〜水泳教室〜

ブリーガルに段々と暖かさが増してきた時期。
クロノアは悩んでいた。
何に悩んでいたかというと、泳げないということに悩んでいた。
走ったり飛んだりすることが大好きなクロノアでも、水の中では無力になってしまう。端的に言えばカナヅチなのだ。
この時期に泳げないということは、楽しみが半分以下になってしまうのと同じことだった。
みんなは楽しく泳いでいるのに、自分はただそれを眺めているだけ……昔からそうだった。

「はぁぁ…………」 溜め息をつく。
「お風呂は平気なんだけどなぁ。なんで泳げないんだろ? 水が苦手で…しかも泳ぎ方が分からない……正しい泳ぎ方……泳ぎ?」
パッと閃いた。
「ああ、そうか! 水が苦手なだけじゃなくて、泳ぎ方が分からないんだ!
 わっふー! それが分かったのなら大丈夫。泳ぎ方を教えてもらえば………………誰に?」
表情が再び曇ってしまう。

「誰に教わればいいんだろ? 
 ロロは…巫女の勉強で忙しいからダメ。
 ポプカは…ちゃんと教えてくれそうにないからダメ。
 チップルは…グローブ着けたまま泳げるの? 
 ガンツは…今どこにいるのかも分からないじゃん。
 パンゴ…正直言って泳いでるところがイメージ出来ない。
 そうだ!カラルは……イルカだからそもそも泳ぎ方が違うよ。
 う〜〜〜〜ん、泳ぎが上手くて教え方も上手そうな…………………………あ、いた!」

その二つの要素に該当する人物が浮かんだ瞬間、クロノアは家から飛び出した。

ここは街の警察署。オフィスのような場所でクロノアはイスに座り、相手をじっと見つめていた。
その相手は以前ドリームチャンプ・トーナメントで知り合ったスイリューだ。
スイリューはカップに注がれた暖かいコーヒーをクロノアに差し出した。

「で……………なぜワタシがキミに…その…泳ぎを教えることになったんだ?」
「えへへ♪ 急にスイリューさんが頭に浮かんできたから…やっぱダメかな?」
クロノアは差し出された苦めのコーヒーを少し口に含む。

泳ぎが上手いスイリューの事を思い出したクロノアは警察に駆け込んだのだった。
いきなりの事でスイリューは少々戸惑っている。

「血相を変えて飛び込んできたときは一体何事かと思ったよ。警察に駆け込んでワタシを発見するや否や
 『スイリューさん! ボクに泳ぎ方を教えてください!!』と叫んだときは呆気にとられたな。
 今までにそんな理由で警察に駆け込んだのはキミが初めてだったからな」
「はにゃ、あの、その………ゴメンナサイ」 クロノアは顔を赤くしてしまう。

「ハハハッ。いや、構わないよ。しかしどうしてワタシを尋ねたんだい?」
「あの…他の人に泳ぎを教えてもらおうとしたんだけど、みんな…都合が悪かったみたいで……多分だけど。
 そしたらスイリューさんのことが急に浮かんできたんだ。ほら、スイリューさんって泳ぎがすごく上手で、
 以前ドリームチャンプ・トーナメントの時だってスイスイと泳いでたし…教え方も上手そうで…」
 しどろもどろになりながらも続ける。スイリューは興味深そうに話に耳を傾ける。

「別にカナヅチだからって困る事はないかもしれないけど、でも泳げないってことは海や川で遊ぶ事が出来ないし…
 それに…潜水スーツを使えばボクにだって泳げるけど、やっぱり自分の力で泳いだ方が気持ちいいだろうし。
 だから泳げるようになりたいと思ったのはいいんだけど…泳ぐためには水を好きにならなきゃいけない。
 それにボクは泳ぎ方そのものもよく分かってない。だから…もし泳ぎ方が分かれば……泳げるようになるかもって……だから」
クロノアは手に持ってたコーヒーを一気に飲み干した。

「やっぱり…迷惑かな? お仕事も忙しそうだし……そうだね…別に泳げなくても」
「いや、ワタシは構わないよ」
「え?」 クロノアは顔を上げる。
「そうして自分自身で考えて、迷うことなく行動する。それも何事にも一生懸命に…。
 簡単なことかもしれないけれど、それはとても難しいものなんだ。特に自分の苦手なことはね…。
 キミはとても立派なんだよ、クロノア君。
 それにキミには恩がある。キミのおかげでドリームチャンプ・トーナメントの時、ガーレンの企みを阻止できた。
 だからキミが負い目を感じる必要は何も無いんだ」
「それじゃあ…」
「ああ、明日にでもジャグケトルの海へ泳ぎに行こう。そこで泳ぎを教えるよ」

クロノアの顔がパァッと明るくなる。
そしてイスから立ち上がるとスイリューの首に勢いよく抱きついた。
「わっふー♪ スイリューさん、ありがとう!」
いきなりのことにスイリューはビックリした。
「!!! ク、クロノア君!」
何故か顔が赤くなり、妙にドキドキしてしまう。
ドリームチャンプ・トーナメントを解決したことでクロノアはちょっとした有名人になったのだ。
そのおかげでどうしても他の警官や職員の注目が集まってしまう。
『あの子ってスイリューさんのお子さん?』
『バカ、そんなわけ無いだろ。』
『そういえば以前潜入捜査したときの…』
『ああ、あれがクロノア君か』
『抱きついてる……なにがあったんだ?』
『気になる………』

スイリューの顔がますます赤くなる。
「とぅらっぱ♪ とぅらっぱ♪」
「ク、クロノア君……放してくれないか…?」
「あ、ご、ゴメンナサイ。つい…嬉しくて」
腕を放してもう一度イスに座る。
「じゃあ明日の昼頃にジャグケトルの浜辺で。この時期はまだ人があんまりいないと思うから練習にはもってこいだよ」
「うん、わかった! じゃあまた明日! ありがとうスイリューさん!」

