〜性教育〜


闇が光に徐々に飲み込まれていく明け方。
冷たい空気が段々と暖かくなってきた。
あと数週間ほど経てば、暑いと言ってもいい時期になるだろう。
愛車のレッドクラウンを傍に休ませて、ガンツは木陰でスヤスヤと眠っていた。

賞金首を数人ほど、まとめて生け捕りにし、報酬を得たガンツは当てもなくあちこちを旅していた。
しばらくは資金面について困ることは無いだろう。
どこかでしばらく休息をとろうとガンツは考えていたのだった。
仲間と呼べる相手・・・。久しぶりに会おうと思いついたのは一体どうしてなのだろうか?
そう考えているうちに、辺りは暗くなり森の近くの木陰で眠りについていたのだった。

ガンツには悩みがあった。
その悩みは誰でも直面する可能性がある悩みであるが、ガンツ本人にとっては耐え難いほどの悩みだった。
誰にでも起こる生理現象。雄だけに起こる可能性がある生理現象。
ガンツはそれに直面していた。

「ん・・・・・ん? ・・・・・・んぁ!」
ビクッと体が軽く痙攣する。
その瞬間、ガンツの目は開かれ、勢いよく体を起こし、飛び起きた。
「・・・・・・・・・・」
ゆっくりとズボンとベルトに手をかけて、その中を確認する。
その中はネットリとした液で濡れていた。
「・・・・・・・・・・またやっちまった・・・」
ゆっくりと起き上がり、抜き足差し足忍び足で水辺まで歩いていく。
そして下の部分を脱いで、衣服と下半身に付いた粘液を水で洗い流していく。
その光景はまるでオネショをした純粋な子供のようにも見える。

「くっ・・・・!! ちくしょっ!!」
傍にある小石を掴んで、前方に向かって投げつける。水飛沫を上げて石は沈んでいった。
「・・・・・・屈辱だ。なんで・・・・・・ワケわかんねぇよ」

夢精・・・・・・・そう、ガンツは夢精してしまうことに悩んでいたのだった。


本来は体の疲れを癒すための眠り。
だがガンツにとっては逆に体力を消耗してしまうことの方が多かった。
最初は数週間に1、2回くらいだったのだが、いまでは3日に1回くらいの割合で夢精してしまうのだった。
明け方に襲い掛かってくる快感は最早ガンツには不快感や嫌悪感にしか感じられなかった。

「医者に診てもらうっつー手段も有りだが・・・・・・見せられるわけねぇ。そんなもの相談できるかよ。
 『夢精してしまうから何とかしてください』とでも言えと? そんなの屈辱どころじゃねえ。 死んだほうがマシだ」

洗い終わったズボンを絞って水気を切り、そして着る。
ヒンヤリとした冷たい感触が足中に伝わる。

「バイクで走ってたら乾くだろ・・・」

バイクを持ってて良かったなと思ってしまうのがなんとも情けなかった。

レッドクラウンにまたがり、エンジンをかけて、走り出す。
特に目的地は決めていない。なんとなく行きたい方向へ走るだけだ。
だがガンツは無性にクロノアとパンゴに会いたくなったのだ。

「あの時に別れてから一度も会ってないな。たまには・・・・いいかもな」
進路をブリーガルに変更し、スピードを上げる。
ここからだったらそれほど遠くはないだろう。
急げば数十分。いや、もしかしたら10分を切れるかもしれない。
なんとなくそんなことを考えていたら、前方に誰かが歩いていた。

「クロノア? あれってクロノアだよな?」

やはりそうだった。青い服に長い耳、荷物を少し持っているようだ。 嫌でもクロノアだって気付くだろう。
向こうもこちらに気付いたようだった。
ブレーキをかけてレッドクラウンを停止させる。
クロノアは何だか嬉しそうだった。久々の再会に喜んでいるのかもしれない。

「お? クロノアじゃねーか。久しぶりだな」
「元気にしてた? それにしても突然だね。連絡も無かったじゃん」
「そんな面倒くさいことわざわざしねえよ。それにしても……妙に嬉しそうだな。これからデートでもすんのか?」

クロノアをからかおうと冗談を言ってみる。
ガンツにはクロノアをからかうという楽しみがあった。毎回毎回大きな反応を示すのが楽しかったのだ。
しかしガンツは逆に驚かされることになるのだった。

「…………そう…かもしれない」
「だよなぁ♪ そんな事あるわけ無い………………………ってマジかよ! 誰だ相手は? どこへ行くんだ? 何すんだ?」
「な、なに急に慌ててんのさ! 別にデートってワケじゃないよ。これからスイリューさんにジャグケトルで泳ぎを教えてもらうんだ」

(スイリュー? スイリューってあの警官のスイリューのことか?)
ガンツはスイリューと何度か顔を合わせたことがあった。
賞金首を受け取る担当がスイリューだから、嫌でも顔を合わせることがあった。

「スイリュー……? ああ、あの警官か。へぇ、お前が泳ぎを教わるなんて…台風でも来るんじゃないか?」
ガンツはゲラゲラ笑う。クロノアはムッとして言い返した。
「なんだよ!笑うことないじゃんか! そういえばガンツってスイリューさんのことよく知ってるの?」
「ああ、お前オレの職業を忘れたのか? 賞金稼ぎってのは賞金首を警察に届けなきゃいけねーだろ?
 そん時によくスイリューには会うからな。ひょっとしたらお前より多く顔を合わせてるかもしれないぜ」
「へぇ…そうなんだ。ねえ、ガンツはこれからどうすんのさ? よかったらガンツも一緒にジャグケトルに来る?」

