〜 平和な世界と禁断の儀式 〜
あるところに月の国がありました。
月の国には若い王子さまがいました。
王子さまはまだ子供です。
あるところに風の村がありました。
風の村には元気な少年がいました。
少年は王子さまと同じくらいの年です。
王子さまと少年は仲良しです。
幼い頃からいつも一緒にいました。
身分が違っていても、2人はそれを気にすることはありませんでした。
周りの人たちも誰も咎めようなどとはしません。
つまりこの世界は平和な世界ということなのです。
王子さまはよくお城を抜け出し、少年と遊ぼうとしてました。
少年は毎日王子さまと遊ぼうと家を飛び出していました。
王子さまはヒューポーという名前です。
少年はクロノアという名前です。
2人はいつでも一緒でした……………。
「よっと!」
軽い身のこなしで壁を飛び越え門をくぐり抜け、ヒューポーはお城から抜け出す。
(別に悪いことはしてないんだから普通に外出すればいいんだけど………なんとなくコッソリと抜け出したくなるんだよね)
いつもの道を走り抜け、いつもの待ち合わせ場所へ向かい、いつものように遊ぶ。それが日課となっていた。
自分が王子さまだということをクロノアに打ち明けたときも、何一つ顔色を変えることは無く、普段のように接してくれた。
だから自分も王子という身分であっても、クロノアと接するときはただの親友でいようとそう誓った。
大好きなクロノア、大好きな親友、大好きな人。クロノアと一緒にいる時だけ、王子という鎖を外すことが出来た。
(自分が王子だってことは隠さなくて良いんだから、リングの精の形態じゃなくても大丈夫なんだけど…………
丸い体に慣れすぎちゃったせいかな…? なんか落ち着かないや )
幼い頃。ヒューポーが外へ出かけたとき、クロノアと出会った。
お城の外の事はあまり知らなかったヒューポーに、クロノアは色々なものを見せてくれた。
ヒューポーにとっては新鮮な体験の連続だった。
度々、出会って遊ぶようになるうちにヒューポーは自分の身分のことについて悩み始めるようになった。
この平和な世界では身分などは特に問題は無いのだが、ヒューポーにとっては深刻な悩みだった。
いつまでリングの精のふりをするのだろうか? 自分が王子だということを隠していて良いのだろうか?
ある日ヒューポーは自分の本当の姿を曝け出し、自分の身分を打ち明けた。
だがクロノアは、「ヒューポーが本当のことを言ってくれただけでボクは嬉しいよ」と言ってくれた。
そのときから、もう2人は親友になっていたのかもしれない。ほぼ毎日、2人は遊ぶようになってた。
そして今日も…………
「あっ! クロノアだ。 オーーイ、クロノアーー!!」
数十メートル先に、クロノアがいる。いつもの場所にいる。いつもの様子で。いつもの姿………………………………じゃない。
いつもの姿じゃない。いつものクロノアじゃない。いつもの………いつもの服じゃない。
赤いズボン、赤い首輪、茶色の靴、帽子のかぶりかた………………いつものクロノアとは違っていた。
「ヒューポー! 遅いよ」
口調は怒っているようだが、表情は温かい笑顔だ。
「あ………ゴメン…………………クロノア、いつもの………格好とは違うね」
「エヘへへ♪ どう? 似合うかなぁ?」
「え…………えっと」
海のように濃い青のズボン、空のような淡い青のシャツ、果物のような色合いの靴、
前髪がはみ出るような帽子のかぶりかた。首輪も付けていない。
血のような赤い服は消え去り、海や空のような青い服へと変わっていた。
「イメチェンってヤツさ♪ カッコいいでしょ?」
「うん………そうだね」
「胸やお腹を出すのはちょびっとだけ恥ずかしかったからね。でもこの服は通気性もいいから、快適なんだよ。それに…」
(僕は…………前の服の方が良かったな。血のように赤い服が………首輪が………別に、上半身を曝け出しても変じゃなかったのに)
「……それにボクは赤より青のほうが好きだし………ヒューポー? 聞いてる?」
「え!? あ、ああ。うん。聞いてるよ」
(僕は赤の方が好きだなぁ………)
「もしかして………似合ってないのかなぁ? 前の服の方が良かった?」
「そ、そんなことないよ! 似合って……るよ。少なくとも………前よりカッコよく見えるよ」
「ホント!? わっふー!! そうこなくっちゃ♪」
(カッコいいクロノアも良いけど………可愛いクロノアも捨てがたい。前の服の方が僕は好きだな……でもそんなの言えないし)
ヒューポーはそっとクロノアの胸に手を添えた。
「はにゃ? どうかしたの? 何か付いてるの?」
「…………直に触れることはもう出来ないのかもね」
「え? 何か言った?」
「ううん…………なんでもない! クロノア、ゴメン! 今日は………やっぱり遊べない! よ、用事が出来たから………じゃあね!)