そうしてクロノアは家に帰っていった。
いつの間にか夕方になり、空が赤く染まる。


「これも……デートの……一種なのか?」
そう呟いたスイリューの顔も何故かほんの少しだけ赤く染まった。

次の日

準備していた持ち物を持ってクロノアは出発した。
「ジャグケトルだったら歩きでも十分間に合うよね。 ふぅ…それにしても今日は少しだけ暑いな。
 今日だけで泳げるようになるかどうかは分からないけれど、スイリューさんのように泳げるようになりたいな♪」

ふと前方をよく見てみると、赤いバイクが見えた。
「あれ? もしかして……ガンツ?」
やはりそうだった。愛機のレッドクラウンにまたがって、颯爽と走っているのはガンツだった。
「お? クロノアじゃねーか。久しぶりだな」
「元気にしてた? それにしても突然だね。連絡も無かったじゃん」
「そんな面倒くさいことわざわざしねえよ。それにしても……妙に嬉しそうだな。これからデートでもすんのか?」
ガンツは久々に再会した相手をからかうつもりでそう言った。
だが純粋なクロノアにはそんなイヤミな言葉は通用しなかった。

「…………そう…かもしれない」
「だよなぁ♪ そんな事あるわけ無い………………………ってマジかよ! 誰だ相手は? どこへ行くんだ? 何すんだ?」
「な、なに急に慌ててんのさ! 別にデートってワケじゃないよ。これからスイリューさんにジャグケトルで泳ぎを教えてもらうんだ」
「スイリュー……? ああ、あの警官か。へぇ、お前が泳ぎを教わるなんて…台風でも来るんじゃないか?」
ガンツはゲラゲラ笑う。クロノアはムッとして言い返した。
「なんだよ!笑うことないじゃんか! そういえばガンツってスイリューさんのことよく知ってるの?」
「ああ、お前オレの職業を忘れたのか? 賞金稼ぎってのは賞金首を警察に届けなきゃいけねーだろ?
 そん時によくスイリューには会うからな。ひょっとしたらお前より多く顔を合わせてるかもしれないぜ」
「へぇ…そうなんだ。ねえ、ガンツはこれからどうすんのさ? よかったらガンツも一緒にジャグケトルに来る?」
少し考えてガンツは答えた。

「いや、やめとくぜ。あそこは船が多くてどうもな…。そうだなぁ…久々にパンゴのおっさんのとこにでも行くとするかな?
 夏祭りの花火の完成具合とやらも気になるし……」
「パンゴのところに? ボクも行きたいなぁ…」
「バーカ。お前はスイリューとのデートがあんだろ。すっぽかす気か?」
「だだ、だからデートじゃないって! なんだよ、相変わらずイジワルなんだから」
「へへへ、お前の反応がおもしれぇからだよ。ま、せいぜい1メートルくらいは泳げるようになれよ。じゃあなクロノア」
ガンツは進路をブリーガルから変えて走り出した。ポツンとクロノアだけが取り残される。
「なんだよ1メートルって……。こうなりゃ100メートル…ううん、10000メートルくらい泳げるようになってやるさ!」
クロノアはジャグケトルに向かって走り出した。


スイリューは一足早くジャグケトルの浜辺にいた。
警察という仕事柄か、彼は待ち合わせなどの時間はしっかりと守るほうだった。

「しかしこのワタシがクロノア君に泳ぎを教えることになるとはな……。ちゃんと教えられるだろうか…。
 もし教え方が上手くいかずに彼を哀しませるようなことがあったら………どうすればいいのだ…。
 いや、せっかくクロノア君が前向きでいてくれてるのにワタシがそんな消極的でどうする!
 自分に出来ることを精一杯やるだけだ。それがワタシが彼に出来ることだろう…」

スイリューは日陰のところまで移動して、そこにある木にもたれかかった。
「それにしてもクロノア君は純粋というか純情というかお子様というか可愛らしいというか…なにか惹きつけられるものがあるな。
 誰からも好かれるような…性格…見た目…それとも…いや、言葉では表現しづらい何か…そんなものを持ってるのかもしれんな。
 まぁ確かに彼は純粋で元気で可愛くて………………………可愛くて……ってまたワタシは一体何を言ってるのだ!!
 久しぶりに再会できてワタシは嬉しいのかもしれん。だが…それとはまた違うような……ええい、余計な考えは捨てねば!
 今日はお互い泳ぎを楽しめればいいんだ。翼…じゃなくて羽を伸ばすとするか」
そして辺りをキョロキョロと見回す。
(遅いなクロノア君。ワタシが早く来すぎただけかもしれんが。まさか寝坊? 彼ならありえるかもしれん…心配だ)
下を向いて考えた瞬間いきなり目の前が真っ暗になった。

「だーれだ♪」
「・・・・・!」
「…だーれだ♪」
「・・・・・クロノア君か?」
そう答えると目の前が明るくなった。クロノアの両手がスイリューの視界を塞いでいたのだった。
「わっふー! 大正解♪ よく分かったね、さっすがスイリューさんだ!」
「いや、別にそれほどでも……」
その無邪気な行動と、誉められたことで少しだけだが微笑ましくなってしまう。
「ゴメンね。待たせてしまったかな…?」
「いや、それほど長い時間は待ってないよ」
「ホントに? 良かったぁ…それじゃあスイリューさん! 今日はよろしくおねがいします!!」
クロノアは頭を下げて大声で言った。
「ん〜、特別水泳教室というやつか。まぁ悪くはないな…。それじゃあまずは準備運動といくか」
そう言ってクロノアの方を見たスイリューはまたもや驚いてしまった。

なんとクロノアがいきなり服をどんどん脱ぎ始めたのだ。
「ちょっ、クロノア君! なにを!」
「へ? だって…服着たままじゃ泳げないよ……水着に着替えるんだけど…なに慌ててんのさ?」
そういえばそうだった。普段スイリューは服を着ることはあまりない。
せいぜい肩の鎧とネクタイ。たまに警察官の帽子を被るくらいだった。

(ワタシの体が少し大きいからサイズが合わないこともあるが…服を着ていると水の中で行動しづらくなってしまう。
 だからあまり身に付けないようにしてるのだが……と言ってもやはり目の前でいきなり脱がれたら慌ててしまうな。
 ん? ということは逆に言えば……他の人から見たらワタシは常にハ ダ カ という風に見えているのか?
 いやいやいやいやいや、そんなことは無い! 種族の違いもあれば文化の違いもある。多くの人が服を着るからといって
 服を着ないことを変に見るのは間違いであって………ワタシはさっきから何を考えているんだ?)