ここで行動の範囲が広がってしまった。
クロノアに会うつもりだったが、逆にクロノアに今、遊びに行こうと誘われている。
行ってみたい気もするのだが、男三人で海というのも何だかアレだ。
それに、2人の邪魔をするのも何だか気が引けた。
もしかしたらスイリューは本当にデートのつもりで誘ったのかもしれない。
そしてクロノアもデートとして行くつもりだったのだが、ガンツに出合ってしまったために嘘をついて、2人でラブラブな・・・・・・・・

(アホかオレは? 変な妄想は夢の中だけでしろってんだ! どうも最近おかしいぜ。
 ま、2人で遊ぶのをわざわざ邪魔する必要も無いよな。 もしも本当にデートだったのなら、尚更だ。
 クロノアが無理となると・・・パンゴのオッサンか。 ここからだったら少し走らなきゃいけねぇな)

「いや、やめとくぜ。あそこは船が多くてどうもな…。そうだなぁ…久々にパンゴのおっさんのとこにでも行くとするかな?
 夏祭りの花火の完成具合とやらも気になるし……」

パンゴは元々花火師だ。あの時は爆弾ばかりを使っていたから、怪しい仕事でもしてるのかと思っていたのだ。
海や川で泳げるくらいの暖かさだから、祭りとやらもおそらく近いうちにあるだろう。
祭りの花火については、大分前にパンゴ本人から聞いたのだ。

「パンゴのところに? ボクも行きたいなぁ…」
「バーカ。お前はスイリューとのデートがあんだろ。すっぽかす気か?」
「だだ、だからデートじゃないって! なんだよ、相変わらずイジワルなんだから」
「へへへ、お前の反応がおもしれぇからだよ。ま、せいぜい1メートルくらいは泳げるようになれよ。じゃあなクロノア」

進路をパンゴの家に向けて走り出す。
急いで行きたかった。これ以上話しているとなんだかおかしくなりそうな気がした。
無邪気なクロノア、明るいクロノア、元気なクロノア。そしてそのクロノアに付き合う、大人びたスイリュー。
頭の中で色々な感情のようなものがグルグルと回っていく。
夢精し始めてから頭痛のような感覚が回ってくることがある。
原因不明の様々なモノが流れては消えて、消えては流れて、また現れてくる。

「!!!」
耐えられなくなり、目をギュッと閉じる。
そして開いたときにはパンゴの家の近くまでいつの間にか辿り着いていた・・・・・。

「・・・・・・疲れてるな」
溜め息を吐き、ゆっくりとレッドクラウンから降りた。


「さてと・・・・どうしたものか?」

パンゴの家の場所は知っていたのだが、来るのは初めてだった。
呼び鈴のようなものを探したのだが、見つからない。
勝手に入るのも気が引ける。 しかし今更引き返すのも面倒くさい。

「呼び鈴が無いのなら、別のやり方で音を立てなきゃな・・・・」

ベルトのホルスターから愛銃を取り出す。
そしてドアに向けて・・・・・・・・・・撃つのはさすがに酷いので、そこらの地面に向かって何発か撃った。
まるで大砲のような大きな銃声が辺りに響く。
気のせいかいつもより五月蝿く響いているような感じがする。
耳までおかしくなってしまったのか? そう考えているとドアが勢いよく開かれた。


「ななななな、なんだ!? 地震か! 戦争か! 侵略か! ・・・・・・・・・・・なんだガンツかい」
「よぉオッサン。久しぶりだな」

もの凄く驚いていたパンゴだったが、ガンツの姿を確認すると普段と変わらないような雰囲気に戻っていた。
パンゴは相変わらず、のほほんとしている。
気のせいか以前より丸くなったような、大きくなったような・・・要するに増量してるように見えたのだ。

(オッサン。以前と比べて増量したような・・・・まぁ無理もないか。元が重量級だからな・・・・)

「オッサン、元気にしてたか? 様子を見に来てやったぜ」
「いやいや随分久しぶりじゃないか。しばらく見かけなかったから少しだけ心配しなかったぞ」
「しなかったのかよ…。まぁいいや、花火の完成具合はどうなんだ?」
「ん〜〜ボチボチだな、特に問題は無いが。ま、せっかくだからウチにあがったらどうだ?」
「そうしてもらうぜ。本当はそのつもりで来たんだけどよ」

そしてガンツは家の中に入っていった。
安心感が体を満たしていくような感じがした・・・・・ような気がした。


若干広いが、狭すぎず、もの凄く大きいというわけでもない家。
まさに快適な家と言えるような感じだった。

「しかし突然だな。前もって連絡をくれれば色々と準備できたのに」
「そんなメンドクサェことするかよ。そもそも連絡手段が無い。武器とバイクと金があればそれで充分だ」
「ワシは一番大切なのは衣食住だと思うがねぇ・・・・・まだ賞金稼ぎを続けてるのか?」
「ああ・・・・・オレにとって、賞金稼ぎは天職だからな。職歴も随分長いし・・・。
 適当な悪人を銃で撃ち、適当なところへ運んでいくだけで大金がもらえる。
 面白いくらいに儲かるし、何より仕事に困ることは絶対にありえねぇ。悪人は絶対にいなくならないからな」
「ふぅん・・・・・。そんなもんかねぇ・・・・・・・」

ガンツは大の字になり、横になった。
最近は土か草の上でしか横になっていなかったため、床の上で寝転がるのは随分清清しい気分だった。
何者からも狙われることは無く、何者かを狙うことも無い。そんな束の間の安らぎを感じていた。

