこと──」
「だ、だって、ボクのせいでこんなに怪我して…」
ベッド脇の救急箱から出した包帯を丁寧に巻きながら、クロノアはぽろぽろ
と涙をこぼした。
「何でガンツがボクのせいでこんな怪我しないといけないのさ…っ……」
震える手の上に涙が落ちた。白い手袋に涙の跡が残る。
「ばかやろ、こんな目にあった癖に人の心配ばっかしてんじゃねェよ」
ナイフで引き裂かれたクロノアのワンピースを視線で示して、ガンツはにや
っと笑う。どうにか笑ってほしかったのだが、クロノアは泣きながらガンツに
しがみついてしまった。
「勘弁してくれよ…ったく」
ぐずるクロノアの頬に手を添えて、ガンツは浅い口づけを落とした。びくり
とクロノアが過敏に反応したのを確認すると、そのまま押し倒して柔らかな唇
を貪った。キスだけで、クロノアは瞳を潤ませる。熱い息が混じり合って、ガ
ンツはにやりと下卑た笑みを浮かべた。
「なんだよ、オレとはしても良いのか?ん…?」
スカートの隙間から腿に手を這わせると、クロノアはびくりと震えた。
「…っ…あ、やぁぁ…っ!?」
女物の下着の上からクロノア自身に触れ、丁寧に擦り上げる。びくびくと身
体を跳ねて、クロノアはガンツにしがみつく。少女を犯しているような気分に
かられて、ガンツはクロノアにささやきかける。
「クク、もう濡れてんぜ」
「……っ!や、やぁ…恥ずかし…っああ!?」
いっそう強く自身を擦り上げられ、クロノアはびくびくと腰をふるわせた。
ひくひくと疼きだしたそこから、透明で粘りけのある液体がこぼれ、下着を濡
らす。
「が、ガンツ、そんな──ひ、ゃあんっ!」
疼くそこを弄ばれ、クロノアは無意識にガンツ自身に腰をすり寄せた。快楽
を求めて熱が身体を駆け巡る。幼く細い身体が快感に震えるさまはなんとも扇
情的にみえた。
「ガンツ、駄目っ……も、う…っ」
次々と与えられる快感の渦に耐えきれず、クロノアは熱を吐き出した。下着
の薄い布を白濁した液体がさらに濡らす。その下着も脱がされて、外気にさら
されたそこがまた疼いた。
「っ、ガンツ…お願い、も、う…ダメ…ぁあ!?」
達したばかりのそこにガンツ自身があてがわれた。重ねあったそこを一緒に
擦り上げられ、何とも言えない快感が襲う。二度目の絶頂を迎えて、クロノア
はくたりとベッドに身体を落とした。
「慣らさなくても平気そうだな…痛くても我慢しろよ」
狭い入り口に、ガンツは自身の腰を押しつける。勃ちあがったそれが入り口
に無理矢理入り込むとクロノアは痛みに泣きじゃくった。音がするほど乱暴に
腰を打ちつけると、クロノアの身体の奥に熱が昇り詰めていく。休むことのな
い律動が、快楽を絶えず送り込んだ。
「あ、ぁあ…やぁ!ガンツっ、も…もぉっ、からだ…壊れちゃ…ぁぁっ!?」
いっそう激しく奥に突き上げられ、クロノアは今にも溶けそうなくらいの熱
を解放した。同時に同じくらい熱いものが身体の中に流れ込んできて、びくり
と身体をふるわせた。
痴漢に引き裂かれて随分と乱れた衣装は、西洋人形が着るような服だ。まだ
その格好のままベッドに横たわるクロノアが、人形そのものに見えてガンツは
かぶりを振った。
ふと視線が交わる。にこりと微笑むクロノアの表情は、格好のせいなのか情
事の後のせいなのか、妙に雰囲気がある。
「殴ってゴメンね」
「あ? …ああ、あれか。別に気にすんな──俺だってめちゃくちゃやっちま
ったしな」
「……いいよ、ボク、幸せだもん。ガンツが助けてくれて嬉しかったんだよ?
それに……」
にこりと笑いながら其処まで言うと、クロノアは急に頬を赤らめてガンツか
ら目をそらした。
「いいや、なんでもない」
「……」
恥ずかしそうに、しかし嬉しそうな表情で呟くクロノアに、ガンツは気付か
れないように小さく笑った。
end
エロ部分ちょっと短くてスンマセン・・
↓オマケです。
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