「ねぇ、スイリューさんどうしたの? もう着替え終わったよ。」
既にクロノアは海パンに着替え終わっていた。
「い、いや何も無いよ。ハハハハ……」
スイリューは平静を装いながらも、準備運動を始めた。
「準備運動をしっかりしとかないと事故の元となってしまうからな」
「え〜メンドクサイよぉ。早く泳ごうよスイリューさん」
「何を言うんだクロノア君! もし泳いでる途中で怪我をしてしまったら大変じゃないか」
「でも…ボク早く泳げるようになりたいんだ。1分1秒だって惜しいよ。ねぇおねが〜い♪」
猫撫で声を出しながらクロノアはスイリューに甘えてきた。
「!! わかった、わかったから放してくれ! 今回は特別に準備運動は無しにするから!」
「わっふー♪ さっすがスイリューさん! とぅらっぱ、とぅらっぱ♪」
嬉しそうにはしゃぐクロノアを見て、やれやれと言った感じで見つめる。
(まったく…こういうところが子供らしいな。それにしても最近のワタシはなにか変だな…妙にドキドキしてしまう)

準備運動を疎かにしたまま、2人は波打ち際まで移動する。
ときどき押し寄せるひんやりとした波が足首を濡らす。
「やっぱり…少しだけ怖いな。今日は暖かいから風邪ひきそうにないから良かったけど…」
「じゃあまずは水に慣れる事から始めようか。ワタシが手を握ってるから少しずつ前進しよう」
「は、ハイ」
手をつないでゆっくりゆっくりと前へ進んでいく。
水は足首、スネ、ヒザ、太ももへとだんだん上がっていく。
もうそれだけでクロノアは冷や汗をかいてしまい、ブルブル震えてしまう。
「大丈夫かい?」
「うう〜〜大丈夫じゃないです」
「それじゃあ一旦戻るかい?」
「手をつなぐだけじゃあ不安です。それに足が震えて動けません」
「そ、それは困ったな。じゃあ一体どうすれば……」
「……………抱っこしてください」
「だ、抱っこ!? それは…ちょっと…なんというか…」
「だってぇ……それじゃあずっとこのままだよぉ」
クロノアはほんの少し涙ぐんでしまう。
「わかった! わかったから……よいしょっ」
スイリューは両手でクロノアを抱きかかえた。

クロノアの体は水の中ではいつもより余計に軽く感じた。
クロノアはスイリューの背中と首に手を回し体を密着させて、しっかりとしがみ付く。
体が密着したことにより、スイリューの胸はさらに鼓動を増した。
しがみ付くと言うより、2人で水の中で抱き合う形になっていた。
冷たい水の中で相手の熱を感じる。呼吸をするたびに息がお互いにかかる。
「ク、クロノア君…その……大丈夫かい?」
「ふぅ、少し落ちついたよスイリューさん。もう少しこのままにして」
「あ、ああ」

クロノアの華奢な肉体が、スイリューの鍛えられた太くて大きい肉体に抱きつく様は、どこか官能的な雰囲気を醸しだしていた。
「なんか…スイリューさんに抱っこされてると……安心する」
「そ……そうか?」
「うん……大きくて暖かくて…頼りになるような…」
「そそ、それはとても良いことだ…な。別に減るもんじゃ無いから抱っこして欲しいときはいつでもでもれも…」
舌がもつれて変な言葉になる。
(わ、わ、ワタシは何を言って…!)
「うん…抱っこして欲しい時はいつでも言う。………でもたまには『おんぶ』もして欲しいかも♪」
「そ、そ、そ、そうだな。ハハッ…」
スイリューの頭の中がいけない気持ちでいっぱいになる。
それと同時に体がどんどん熱くなっていく。特に下半身の部分が……。じわっと粘液がほんの少し滲み出たのだ。
普段落ちついているスイリューがそういうふうに興奮することは滅多に無かった。
しかし滅多にない分、一度興奮してしまうとその興奮は人一倍…いや三倍くらい強かった。

(こ、このままキスしてしまえば…! いや、何を言う。キスだなんて。キスだなんて…。
 仮にも警官である私が…!そんなことを………待てよ? 確かに仕事の時は警官だが、非番の時のワタシは騎士。
 つまり警官じゃなくて……いや、だからそういうことでもあり………
 ワタシがクロノア君にこんなに興奮すると言うことは…好きだという事か? いやいやまさか)
「スイリューさん? どうしたの? 大丈夫?」
「だ、大丈夫だ! 大丈夫…それじゃあ泳ぎを始めようか…手は離さないから…」
これ以上抱き合ったままでいると何をしてしまうか自分にも分からなかった。
「え〜残念だなぁ。まぁ結構水に慣れてきたし………じゃあまた後で抱っこしてね♪」
「あ、ああ……」
スイリューは股間を手で押さえて、必死に我慢した。

「じゃあまずはバタ足からいこうか」
スイリューはクロノアの腕をしっかりと握る。
「水に顔をつけて、足でバタバタと水を掻いて」
言われたようにバチャバチャとやる。少しずつ前進していく。
「ようし、その調子だよクロノア君」
「えへへ、ボク頑張るよ♪」

泳ぎ方を少しずつ教えていくと、クロノアは段々と泳げるようになっていった。
でもせいぜい5〜10メートルくらいが限界だった。
「わふぅ、けっこう泳げるようになってきたかな?」
「そうだな。そろそろ休憩しようか」
クロノアとスイリューは砂浜まで上がった。