「花火の調子はどうなってんだ?」
「ん〜〜。ボチボチだな。この調子なら割りと近いうちに完成するだろうよ」
「そっか・・・・・・・・・・」

どうしよう? どうしてここまで来たんだろうか? 一体何のために来たんだろう?
悩みを相談するため? 他愛の無い雑談で気を紛らわせるため? 大切な仲間に会いたかったから?
わからない・・・・・ 理由なんか無いのか? 理屈じゃないのか? 理由があるからか? ワカラナイWAKARANAIわからない

「で? どうして突然、ワシの所まで来たんだ? 何か用件でもあったんじゃないか?」
「!!!」

(見透かされてる? 馬鹿な。いくらなんでも人生経験がある意味豊富なパンゴのオッサンでも、心を読むなんてことは出来ない!  って当たり前だよな)

「用っていうか、なんつーか・・・・・いや、あれだ、ボリスは元気にしてるか?」
突然の質問に動揺したガンツはこんなことを聞いた。
「ボッくん? ボッくんは出かけたよ。どこかへ遊びにいったみたいだから、夕方までには帰らないと思うが・・・」
「そっ、そうか・・・・・ボッくんって呼び方は、ボリスの一文字目の『ボ』からとってるんだな」
「ああ・・・・・・・・・ガンツ? それを言うためにわざわざここまで来たのか?」
「いや・・・だからその・・・・・」
「大事な用でもあったんじゃないのか?」

用ならある。それでもパンゴなら・・・・パンゴならきっとなんとかしてくれる。
パンゴならきっと自分の悩みの解決法を教えてくれるはず・・・・なのに。

「あ、あ〜〜〜。ああっ、そういえばさぁ」
無関係な話題を無理やり作っている自分自身が嫌だった。


「オッサン、少し増量したんじゃねえか?」
「うん? そんな気もしないでもないが・・・元々重いから、多少増えたところであまり変わらないと思うが・・・」
そう言うとパンゴは、右手で出っ張ったお腹を撫でた。
ガンツはその様子を見て、何故か妙にドキドキしていることに気付いた。
自分と比べて太くて大きいお腹が大きい手によって撫でられている……。
弾力と張りがありそうなその肉体を眺めているうちに、ガンツの頭の中である欲求が生まれかかってきた。

(あの腹・・・どんな感触なんだ? ・・・・・・・・・・・・・・・触ってみたい)
ゴクリとツバを飲み込む。身体がほんの少しだけ熱くなる。

「そ、そうか? 以前よりも腹がデカくなってるぜ? ハハハ…ハハハハ・・・・」
笑いながら、不自然に見られないように近づいて、パンゴの腹をポンポンと叩いた。

(!!!!!) 
今まで感じたことの無い触覚だった。 言葉では言い表せないような不思議な感触。
程よい柔らかさと硬さが混じった肉体に触れた自分の右手には、パンゴの体温が染み渡っていた。
口の中に溜まったツバをごくりと飲み込むと同時に、股間に電気のようなものが走った。
段々と熱を持ちはじめ、少しずつ大きくなりかけていた。

頭がボ〜ッとする。息が苦しくなる。右手には暖かい感触。目の前には優しいおじさんの大きな体。

右手だけでなく、左手でも触る。両手でパンゴの腹を撫でる。手の力をほんの少し強める。
手で揉み解した後は、抱きつくような形で頬ずりをする。
理性というものが無くなりかけていた。

「お、おい! ガンツ?」
ガンツの様子がおかしいことに気付いたようだ。
目の前の相手が自分の体に纏わり付いている・・・一体どうしたというのだろうか?
(もしかして甘えてるのか? そういえばガンツには父親がいなかったから・・・・ワシを父親だと思って?)
能天気なパンゴには能天気な考えしか浮かばなかった。
ボリスを抱きしめるように、パンゴはガンツを抱きしめた。


ガンツが理性を取り戻したときは遅かった。
両手で触っていただけでなく、あろうことか頬ずりまでしてしまったのである。
異様な目で見られてしまう・・・・・・。
別に他人にどんな目で見られようが平気だった。
しかし、付き合ってきた仲間に変な目で見られることは辛かった。
異様な目で見られ、嫌悪を露わにして、口からは耐え難い言葉が出てくるのかもしれない・・・・。
しかし、パンゴがガンツを抱きしめたことは予想していなかった事だった。
(!!! お、おいおい。まさかパンゴのオッサンも・・・・・・・?)
だが違った。パンゴまで理性が吹き飛んでしまったのかと思ったが、そうではなかった。

「まったく・・・・・親がいないというのは寂しいもんだな」
「・・・・・・・・・は?」
「ワシでよければ一日だけでも父親代わりに・・・・・・」
「いや、あの・・・・・・・・」
「ボリスでボッくんだから、ガンツでガッくんか? いや、やっぱりそれじゃ変だな」
「だから・・・・・・そんなつもりじゃ・・・・・」
「ボッくんもワシの腹を気持ち良さそうに撫でてたからな・・・。ついついガンツも童心にかえって・・・」
「だ・か・ら!! 人の話を聞きやがれ!!」

ガンツは鬼のような形相をして、愛銃をパンゴの眉間に突きつけた。

「むぅ〜? リクエストか? 確かにガンツの希望も聞かなければ不公平に・・・」
「家のドアをもう一つ・・・・今すぐ作ろうか?」
「・・・・・・・・遊び半分だったんだが」
パンゴはガンツの話に耳を傾けようとした。