「え? ちょ、ちょっとヒューポ……」
「また明日!」
ヒューポーは走り出した。自宅へと向かって。
自分の中のクロノアが変わっていく様を直視することが出来ずに。
なんとも言えないもどかしさを感じながら。
「ふぅ………」
自宅…もとい、城に戻ってきたヒューポーは溜め息をついた。
すぐに自室へと戻り、いつもの行為をしようとする。
その『行為』とは簡単なことだ。
頭の中をクロノアで満たし、体の一部をゆっくりと刺激していく。
そうするだけで心と体が満たされるのだが………。
「……………ダメ。今日は………出来ない」
どうしても体が反応しない。
頭の中に青い服のクロノアがチラつく。
クロノアであることには変わりないのだが、どうしても熱することが出来ないのだ。
ベッドの上に大の字になる。 お城に相応しいような大きなベッド。
柔らかいシーツと黒い毛布が体を包み込んでくれる。
「クロノア…………………僕は………」
目から、ひとしずくの涙が零れ落ちた。
コンコン!
ノックの音だ。
「母上。どうぞ」
急いで涙を拭う。
ノックの音で誰だか分かる。この城の住人ほぼ全ての足音やノックの音を、ヒューポーは把握していた。
扉を開け、中に入ってきたのはこの月の国の女王でもあり、ヒューポーの母でもある人だった。
「ヒューポー、よろしいですか?」
「……………また、『儀式』の話ですか?」
「…………………」
「何度も言ったように………いくら代々伝わっているものだとしても、僕は嫌です」
「…………………」
「そんな……まったく知らない……好きでもない相手と……するなんて。僕は嫌です」
「………なぜこの国が……この『儀式』を重要視するかわかりますか?」
分かってるもなにも………知らない人なんてこの城……いや、この国の大半の大人は知っている。
この『儀式』の……意味を……理由を……。
王家の血をひく者の体が成熟し始めるとき。
その王家の者は月が満ちる夜に、ある相手と2人で夜を過ごし………性行為をするというものだ。
血と体液を交わすことで……体を清め、世界の安泰を神に願うものだと。
「要するに、明日の夜……僕が誰かと淫らな行為をすることで神様を満足させる……そんなふざけた『儀式』をしなきゃいけないと」
「この儀式を行わなければ……災いが何らかの形でこの世界に降り注ぐことになります」
「わかってます。そんなことは。僕にだって……。今日中にはお城で準備をしなきゃいけないってことも」
「相手は……………ヒューポーが選んだ相手なら………王家の者以外なら……誰でも。もし相手が決められないのなら、こちらが選んだ候補の中から」
(好きでもない………全然知らない相手に……初めての行為を捧げるなんて………妙な伝統が伝わってきたもんだ)
「相手なら………誰でも良いんですよね?」
「………ええ」
「もう………決まって…いえ、決めました。今日決めました」
「なら…………準備をしておきます。その御方をお城へご招待しておいてください。丁重におもてなしの準備もしておきます」
「わかった…………しばらく独りにして」
「……………………」
母は何も言わずに部屋から出て行った。
初めての相手は………大好きな人が一番だよね。僕にとっての大事な人。大切な相手。
相手が男でなければいけないなんて決まっていない。
たとえ……男同士の交わしあいだとしても……。
それで、子孫……後継者が作れないとしても……。
神様を怒らせたとしても………。
この平和な世界が崩れ落ちたとしても………。
「僕達2人なら……………なんとかなるよね? クロノア」
ヒューポーはニッコリと微笑んだ。
翌日
「ええ! ヒューポーのお家に泊まれるの?!」
「うん……色々と準備してるからさ………もし来れるのなら」
「行くに決まってるさ! 何か持っていくものとかは?」
「ううん。特に必要なものは無いよ。大体のものはこっちで用意出来るから」
「じゃあ、今からでも」
「あっ! クロノア。あのさ…………前の服って……まだ置いてある?」
「うん。残してるけど……」
「もしよかったら…………僕にくれないかな?」
「別に良いけど……何に使うの」
「いや、あのさ、その〜。僕の家は広いから……何か物を置いておいても邪魔にならないし、
もし必要なときは言ってくれれば……いつでも返せるように……」
「わかった! じゃあちょっと待っててね」
数分後。クロノアは荷物を少しだけ用意し、ヒューポーと共に目的地へ向かって歩き出した。
「じゃあヒューポーのお家へ、るぷるどぅ!」
「………そんなに遠くないけどね」
クロノアとヒューポーは雑談をしながら歩いていく。
クロノアは無邪気に笑い、ヒューポーはその顔を見つめる。
目的地に到着するのにそれほど時間は掛からなかった。