「お腹がすいてきたからお弁当にしようよ」
「弁当? そういや昼のことを考えてなかったな…」
「へ? じゃあお弁当を忘れちゃったの?」
「いや、別に1食抜いたからって別になんとも…」
そう言ったスイリューのお腹がグゥゥと鳴った。 恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。
「あ、あの…『半分こ』しようよ」
「あ、ありがとう。すまないなクロノア君」
「んっと…それじゃ…ハイ、あ〜〜ん♪」
お箸で食べ物をつまみ、スイリューの口の近くまで運ぶ。いきなりのことに戸惑う。
「はにゃ? どうしたの? 食べないの?」
「い、いただきます」
パクッと口の中に入れてよく噛む。
「モグモグ…………美味しい」
「え、ホントに? わっふー! あ、これも美味しいよ♪」
左手でおにぎりを食べながら、右手のお箸でもう一度スイリューの口の近くに運び、食べさせる。
「このおにぎりも結構自信があるんだよ。ハイ」
そう言いながら次は食べかけのおにぎりを渡し、スイリューの手からお箸を取って、弁当のおかずを食べ始めた。
「どれどれ……ほぉ、これも旨いな……………………………ん?」

一瞬スイリューの動きが止まる。クロノアはそれに気付かずに美味しそうにお弁当を食べている。
(クロノア君が食べていたおにぎりの半分をワタシが食べた…………。
 ワタシが使ったお箸をクロノア君が使って食べている………………。
 つまりこれは………………間接キスというやつでは…!!! しかも互いに交換………)
それに気付いたときはまたもや目の前が真っ白になってしまった。
「はにゃ? スイリューさん…? お〜〜い……燃え尽きてる?」
真っ白になってるスイリューを放っておいてクロノアは弁当を全て食べた。
「ちょっと…散歩してくるよ…クロノア君」
そう言いながらスイリューは立ち上がり、ふらふらと歩き出した。

クロノアが止める暇も無く、スイリューはどこかへ去っていってしまった。
「ちょっと! スイリューさんがいなかったらボク泳げないじゃん!」
砂の上に寝転びながら文句を言った。
「それにしてもスイリューさん……。なんか様子が変だったけど……大丈夫かな?
 普段は落ち着いていて冷静なイメージがあるんだけど……どこか焦ったり、驚いたり…もしかして…………ボクのせい?」
ガバッと上半身を起こす。
「ボクが知らないうちにスイリューさんに迷惑をかけてるとか…。そうだ……本当は泳ぎを教えるのが嫌だったのかもしれない。
 ボクの我が儘を無理に聞いて……困ってる…。それで嫌になって……帰っちゃったのかも。ボクのことが嫌いに…。
 そんなの嫌だ…。 スイリューさんに嫌われちゃうのは………………イヤだ」
クロノアは波打ち際まで歩いた。

「それなら……1人で泳げるようにならなくちゃ! ボクのために無理してくれたスイリューさんにこれ以上迷惑をかけないように……」
クロノアは海の中に飛び込んで沖に向かって泳ぎだした。どんどん前に進んでいく。
足が付かないくらいの深さまで泳いだとき、異変は起こった。
「!!」
急に両足に痛みが走った。腕を必死に動かしてもがくけれども、クロノアは少しずつ水の中に吸い込まれていった……。

散歩中のスイリューは色々と考えていた。
なぜクロノアの近くにいると嬉しくなるのか…
なぜクロノアと触れ合うとあんなにドキドキするのか…
なぜ頭の中がクロノアで埋め尽くされるのか…
なぜクロノアに性的興奮を抱いてしまったのか…
どの疑問も簡単には解決できそうになかった。

「体が……まだ熱いな。一体どうしてしまったのだ? 間接…キスをしただけであんなに戸惑ってしまうなんて…。
 もし、もう一度クロノア君を抱き上げてしまったら…間違いなくワタシは………ワタシは彼に……………。
 いかんいかん、落ちつけ! 平常心を保つんだ! きっと何か勘違いをしているんだ。
 クロノア君は確かに可愛い。誰が見ても…いろんな意味で可愛い。その可愛さが……相手の…ワタシの感性をくすぐっているんだ。
 その純粋で無邪気な可愛さを…………ワタシは別の捉え方をしているにすぎないんだ。つまりは勘違いをしているんだ。」
スイリューは立ち止まってもう一度自分で自分に確認した。

「そうとも! ワタシは妙な勘違いをしているのだ! ワタシはクロノア君が好きだ!
 しかしそれは恋愛感情の好きではなく……なんというか…きっと友人のような家族のような好きなのだ!
 だから……あのドキドキは……ただの勘違いに違いない。可愛いクロノア君を優しく抱きしめたとき……の……」
周りに誰かいないか確かめる。誰もいないようだ。
「ワタシは大声で何を言ってるんだ? 大声で…好きとかドキドキとか恥ずかしい言葉を…大声で……」
スイリューはぶんぶんと首を振る。
「なんだか今日のワタシはどこかおかしい。きっと疲れているのだ。そういえばクロノア君を置いてきたままだったな。早く戻らねば……」

砂浜まで戻ってきたスイリューは異変に気付いた。
(クロノア君…? 何処へ行ったんだ…?)
周りを見渡すが姿は見えない。もしかして波打ち際で泳いでるのかもしれない。
そう思って海を見て、そして気付いた。クロノアは必死にもがいていたのを…。
その姿を見るや否やスイリューは風のような速さで走り、海に飛び込んだ。
(なんてことだ…ワタシはなんという失敗を……なぜこうなることを予想できなかったのだ? クロノア君……!)