「やっぱ正直に言うしねぇな。今日・・・オレが此処に来たのは」
「来たのは?」
「・・・・・・ちょっと相談したいことがあったからだ」
「悩み事か?」
「う・・・・・・・・まぁな」
「どんな悩みだ?」
「・・・・・・・・・・・・む・・・むせっ・・・・ぃ」
「???」
「あの・・・・・朝…起きたときに・・・こう・・・」
「なるほど! オネショに悩んでるんだな! それなら」
「ち、違うに決まってんだろうが!! そうじゃなくて・・・・夢精だよ」
「・・・・・は?」
「だ〜か〜ら〜!! 夢精だよ夢精。む・せ・い!!! 朝起きたときに、ビチャビチャなんだよ!
 しょっちゅう濡れちまうし、体は疲れるしで大変なんだよ! まだオネショのほうがマシだぜ・・・・・・」

言ってしまった。ついに言ってしまった。最早プライドというものは崩れ去っていた。

「病気じゃなくて、ただの夢精なのか?」
「ん・・・・・・・ああ。最近では・・・・・3日に1回の割合で・・・・」
「・・・・・ガンツ。オナニーって知ってるか?」
「・・・・・聞いたことはあるけど、やり方がわからねぇ・・・・・・・・」

そうだったのだ。ガンツの体は大人とほぼ同じくらいに成熟していたのだが、中身はそれほどでもなかった。
もしかしたらクロノアとそう大差は無いのかもしれない。
精神的には未熟な部分があるため、夢精という生理現象に踊らされているのだろう。

「ん? それならワシがやり方を教えればいいんじゃないか?」
「え?! ま、まぁオレがやり方を知ればいいんだろうけど・・・・で、でも」
「遠慮する必要は無いだろう? そういうことは誰だってするもんなんだからな」
「・・・・・・・・それじゃ・・・・・・頼む」
恥ずかしながらも、ガンツはパンゴに方法を指導してもらうことになった。

「で、オナニーってどうするんだ?」
「どうするもなにも・・・・・・・ココを刺激してやればいいだけなんだが。
 液が彼方此方に飛び散ってしまうから、ここではできんな。風呂場に移動でもするか」
トイレじゃ無理なのかな? とガンツは思った。


ガンツとパンゴは風呂場に移動した。
ここなら液が飛び散っても洗い流せることが出来る。もし、体が汚れてもそのままシャワーを浴びればいいのだ。
中は普通の風呂場よりも少しだけ広かった。これならパンゴのような体格でも入り口のドアに引っかかるということは無いだろう。
2人は服を脱ぎ始めた。
そういうことをする恋人同士のような感じがして、ガンツは妙にドキドキしている。 股間の部分も半勃ちになっていた。
タオルで体を隠すこともなく、そのまま浴場に入った。
風呂場というより大浴場……いや、中浴場か小浴場といったくらいの大きさだった。

(なんか・・・・・ただ、風呂に入らせてもらってるみたいだな、こりゃ。ていうか・・・・・・・)
ガンツの視線はパンゴに釘付けだった。

(何を食べてたらこんなにデカくて太い体になるんだ? 種族の違いってやつなのか?
 でも、オッサンの子供のボリスは別に太ってるわけでもプニプニってわけでもないな。
 やっぱり個人差なのかも。いやいや、見た目は標準体型のボリスでも、数年もしくは十数年あるいは数十年経てば
 オッサンのようにデカくて太い立派な体格になるのかもしれねぇ…。
 オレやクロノアはどうなんだ? 大人になれば、デカデカでプニプニでムキムキになるのか? なんか複雑な気分だぜ。
 ていうかパンゴのオッサンの服の下って初めて見たな。なんか・・・・・・どんな感触なんだろうか・・・・?)

「おっ、オッサン。その…始める前にちょっと頼みがあるんだが」
「おやおや、なんだ?」
「は、は、は〜・・・・・・・オッサンの腹に触ってみてぇんだけど。駄目か?」
「そんなにワシの体に興味を持ってくれるとは光栄だな♪」
「か、かっ、勘違いすんじゃねえよ! ただ、どんな感触なのか・・・・気になるだけだ。それだけだよ」
「ほぉ、そうだったのか? 頬ずりしたいほど気になってたのか。うんうん、ワシも中々…」
「い、いいから黙って早く触らせろよ!」

ガンツは自分でもよく分かっていないのだが、すごく恥ずかしい台詞を言っていた。
もっとも、本人は頭に血が昇りすぎてるせいか、よくわかっていないようだが…。
ガンツが手を伸ばそうとしたがそれよりも速く、パンゴがガンツの手首を掴み、自分の体まで持ってきた。
ガンツの掌はパンゴのお腹の真ん中あたりにピッタリと当たっていた。
柔らかくて丈夫で弾力があるその奇妙な感触に酔ってしまいそうだった。

(手形でも付きそうな感触だな・・・・。ていうか、すげぇ何だコレ? こんなに体がデカくて大丈夫なのか?重すぎて大変じゃねぇのか?)

パンゴは嬉しそうな顔をして、ガンツを抱き寄せた。 今度は顔がお腹にめり込むように当たった。
胸がドキドキする。呼吸がほんの少しだけだが不規則になる。体温が上がる。
ガンツは耐え切れなくなって、パンゴの体にしがみついた。
全身で感触を味わう。 すごく不思議な気分だった。 今までに無い高揚感。 これから先、味わう機会は無いだろうと思ってしまう。

「ん〜? そんなにワシの体がイイものなのか? それならガンツもデッカくなればいいんじゃないか?」
「いや、それは遠慮しておく」
「で、いつ始めるんだ? もっとも、ガンツの体はもう準備万端みたいだがな♪」
「?」
何気なく目線を下に向けてみる。ガンツの股間のモノは立派に巨大化していた。
途端に羞恥心が溢れてくる。 慌てて体を離そうとするが、パンゴに抱きかかえられるような形で体を押さえつけられていた。
背中から抱きかかえられてしまった。