クロノアの全身が海に沈んだ。
それと同時にスイリューも水中に潜った。
(どこだ? 一体何処に……)
ジャグケトルの水はとても綺麗だ。そのおかげですぐにクロノアの姿が確認できた。
(いた!)
目は閉じていてグッタリとしている。気絶してしまったのかもしれない……。
急いでクロノアを抱えあげて、水上へ顔を出す。
「クロノア君! 大丈夫か!?」
「ん………ん…」
(よかった。怪我は無いみたいだ)
砂浜まで引き上げて、日陰の草むらのところまで運び、そっと寝かせる。
「準備運動を怠ったから足が攣ってしまったのか……とことんワタシはバカだな。水泳教室など無理だった…ということか。」
クロノアの頭をそっと撫でる。スースーと寝息が聞こえてくる。
「気絶…というよりは眠ってる…みたいだな。可愛い………寝顔だ」
優しくクロノアの頭を撫で続け、じぃっと顔を見る。
スイリューは自分でも気付かないうちにいつの間にか顔を近づけていた。
そしてクロノアの口と自分の口とをそっと重ね合わせた。

「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ガバッと顔を上げ、勢いよくクロノアから数歩分ほど離れる。
(わ、わ、ワタシは今…何を…? クロノア君に……キスを…キスをした…のか?)
スイリューのドキドキが一層高まる。血が上り、体が熱くなる。
鼓動が不規則になり、ぬるっとした液が足のあいだから滲み出る。
「こっ、こんな時に…!」
理性が少しずつ薄れていく。息が荒くなり、目の前がぼーっとしてきた。
股間を押さえて我慢するが、蜜はポタポタと溢れてくる。
「もう限界か………ガマン…出来ないのなら……いっそ…」

スイリューは体外へ出てきた自分のモノをマッサージするように揉みほぐしていく。
強烈な快感に悶えながらも、どんどんしごく。
クロノアの全身を見ながらしごく。
クロノアの半裸姿を見ながらしごく。
クロノアの可愛い寝顔を見ながらしごく。
クロノアをオカズにしてしごく。
蜜の量が一気に増えて、どんどん熱を持っていく。
「ずいぶん久しぶりだ……はぁ…こんな…感覚は………まさか…はぁ…クロノア君を……はぁ…オカズに…するなんて…
 まったく……予想…し…………なかった………はっ……はぁ……クロノア…君………やはりワタシは…可愛いキミが…キミのことが…」
そう言い終わる前に、スイリューの性器から生暖かい液体がドバッと溢れ出た。
自分の体と同じように大きな性器は、痙攣しながら周りに液を大量に撒き散らした。
「うっ……! ぐ…は…ぁ……あっ………!」
スイリューの体液が、辺り一面の草と自分の両手をベトベトにする。クロノアにも少しだけかかってしまったようだ。
だが精液を大量に放出したにもかかわらず、スイリューのモノは殆ど衰えてなかった。もちろん性的興奮も衰えることはなかった。
「まずいな……。全然…はぁ……落ちつかない……それどころか…はぁ……余計に興奮してきた気がするぞ…」
視界にクロノアが入る。黒い体に白い液がかかって、微妙な色合いを持っている。
スイリューは少しずつクロノアに近づいていく。顔を覗き込もうとした瞬間にクロノアは目を開けた。

眠そうに瞼を擦り、眩しそうに首を動かす。
「!! く、クロノア君……ぶ、無事か? 怪我は………無いか?」
危なかった。もう少しクロノアが目覚めが遅かったら、言い訳できない場面になっていただろう。
「ん……なんかベトベト。はにゃ? ボク……確か…海に入って………それから……!! 大変だ! ボク溺れてる!!!」
「クロノア君、ここはもう陸だよ」
「あ、本当だ…」
クロノアは周りをキョロキョロと見渡す。そしてスイリューの顔が視界に入った途端に、クロノアの表情が変わった。
「スイリューさん! ご、ごめんなさい。ボク……散々スイリューさんに迷惑かけちゃって……本当に。
 ボク……スイリューさんが嫌がって…困ってるみたいだったから……一人で泳げるようになろうとしたんだ。
 でも……あの時に準備運動をきちんとしなかったから……足が痛くなっちゃった。 もう少しで………ボク」
涙を流しながら、目の前にいるスイリューに抱きついた。

「!!!」
「怖かった…すごく……怖かった…」
スイリューの体が熱くなる。鼓動が伝わってしまうくらいに高鳴る。
「こ、今度からはちゃんと準備運動を……しないとな」
「うん、分かってる。でも……それだけじゃないの……スイリューさん」
「な………なんだい?」
「怖かったのは溺れた事だけじゃないんだ。今日……スイリューさんの様子がおかしかったよね?
 あれってきっと…ボクのせいだと思うんだ。ボクがスイリューさんに迷惑をかけてしまったから…落ち着いてなかったんだよね?
 だから……きっと……これじゃあ……スイリューさんに……嫌われると思って………嫌われるのが…怖かった。
 無理させちゃいけないから……自分の力で泳ごうとして……それで………もう」
クロノアは哀しさと寂しさのせいでガタガタと体を震わせる。スイリューの胸に顔をギュっと押し付ける。
(ワタシは…………何も分かっていなかったということか。いつまでもハッキリしないからクロノア君をこんな風にさせてしまった)

「クロノア君、顔を…あげてくれないか? 言いたいことが……ある」
「ん…なに?」
クロノアはスイリューの顔を見ようとして自分の顔を上げる。
スイリューはクロノアを抱きしめてキスをした。今度は深いキス。唾液が流れるくらいのキス。
「ん…ふぁ……じゅるっ……す、スイリューさん!?」
「ワタシは…ワタシは……好き…みたいだ。クロノア君のことを……愛しているようだ……。
 だから………嫌いになるわけがない。むしろクロノア君がワタシのことを嫌いになってしまうのではないかと…そう思ったら」
「そんなことない!!!」
大声で叫んだ。
「そんなこと……スイリューさんを嫌いになるなんて……そんなこと絶対にないよ。ボクは……好きだよ。スイリューさんのことが好き。
 でも……今キスされたとき……『好きだ』って言われたとき……なんか変な気分だった。変な気分だけど……すごく嬉しい」
「クロノア君………」