「じゃあ、やってみるか♪ ワシに任せれば安心だ。大船に乗ったつもりでいていいぞ♪」
「ってオイオイオイ! オッサンが、その・・・・・・するのか?」
「百聞は一見にしかず、習うより慣れろ、指導されるは一時の恥、知らぬは末代までの恥 というだろう?」
「なんかおかしくねぇか? ていうか言わねぇよ! べ、べつに自分で出来っ・・・」

ガンツが言い終えるよりも早く、パンゴはガンツの棒をギュっと掴んだ。
その瞬間、体がビクッと震え、小さな呻き声が口からこぼれてしまう。
「うっ・・・・・あっ」 
大きな手でガンツの棒をゆっくりと揉みほぐしていく。
「ココを掴んで・・・・・こう動かして・・・・」
「はっ・・・・・やっ・・・・・・・」
棒を掴んだまま、手をゆっくりと上下に動かす。
先端から蜜が少しずつ溢れてくる。 クチュッという音が次第に聞こえてくる。呼吸が一層、荒くなる。
ガンツは弄ばれる快感に溺れ、パンゴは弄ぶ快感に溺れかけていた。
「お、オッサン・・・・もういい・・・・ハァ・・・・・・やり方・・・わかったから、あとは自分で・・・・んっ」
「せっかくだから、最後までやっても大丈夫だろ。ホレ、もうこんなに熱くなって・・・・・」
パンゴの手の中で、ガンツの棒は最大にまで大きくなっていた。体中の熱が一点に集中している。



パンゴは上手だった。力の強弱の加減を上手く使い分け、射精しそうになると一旦手を離し、治まると再び激しく攻め立てる。
年齢とテクニックは比例するのだろうか? ガンツは朦朧とした意識の中そんなことを考えていた。
様々なものが頭の中に流れていき、一瞬呼吸が出来なくなり体がビクッと痙攣したときに、ガンツは射精した。
朝方に夢精したにもかかわらず、液の量は多く、風呂場の壁に向かって一本の線のような道を創りあげた。
勢いがおさまっても、ドクドクと先端から汁が滲み出て、パンゴの手を濡らしていった。

「ん・・・・やり方は分かったか?」
「うっ・・・・ハァ・・・・・こんなの、嫌でもわかるぜ」
ゼェゼェと息をする。パンゴは義務を果たしたような満足感を感じ、ガンツの体を解放した。
と、その瞬間! 自由の身となったガンツはパンゴの足と足の間の部分に飛びついた。
「!! おい、ガンツ、何するんだ?!」
「・・・・・せっかくオッサンがしてくれたんだからな。お返しをしなきゃいけねぇよな」
ガンツはパンゴの大きなモノを頬張るように咥えた。
「うっ!」
急激な快感にパンゴの体は震える。
ガンツは口だけでなく、乳搾りのように両手を使ってしごく。 中々上手だった。

パンゴは抵抗しようと思えば出来た。力が強いから、無理やりにでも引き剥がすことは出来たはずだ。
だけどパンゴはそうしなかった。自分はガンツに対して『した』のだから、そのお返しをされることは当然だと思ったからだ。
そしてもう一つの理由。ただ単純に『気持ちいい』という感情が全身を支配したからだ。
おそらく後者の気持ちの方が本音の大部分を占めているのだろう。
(最近してなかったからなぁ。随分と久しぶりな気がする・・・・・)
親子といってもいいほどの年齢差の相手とこんな行為をすることに罪悪感が募るものの、
この快感の前では、そんな建て前などは無意味だった。
(これは・・・悪いことなんかじゃあないはずだ。そう、ただ誰でもする生理的なことを教えてるだけだけだけ)
段々と頭の中が蕩けていく気がした。
股間のモノはムクムクと大きくなり熱を持っていく。
蜜が次々と溢れていき、ガンツの口から零れ落ちていく。
パンゴは無意識のうちにガンツの頭を掴み、腰をゆっくりと振っていた。

ピストン運動のように口の中で棒が出し入れされるたびに快感が溢れていく。
一方のガンツも、半ばおかしくなっていた。抵抗感というものはまったくなく、大きな棒を一心にしゃぶっていた。
お互いに何も喋らなかった。何も言わずに互いを刺激していた。
「ん・・・・なぁ、ガンツ」
「ハァ・・・・ぴちゃ・・・・・なんだ?」
「えっと・・・・セックスのやり方も・・・教えようか?」
「え!! あ、いや、でも男同士だから・・・」
「それが出来るんだよ、やろうと思えば。ちょっとじっとしとれ・・・」
そう言うと、ガンツを仰向けに寝かせ、足を広げさせ、下半身を上に上げさせた。
のしかかるように全身で相手の体を押さえつける。豊かで逞しい肉体が押し付けられてしまう。
ズシッとした重量が伝わる。ヌルヌルと湿っている棒をガンツのお尻のほうまで持っていき、あてがう。
ゆっくりと少しずつ、グイグイと押し込んでいく。妙な音がしていく。
「男同士の場合はココに入れるんだ」
「え?! 嘘だろ! ちょ、ちょっと」
少し遅かった。パンゴの棒はガンツの体内へとほんの少しだけだが侵入していった。
パンゴのモノはもの凄く大きかったが、ガンツの体へ侵入できるくらいの余裕はあった。
ガンツがクロノアと同じくらいの体格だったのなら、おそらく無理だっただろう。
大人と子供の中間くらいの成熟した体格だったため、入れることが出来たのだ。
しかし、想像を絶するような衝撃が襲い掛かることに代わりは無かった。
今まで、生傷などが絶えないことはたくさんあったため、体が傷つくことには多少慣れていた。
しかし、この内側から突き上げてくる衝撃に耐えることは難しかった。今までに味わったことが無いからだ。
パンゴの棒は半分ほど押し込むことが出来たのだが、そこが限界だった。
それ以上の侵入は出来なかったのだ。
激しく腰を動かすたびにグチュグチュと音が浴場に反響する。
ガンツの穴からは透明な粘液と血がジットリと流れ出る。

半分、夢を見ているような感覚だった。痛みを忘れそうなほどの快感が襲い掛かる。
パンゴは今までに見せたことの無いような表情をしている。
鏡が手元にあるのならば、自分の表情を見てみたかった。
きっとそこには 今ま  で見 たこ との 無 い自 分 の 表  情が・・・・・

「!!!!!」
一体どちらが叫んだのだろう? ガンツ? パンゴ? それとも両方なのか。誰も叫んでいないのか。わからなかった。
ただ確実に今わかっていることは、パンゴの体が痙攣するように大きく震え、そのたびにドバッという音が体内で響き
ドシュッという音が耳に響いてきた。ついにパンゴは土石流のような勢いで射精してしまったのだ。 ガンツの体内で・・・・。
体液と粘液があたりに飛び散り、2人の体を湿らせていく。
ガンツの意識は闇に沈んでいった・・・・・・・・。

気付いたら、浴槽のお湯の中にいた。ちょうど、肩までつかっている。
「ん・・・・・・・・・・?」
「気付いたか?」
隣にはパンゴがいる。
体中に飛び散ったはずの液は付いていない。
話によると、ガンツは数十秒ほど気絶していたそうだ。
慌てたパンゴは、お湯で体の汚れを洗い流した。
途中で意識が戻ったため、一緒に風呂に入っているのだという。
(あれ? 意識は途中で戻ってたのか? 全然気付かなかった・・・)
意識や記憶、そして感覚なんてものは曖昧なのかもしれない。
「しかし・・・・・・」  「・・・・・・・ああ」
気まずかった。勢いでやってしまったとはいえ、2人がしたことはオナニーの仕方という壁を突き抜けて
実技性教育というものをしてしまったのだ。 いくらなんでもこれはさすがにマズイ。
ムラムラと性欲に身を任せてしまったとはいえ、男同士、それに年齢差。
血は繋がっていないのが唯一の救いだったかもしれない。
「これはさすがにヤバイんじゃ・・・・」
「いや、待て。大丈夫だと思うぞ」
「どうしてだよ?」
「別に誰にも見られたわけでも知られてしまったわけでもない。
 そうとも! これは・・・・・性教育だったんだ。普通は教わらない発展的なことをワシが教えた。
 別にやましいことはしていないし、かといって誰かに教えるようなことでもない。
 要するに何が言いたいかというと・・・!!」
「かというと・・・・・?」
「2人だけの秘密だってことだ♪」 パンゴは満面の笑みで答えた。
(ホントに・・・・・呑気なオッサンだな) ガンツは溜め息を吐いた。

「しかしまさかガンツがなぁ・・・・」
「な、なんだよ? 気絶してしまったのは仕方無いだろうが!」
「いやいや、そうじゃない。まさかガンツがオナニーを知らなかったとは・・・・」
「べ、べ、別にいいだろうが! クロノアよりかは・・・・そういう事については知ってるつもりだぜ」
「ほほう? ガンツ。クロノアを見くびってるんじゃないか?」
「は、はあ!?」
驚いた。見くびってるって・・・・クロノアをか? どういうことなんだろうか。

「クロノアはな・・・・お子様のように見えても・・・」
「見えても・・・・・・?」
「知識は凄いぞ。ガンツなんか足元にも及ばん」
信じられなかった。あのガキっぽいクロノアが『そういう知識』について詳しいだと? 信じたくなかった。

「いや、以前クロノアを2人でそういうような話題になってしまったときがあったのだが。
 なんていうか・・・・いや、多分アレは無意識のうちの行動・・・・簡単に言えば『天然』なのかもしれんな。
 行動や・・・・言動が、なんていうか妙な感じがしているんだ。 知らないのかもしれないし知ってるのかもしれない。
 不思議な感じがしていて・・・・ワシにもよくわからんかったよ」

「確かにクロノアって、なんかよくわからねぇフェロモンみたいなの漂わしてるよな。
 なんか時々、オレもドキッとしてしまうこともないわけでもない・・・・・ような気もする」

「なんかよくわからないな。確かにクロノアには不思議な雰囲気が漂っているからなぁ。
 ・・・・・・そういえばクロノアは今日はどうしてるんだ?」

「ん? ああ、ジャグケトルにスイリューと・・・・・あ、スイリューってのは警察の人だ。
 で、そのスイリューと一緒に海水浴に行っているんだとさ。正確に言えば泳ぎを教えてもらうとかで・・・」

「ん〜、なるほど! デートというやつか!」
「ブッ!」
ガンツは噴出してしまった。口の中に何か食べ物でも含んでいたのなら、間違いなく辺りを汚していただろう。

「ななななな、なんでデートになんだよ! 言っておくけどスイリューは男だぞ」
「ワシと同じくらいの年か?」
「いや、オッサンよりかは間違いなく若いよ。詳しくはわかんねぇけどな」
「まぁそれはいいとして、想像してみろ。水着姿…海パンだけのクロノア。
 絡み合う大人と子供の肉体。純情な警官を惑わすフェロモンたっぷりなクロノア。
 やがて2人は欲情に身を任せ・・・・・」
「スト〜〜〜〜〜〜〜〜ップ!!!」
大声で発言を制した。