「ところで…スイリューさん。なんか……ベトベトしてるんだけど……これってなんなの?」
「えっ!!? こ、これは……その」
「教えて欲しいな?」
「こ、これはだな……。オスにだけ出せる…体液なんだ」
「え! おしっこみたいなもの…?」
「似ているようで違う。なんていうか、その………大事な部分を刺激したら、すごく気持ちよくなるんだよ」
「どういうふうに気持ちよくなるの? 『嬉しい』ってのとは少し違うの?」
「心と体がとっても気持ちよくなるんだ。理性が吹き飛び、本能に支配されてしまう。
 一度支配されたらそれを抑えるのは凄く難しいんだ。もし抑えきれなかった場合は……こんなふうに………出てしまうんだ」
「ボクにも………出せるの?」

「え、あ、ああ、多分…クロノア君にも出せるだろうな」
「ホントに?」
「ああ、おそらくは」
「気持ちいいの?」
「…………すごく」
「どれくらい?」
「自分が壊れてしまったんじゃないかというくらいだ。興奮するものを見たり感じたりしていると……さらに気持ちよくなる。
 そういう興奮できる対象を……………『オカズ』……というんだ」
「ゴハンを食べるときの……『おかず』とは違うの?」
「意味は違うな。まぁどちらも好きなものなほど良いワケだがな」
「ふ〜ん………つまりスイリューさんはボクを…その………『オカズ』にしたんだ?」
「あ、ああ。つい……抑えきれずに、な」
「ふぅん。じゃあボクも……スイリューさんを『オカズ』にしたいんだけど。」
「ワタシを?! い、いいのか? しかし…」
クロノアはスイリューに擦り寄った。
スイリューの胸とお腹を優しく撫でる。
「でも、ボク……どうすればいいのか分からないから。スイリューさんがボクのコレを……触って欲しいんだ。」
「わ…分かった。わ、ワタシが触ればいいんだな」
クロノアの海パンをそっと脱がせていく。クロノアの股間にあるモノは半勃ちになっていた。

そっと右手を近づけていき、優しく揉みほぐしていく。揉めば揉むほど段々と熱を帯びていき、大きくなる。
「あ…ふにゃ……きもちいい………スイリューさん……」
「気持ちいいかい? その調子だ。もっと……ワタシを見るんだ。ワタシを感じてくれ」
クロノアを左手で抱きしめて、キスをする。再びスイリューの性器が反応する。
「スイリューさんって……カッコよくて……優しくて……大きくて……逞しくて……ガッシリしてて……太くて……
 かわいくて……落ち着いていて……冷静で……エッチで………なんだか……ボク……今……スイリューさんしか見えない」
クロノアは体を擦りつけ、スイリューの太いお腹にしがみついた。
(クロノア君が……ワタシをオカズに…している。クロノア君が……ワタシを感じている………くろ…のあ……クン)
クロノアを抱きかかえたままスイリューは仰向けになった。
「…………はぁ…はぁ………スイリューさん?」
「クロノア君………ハァ……ハァ…ん……この姿勢でも……ぅ…大丈夫か?」
「うん………」
熱と体積を増した自分のモノをクロノアの下半身に擦りつける。
クロノアはガタガタと震えている。今度は全身の快感で震える。
お互いの蜜がどんどん溢れて草を濡らす。唾液も流れ落ちてくる。

「待って……スイリューさん。なんか……出そう……はぁ…なにか……ふぅ……出そう……ボク…………」
「力を抜いて……。もっと……ワタシを……楽しませてくれ」
「うん……でも…だめぇ……もう……出そう………スイリューさん……あっ」
両腕に力を込めて強くしがみつくと同時にクロノアは射精した。
「ひゃっ!!」
飛び出た液体がスイリューの腹部にかかる。顔にも少しかかってしまった。
痙攣するたびに勢いが弱まっていき、クロノアは残念そうにその様を眺める。
「気持ちよかったけど……これで終わりなの? なんか、物足りない」
「なら回数を増やせばいいのではないか?」
クロノアの体液を舐め取りながらスイリューは目を細める。
ほとんど頭で考えずに、本能と感覚だけで体を動かす。
性感帯を軽く刺激すると、クロノアは再び気持ちよさそうに身をよじらせる。

「ん………スイリューさん」
「なんだい?」
「ボク……男の子だから赤ちゃんできないよね?」
「・・・・・・・・」
「だいじょうぶ…なのかな?」
「ぷっ、アハハハハハ!」
「わ、笑わないでよぉ!」
「いや、ごめんごめん。あまりにも…ははっ……おかしいというか、なんというか」
「もう!………でも……じゃあ…あの、挿れることも……できないんだよね?」
「!!」
「残念だな……」
(こ、この子は、どこまで………どれくらいの知識を持ってるんだ?
 自慰を知らないと思いきや、挿入について聞いてくる……。本当は何も知らないフリをしてるんじゃ……まさかな)

「男同士でも……一応できるよ」
「はにゃ?」
スイリューはクロノアを両手で持ち上げて、お尻の部分を長めの舌で舐めまわす。
普段感じることの無い特殊な快感がクロノアを襲う。
「まにゃあ……そ、そんなトコ……舐めたら……きたないよぉ」
「ほぉ。ということはちゃんと洗ってないのか?」
「ふぁ……洗ってるよ! でも……そんなとこ、攻められたら………」
「ここだけじゃなく、体中を綺麗にしたいトコだが……………そろそろかな?」
さっきのようにクロノアを自分のお腹の上に乗せて、仰向けになる。

スイリューは体が柔らかいため、抱きかかえたまま自分の股間をクロノアのお尻にまで持ってくるのは容易なことだった。
もう少しで好きな相手の中に入ることが出来ると考えただけで、一層スイリューのモノは膨らんだ。
「スイリューさん? どうするの?」
「男同士の場合は………ここに…入れるんだ…………キツイかもしれんが」
破裂しそうなほどに膨らんだモノをグイグイと押し付ける。
クロノアはスイリューの顔を見つめた。
「少し……怖いけど……入れていいよ」
「あ、ああ」
クロノアの下の穴にあてがって、一気に奥へねじ込もうと……………………………したが無理だった。
「は、入らない……?」
スイリューのサイズがあまりにも大きくて、小柄なクロノアの体には入らなかったのだ。
突然のハプニングに焦った。
(そ、外で出すしかないのか? 嗚呼……せっかくクロノア君が受け入れてくれたのに………)

「スイリューさんのコレ………入らないの?」
「・・・・・・・・・・」
「大きすぎるからボクのお尻には入らないの?」
「………………みたいだな」
「じゃあ、舐めてあげる」
「クロノア君……!」
「スイリューさんの………すっごく大きくて美味しそう。きっと口の中になら入るよ♪」
そう言うと、スイリューの股間に顔を近づけて、恐る恐る舌でペロッと舐める。
一瞬そこの部分が生き物のように反応した。クロノアはもう一度舐める。
「ぬるってしてる……変な味」

先っぽを口に含み、一度離す。手で掴んで握ると、じわっと液が染み出してくる。
両手で揉みながら、熱くて太い棒を口の中に入れていく。
残念ながら全て口の中に納まることは出来なかったが、半分近くは呑みこむことが出来た。
「あ………う……上手だな、クロノア君」
クロノアは返事をせずに舐め続ける。
乳搾りをするように右手で棒を揉んでしごく。左手はスイリューの太ももや腹部を撫で回している。
予想以上のクロノアのテクニックにスイリューはすぐに絶頂を迎えた。
必死に頑張って奉仕する姿は、見ているだけで昇天しそうだ。

「ふ…………にゃ………もご………じゅるっ………………ぴちゃっ」
「く、クロノア君、そろそろ出そうだ。このままじゃあ、口の中に…」
クロノアは口から離そうとしない。このまま放出させるつもりらしい。
「いいのか? うぁ………もう……ガマン…できん…………ぐ……っっ!!」
「んん………!」
ブルッと体を震わせて、クロノアの口の中でありったけの液を放出した。
クロノアはなんとか全て飲み込もうと試みるが、半分くらいが口から溢れ出る。
スイリューは、まるで長風呂でのぼせたような表情で、クロノアの頭を両手で掴みグイグイと押し込む。
二人とも体がガクガク震え、そしてグッタリとなった。

「けほっ…………う〜ん、半分ちょっとしか飲めなかった。でもすごく美味しかった♪」
「そうか……なによりだ。今度はワタシがやろう」
クロノアを仰向けに寝かせて、股間を舐めまわす。
「うにゃ……スイリューさん。でもボクさっき出しちゃったよ………もう出ないんじゃ?」
「そんなことは無いぞ。なんとか頑張れば何回も出すことができるんだよ。現に……ワタシは今日で2回も出したんだ。
 短時間で……あれほどの量を出したのに………気のせいか、またココが疼いているような気がするんだ」
「え〜っ! スイリューさん、あんなに出したのにまだ出るの?」
「ああ………とてつもなく……体が…ムラムラとしているようだ」
「そう……はぁ…なんだ…………ん…なんか気持ち……よくなってきた………えへへ、きもちいい…」
クロノアのモノが少しずつだが反応し始める。
さっきほどではないが、大きくなり、熱を持ちはじめた。
「わふぅ………あ、なんか…早い……あっ!」
そうして舐め続けるうちに、クロノアは再び液をスイリューの口の中に撒き散らした。
それを満足そうにゴクゴクと飲み込むスイリュ−。
そして優しく微笑みながら、全身で包み込むようにクロノアを抱きしめる。

(この少年は………かわいすぎる。ワタシは警察官という身なのだが……。
 こんな子が傍にいたら………襲いかかってしまうに決まっている! 
 今のワタシは騎士なんだと自分に言い聞かせてしまえば……警官であろうと騎士であろうと………
 クロノア君を好きになってしまったから………もうどうしようもない……止まらないんだ)

「クロノア君。クロノア君は警官のワタシと騎士のワタシ……どっちが好きなんだい?」
恐る恐る尋ねる。もし…その答えが自分を拒絶するようなものだったら………怖かった。
「はにゃ? えっと……そういえばドリームチャンプ・トーナメントの時は『騎士』だって言ってたんだよね。
 別に……どっちでもいいよ。だって……どっちでもスイリューさん………ボクの好きなスイリューさんだもん♪」
「!!!」
その言葉を聞いた瞬間スイリューはクロノアの唇を強引に奪った。
溶けそうなほど熱いキスをした。グリグリと体を擦り付けるような抱擁、愛撫。
「スイリューさんが騎士ならボクは……王子様だね♪」
「ああ……ワタシは一生奉仕しつづけるだろうな」」
「スイリューさんが警官ならボクは……心を奪う泥棒かな♪」
「ああ……ワタシは一生追い続けるよ」

いつのまにかスイリューは体液を放出していた。
だが、放出したところで高まった熱は冷めない。またもやあの部分は反応する。
(いくらでも……いける…な)
クロノアとスイリューはひたすら愛し合った。精神的にも肉体的にもひたすら愛し合った。

空が赤くなってきた。
どうやらもう夕方が近いらしい。
クロノアはスイリューの腕の中で、ぼ〜っとしながら余韻に浸っているようだ。
スイリューは互いの体に付いている粘液を舐めながら、クロノアを抱きかかえ、頭をそっと撫でる。
あれからクロノアとスイリューは『泳ぐ』という本来の目的と時間を忘れるほど、愛し合っていた。
クロノアは6回、スイリューはなんと14回も果てたのだった。
2人とも疲れ果てていた。特にクロノアは昼間にたくさん泳いだこともあって、かなり体力を消耗していた。
「もう…夕方だな」
「はにゃあ………」
「立てるか? クロノア君」
「う〜ん……今日はここに泊まるぅ……」
「それはダメだな。ほら、体を洗わないと」
スイリューは軽々とクロノアを持ち上げて、波打ち際まで運んだ。
そしてジャグケトルの海水で体を洗い流していく。体中に付いた体液はあっというまに洗い流された。
スイリューの股間のモノは元通りに体の中に戻っていた。
「スイリューさん………あんなに……出したのに……なんで……元気そうなの?」
「ん………そうでもないさ、かなり疲れているよ。最近はこんなに体を動かす機会は無かったからね」
体を洗い流すと、クロノアの持ってきたタオルで体を拭く。そして服を器用に着せていく。
「スイリューさん、お願いがあるんだ」
「なんだい?」
「あの………………帰るときは…その………『おんぶ』……してほしいんだけど」
「・・・・・・・・」
スイリューは嬉しそうに笑った。