「な、なんかオッサンしばらく見ないうちにおかしくなったな・・・。
 く、クロノアがそんなことをするなんてのはさすがに無ぇだろ・・・」
「いや! 無いとは言い切れんぞ」
「どうしてだよ?」
「ワシとお前さんの例もある・・・・・」
「なっ!」
顔がほんの少しだけ赤くなってしまった。先ほどの行為を思い出してしまったからだ。
「ななな、なに言い出すんだよ。アレは・・・・弾みで」
「弾みだとしても、してしまったことには変わらん。もしかしたらクロノアもワシらのような事をしてるのかもしれんな」
「・・・・・・考えすぎだ」
「・・・・・・・・・・・さて、体も温まったことだし、そろそろあがるか!」
なんだかモヤモヤを残したまま、ガンツは浴場から出た。


夕方が近づいているようだ。
気温はほんの少しだけ下がり、太陽は傾いている。
舞台の照明が暗くなっていくように、段々と明るさが弱くなっていく。
風が生暖かい・・・・・。火照った体をゆっくりと冷ましていく。

「今日は・・・・・・色々とアリガトよ」
「いやいや、ワシでお役に立てたのなら。これでじっくりと安眠が出来るな♪
 若いということは良いもんだ」
「わ、わかったから、大声で言うなよ! 誰かが聞いてたら・・・・・」

「ところでガンツ。夢の中では誰が出ているんだ?」 急にパンゴは訊ねてきた。
「夢の中?」
「夢精しているんだろう? ガンツの夢の中で出演しているのは誰なんだ?」
そんなことを言われてもわかるわけが無い。
夢の内容を完全に覚えているなんて滅多に無いからだ。

「わかんねえよ、そんなの。わかったところでどうにもならないし・・・」
「それもそうだな。たとえ夢精の原因が身体的なことだとしても精神的なことだとしても、解決できるとは限らないからな」
「ハッキリと言うな・・・。まぁ今日はオッサンのおかげで色々と助かったな。
 また困ったことがあったら相談に乗ってくれよ? こんどは変なこと無しでな。
 そうそう、花火…楽しみにしてるぜ♪」

パンゴの返事も待たずに、ガンツはレッドクラウンのエンジンをかけて、急発進した。
これ以上パンゴのところにいたら、段々と何かがおかしくなりそうな気がした。
いや、自分はおかしくなってもかまわない。
ただ、パンゴは家庭を持っている。 自分のせいでパンゴの幸せを狂わせることはあってはならなかった。
不幸なのは『死神』である自分で十分だ。
大きな不幸が訪れることがないのならばそれでいい。幸せなどという贅沢なものは望まない。
今日の自分は、パンゴを通して、親父の姿を垣間見たのかもしれない。
たとえそれが、奇妙でおかしくて異常な行為だったのだとしても・・・・。
いや、違う! あくまでも自分は年上の人に、だれもがする行為について教わっただけだ。 
ただそれだけ。それ以上でも以下でもない。

「・・・・・・・一体何がオレを悩ましているんだ?
 パンゴ? スイリュー? ジャンガ? 親父? それともクロノア?」

よくわからない。なにもわからない。本当は何も解決していないのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、自分はあるところにいた。
無意識のうちにブリーガルの近くに来ていたのだった。
一体どうしてだろうか? なんで? いつの間に? 偶然? それとも必然だというのか?

「違う! オレは・・・・・何も・・・・」

Uターンをする。とりあえずここから離れたかった。
その時、ふと前方を見ると誰かが歩いていた。ガンツがよく知っている人物だった。
クロノアとスイリューが歩いていたのだ。
正確に言えば、スイリューがクロノアを背負っていたのだ。
その様子はまるで親子。 怪我をした子供を背負って帰る親。
その姿を見た瞬間、ガンツはほんの一瞬だけだが、幼い頃の平穏な日々の中にいた。 ほんの一瞬だったのだが……。

向こうもこちらに気付いたようだ。
平静を装わなくてはいけない。間違ってもパンゴとあんなことをしたなんて気付かれてはいけない。


「おっ! クロノアじゃねーか、また会うなんて奇遇だな………ってぇ…なんだぁ、その格好は?」
「え、あっ…………ちょっと疲れた……じゃなくて、足が……痛くなって……えっと」
「クロノア君は泳ぎ疲れて足が痛いから……こうしてワタシがおぶってるんだよ、ガンツ君」
スイリューがさりげなくフォローを入れる。
「なんだよ情けねぇな。それにしてもスイリュー、久しぶりだな。ちゃんと仕事してんのか?」
「失礼だな。毎日忙しいくらいだよ。今は特別休暇なんだ」
「まっ、別になんでもいいさ。ケーサツがヘマをするほど、賞金首の価値が上がってオレが儲かるからな」
「ふっ、最近の警察は優秀だからそう失敗ばかりしないさ。まぁ賞金首が出たときはまた頼むよ」
「おいおい、ケーサツが賞金稼ぎを頼ってどうすんだよ。まあ、そん時は賞金は高くしてくれよ」

スイリュー・・・久々に会う。元気で体力があるのが取り柄だったのだが・・・・どこか疲れているようだ。
もしかして、オッサンの言うようにこの2人も・・・・・? いや、まさか・・・・・・。

「ところで、クロノア。オメェ………どれくらい泳げるようになったんだ?」
「え〜〜……んっと……10メートルくらい」
「重度のカナヅチにしちゃあ、まぁまぁじゃねえか。目標の1メートルの10倍だもんな」
イヤミを言って探りを入れてみる。

「そうかな? ところで………パンゴは元気にしてたの?」
(!!! き、気付かれてる?! いや、考えすぎだ。元気かどうか聞くのは別におかしくないからな・・・・。
 オッサンが元気? 確かに元気だな。中年とは思えないくらいの勢いだったよな・・・・・・。)

「えっ! あ〜〜〜…ああ、元気だったぜ。ありゃ〜驚くくらいの元気っぷりだったな。まったく…信じられねえよ………」
「?」
(ってオレは何言ってんだよ!? 自分の口でそれらしいことを言ってたら気付かれて欲しいって言っているようなもんだ)

「なにか…あったの?」
「!!!……………………………鋭いな」 驚きのあまり、ボソッと呟いてしまう。
「はにゃ?」
「な、なんでもねえよ! それじゃあオレはそろそろ行くぜ。今度は夏祭りの時にでもまた来るからな」
「わっふー! わかったよ♪」
エンジンをふかして、走り出す直前…
「デートは楽しかったか?」とガンツは大声で言った。
(こうなりゃヤケだ。どうせ気付かれているのかもしれないのなら、とことん突っ走ってやるよ)

「!!」
「!!」 クロノアとスイリューは体を強張らせてしまった。
(ああ、やっぱり・・・・・。図星を突いてしまったみたいだな。
 間違いない。どこまでしたのかはわからないけど、クロノアとスイリューは絶対にしている。かけてもいいぜ)

「な〜んてな♪ じゃあまたな、お二人さん。遠くから見てるとまるで親子みたいだぜ。 じゃあな!」

そんなことしか言えなかった。なぜか頭が痛い。
悩みは解決されてるはずなのに・・・・・・。
頭だけでなく胸も痛かった。
よくわからない。 自分自身がよくわからない。
異変に気付かれないように、急発進してこの場を離れる。 わけもなく叫びたかった。

真夜中・・・。
昨日と同じ場所にいる。朝と同じ木陰にいる。これは偶然なのだろうか?
無意識のうちにこの場所に来てしまったのか、それとも見えない力に引き寄せられたのか。

今日はいろいろなことがあった。
夢精して…洗って…久々に会いにいって…会話して…教わって…初めてのことをして…また会って…昨日と同じ場所にいて……。
急に今日の出来事を思い出した。
理由はどうであれ、自分がパンゴに欲情して、パンゴと行為に及んでしまったのは事実なのだ。
そして、クロノアのことが気になり始めている・・・・・・。
これも事実。変えられない現実だ。
親父のことを思い出して・・・・・ジャンガのことも・・・・スイリューとも久々に出会って・・・・。
もうなにがなんだかよくわからない。

何も考えたくなかった。
服を脱ぐ。生まれたままの姿になる。
反応しはじめているソレをギュっと掴み、激しく刺激する。
単純に数えて、射精するのはこれで3回目のはず。
若くて精力に溢れている肉体は、さらなる欲求を発していた。
段々と棒は大きく硬くなり、透明な液が出てくる。
「ぅ・・・・あ」
いつの間にか頭の中には、たくさんの人で溢れかえっていた。
禁断の行為に及んでいる自分・・・・・。
たくさんの人に囲まれて、犯されている自分・・・・・。
犯している自分・・・・・。
絶頂に達したそのとき。 
棒の先端から液体が噴出し、草むらを湿らせていった。
興奮が冷めたあとの倦怠感…。
そして襲い掛かってくる眠気。
「今日は・・・・・・ゆっくりと寝られそうだぜ・・・・・」
ガンツの意識は暗い場所へと沈んでいった。

目の前に誰かがいる。 あれは・・・・・ジャンガ!?
どうしてこんなところに!!
いや、それだけではない。ジャンガの隣には、ガンツの父親のバッツまでもいる。
一体何が起こっているのだろうか?
声を出そうとするが、まったく出ない。
それだけでなく、体の自由が利かない。
目の前の2人はゆっくりと近づいてきて・・・・・ガンツの体に纏わりついてきた。
「!!!???」
ゆっくりと服を脱がされていく。
あっという間に、生まれたままの姿にされる。
なんとか抵抗しようとしていると、あることに気付いた。
ジャンガとバッツだけでない。その周りにもたくさんいる。
パンゴにスイリューにクロノア。他にもまだまだたくさんいる。
自分が知っている相手や、まったく知らない相手。
目の前の人たちが自分の肉体を求め、襲いかかろうとしている。

触られた 掴まれた 握られた 舐められた 挿れられた 抱きしめられた
咥えさせられた 飲ませられた 言いたくない言葉を無理やり言わされた 淫らな行為を強要された
そして段々と「別に悪くは無いかな…」といった考えが自分自身を支配していく。
こういった行為を一番望んでいるのは・・・・・・・・・自分自身だった。

それが頭を横切ったとき、ガンツは思いっきり叫んだ。
「!!!!!!!!!」
言葉にならない叫び。もはや言葉ではない叫び。声という声を出し尽くしたとき・・・・・ガンツの意識は明るい場所へと浮かび上がった。

目が覚めた。
辺りは明るい。
自分は木陰にいる。
「夢・・・だったのか?」
汗をたくさんかいている。
妙に体が熱く、体中がドキドキしている。
「なんだ・・・・夢かよ・・・・・ハハハハッハハ・・・・・・・はぁあ!!!????」

自分自身の異変に気付いた。
既に慣れきってしまった、自身の生理現象。
もう惑わされることはないと油断していたのだろうか?
それともやはり精神的なことが原因だったのだろう・・・。
だがガンツにとっては理屈などどうでもよかった。
ただ目の前の現実が自分自身を覆いかぶさる。

「もう・・・・泣けてくるぜ」

そう…ガンツは夢精していたのだ。

ガンツの受難は続く・・・・・・・・・。



〜性教育〜   END