クロノアをおんぶしたまま、ブリーガルの近くまでやってきた。
まるで暖かい風が体を癒していくような気分になった。
「警察官として、未成年はきちんと家まで送り届けないとな」
「あの……ホントにゴメンなさい。ここまでしてもらって………」
「なぁに、構わないさ。えっと……この道は?」
「あ、ハイ。んっと……右の方に進んだら近いよ」
「分かった」
スイリューの背中の上でゆらゆらと揺れながら、クロノアは心地よさを感じていた。
(今日はあんまり泳ぎが出来なかったけど……10メートルほどは……泳げるようになっちゃった。
 ガンツ、これを聞いたら……案外驚いたりして…………………あれ? あれって………ガンツ?)

前方の少し離れたところに、レッドクラウンに乗ってるガンツがいた。
こっちに向かって走ってくる。どうやら向こうも気付いたようだった。
「おっ! クロノアじゃねーか、また会うなんて奇遇だな………ってぇ…なんだぁ、その格好は?」
「え、あっ…………ちょっと疲れた……じゃなくて、足が……痛くなって……えっと」
「クロノア君は泳ぎ疲れて足が痛いから……こうしてワタシがおぶってるんだよ、ガンツ君」
スイリューがさりげなくフォローを入れる。

「なんだよ情けねぇな。それにしてもスイリュー、久しぶりだな。ちゃんと仕事してんのか?」
「失礼だな。毎日忙しいくらいだよ。今は特別休暇なんだ」
「まっ、別になんでもいいさ。ケーサツがヘマをするほど、賞金首の価値が上がってオレが儲かるからな」
「ふっ、最近の警察は優秀だからそう失敗ばかりしないさ。まぁ賞金首が出たときはまた頼むよ」
「おいおい、ケーサツが賞金稼ぎを頼ってどうすんだよ。まあ、そん時は賞金は高くしてくれよ」
楽しそうに話す2人を見て、クロノアは、ちょっぴりジェラシーを感じた。
スイリューに感じたのか…それともガンツに………それは本人にも分からなかった。

「ところで、クロノア。オメェ………どれくらい泳げるようになったんだ?」
「え〜〜……んっと……10メートルくらい」
「重度のカナヅチにしちゃあ、まぁまぁじゃねえか。目標の1メートルの10倍だもんな」
どこか遠回しなイヤミに聞こえたけれど、クロノアにとっては嬉しい誉め言葉だった。
「そうかな? ところで………パンゴは元気にしてたの?」
気のせいかガンツの表情が少しだけ変わった気がした。
「えっ! あ〜〜〜…ああ、元気だったぜ。ありゃ〜驚くくらいの元気っぷりだったな。まったく…信じられねえよ………」
「?」
一体何を言ってるんだろうか? 
じーーっとガンツの顔を見る。気のせいか何だか疲れてるような………どうしたんだろ?
「なにか…あったの?」
「!!!……………………………鋭いな」 ボソッと呟く。
「はにゃ?」
「な、なんでもねえよ! それじゃあオレはそろそろ行くぜ。今度は夏祭りの時にでもまた来るからな」
「わっふー! わかったよ♪」
エンジンをふかして、走り出す直前…
「デートは楽しかったか?」とガンツは大声で言った。
「!!」
「!!」 クロノアとスイリューは体を強張らせてしまった。
ガンツは可笑しそうに笑う。
「な〜んてな♪ じゃあまたな、お二人さん。遠くから見てるとまるで親子みたいだぜ。 じゃあな!」
ガンツは、あっという間に去っていった。妙に意味深なようでそうでもないような言葉を残して……。
「気付いたのかな?」
「………………わからん」
確かめようにも、レッドクラウンが小さく見えるほどガンツは遠くまで走り去ってしまった。

スイリューはなんとかクロノアの家まで辿りつくことが出来た。
ゆっくりとクロノアを降ろし、荷物を手渡す。
「歩けるかい?」
「うん………大丈夫。何から何まで本当にありがとう、スイリューさん。こんな遅くまで………」
「いや、別に気にしなくていいよ。今日はとても楽しかった。それじゃあワタシは………」
スイリューは立ち去ろうとする。
街の方の自宅………にでも帰るのだろうか?

「あっ、あの! スイリューさん!」
「ん……なんだい?」
スイリューを呼び止める。
「あの………あの時……ボクの中に入れようとして失敗しちゃったよね? ボクが小さかったから。
 もし………ボクが大きくなったら……今度は……入る、かも…しんないから……えっと」
スイリューは可笑しそうに笑う。
「ああ、わかった」
スイリューはクロノアに背を向けて立ち去ろうとする。

「あ、あの! す、スイリューさん!」
「ん……どうしたんだい?」
もう一度スイリューを呼び止める。
「また今度、泳ぎの練習に……付き合ってほしいんだ。それと……どこかへ遊びに行くときとかも……」
「ああ、いつでもいいよ」
「あの……お休みって今日だけなの?」
「いや、3日間くらい休みをとってるよ。まぁ自宅でゆっくりと休むだろうがね。それじゃあまた……」
スイリューは再び立ち去ろうとする。
クロノアは寂しそうにじっと見送ろうとする。なぜか胸が痛くなってくるような気がした。

「す、スイリューさん!!!」
スイリューは、ゆっくりと振り返り、クロノアをじっと見つめた。
「ん………………言ってごらん?」
スイリューは何かを察したようだ。クロノアは深呼吸して落ち着こうとする。
どんな言葉が出てくるのか、なんとなくスイリューには予想はつく。
だがスイリューは黙ってクロノアの言葉を待つ。時間がとても長く感じた。
そしてついにクロノアは言った。


「今夜……ボクの家に………その……泊まってほしいんだ」

スイリューの休暇は始まったばかりなのかもしれない。



〜水泳教室〜 END