「うわぁ……ヒューポーのお家って大きいねぇ。ボクのお家何個分かなぁ?」
「お城だからね………さ、入ろ」
2人は中へ入っていく。
城の中は広く入り組んでいて、うっかりすると迷子になりそうだった。
「じゃ、クロノアは適当に散歩してていいよ。僕はちょっと用事があるから」
「え? でも……迷子になりそう」
「大丈夫だよ。兵士の人たちもたくさんいるし、地図もあちらこちらにたくさん記されてるから」
「うん。じゃあ探検してくるよ♪」
クロノアはキョロキョロと辺りを見回しながら去っていった。
ヒューポーは壁にもたれかかり、溜め息をつく。
「もう少し……今は順調に進んでいる。もうすぐで………」
気のせいか、いつもより早く太陽が沈んでいくような気がした。
夕方
空は紅色に染まり、漆黒へと近づこうとしている。
気温が少しだけ下がり、空気が肌を刺すような感覚がある。
城中を探検したクロノアは、大きなソファのようなものに腰掛けていた。
「ふぃ〜。疲れたなぁ、お城のほとんどを制覇しちゃった」
「お疲れ様………浴場が使えるけど……入る? 食事までまだ時間があるからさ」
「いいの?! うん、入る入る! ねぇ、ヒューポーも一緒に入ろうよ♪」
(一緒に!? 僕とクロノアが………お風呂に……でも)
「残念だけど……今日は無理だよ。ゴメンねクロノア」
「え〜〜?! イイじゃん、入ろうよ〜?」
ニコニコと微笑みながら、クロノアはヒューポーに抱きつく。
ヒューポーは一瞬だけ動揺してしまったが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「もし今入っちゃったら………多分すべてが台無しになる気がするんだ。ガマン出来そうに無いからさ………」
「???」
「あ…何でもないよ。だから、悪いけど」
「ん〜。もう、しょうがないなぁ。じゃあ1人で入るよ。また今度2人で入ろうね」
クロノアは浴場へ走っていった。
走りながら帽子を脱ぎ、服のジッパーも下ろしている。
(狙ってやってるんだろうか? いや、天然だからこそ、クロノアらしさが…)
「うわーー!! なにこのお風呂!! すごいすごい! 広いよー!! わっふー!!!」
(ここから大浴場まで結構距離があるんだけどな………声が大きいってのも良いかもね)
ヒューポーはポリポリと頭を掻いた。
「さっき抱きつかれた時………危なかったな。ちょっとだけ……………湿っちゃった)
夜は少しずつ近づいている。
夕食
目の前にはごちそうがたくさん並べられている。
キラキラと輝きを放っているような気さえしてしまう。
クロノアは目を輝かせ、よだれを腕で拭った。
「こ、こ、こ、こんなゴチソウを毎日?!」
「そんなわけ無いよ。今日は大事なお客様が来るって事で特別に用意したんだよ。
大きなお祭りや大切な行事をする時はこんなもんだよ。普段は…普通な感じだね」
「あ、な〜んだ良かった。じゃ、いただきま〜す♪」
目の前のごちそうに手を伸ばし次々と平らげていく。
肉、野菜、果物はどれもサッパリとした味付けで後味もよい。
しかしこの料理にはある仕掛けがあったのだ。
「なんか……ピリピリするな。辛い…? 変わった調味料でも使ってるの?」
「う、うん………まぁね。隠し味は秘密だよ」
「なんだか気になるなぁ? でもこのピリピリした辛さがクセになりそう♪」
(クロノア………今のうちにたくさん食べて栄養をつけておいてね。この先たくさん体力を必要とするんだからね……。
さて、一応僕も口にしておくか。食べなきゃ怪しまれるもんね)
2人だけの夕食。2人だけの食事。2人だけの楽しみ。2人だけの…
「そういえばさ? 他の……女王さまや兵士さん達はどこにいるの?
何回か、お城のお手伝いさんみたいな人がお皿を片付けたり運んだりしてくれて……あっ、ありがとう♪
してくれてるみたいだけど……。他の場所で食事してるの?」
デザートを運んできてくれたお手伝いさんにお礼を言いつつ、クロノアは疑問に思ったことをヒューポーに質問した。
「僕も……みんなで食べようと思ったんだけどさ。今日は2人きりの方が良いだろうって。
また今度大勢でお食事しましょうって母上は言ってた。」
「じゃあ今日はボクとヒューポーの2人きりの食事ってことだね。
なんかこんな広い場所に2人きりってのも変だけど………まっ、いっか♪ あっ、ありがとう♪」
ジュースを運んでくれたお手伝いさんにお礼を言うクロノア。
お皿が出入りするたびにお礼を言うクロノアは律儀だなぁ…とヒューポーはなんとなくそう思った。
いや………自分自身が『王子』という立場に長い間いたせいで、お礼を言うことに対して疎くなってしまったのかもしれない。
「ごちそうさま♪ すっごく美味しかったよ♪ あのピリピリした味付けってデザートにまでしてるんだね」
「ちゃんと残さずに食べたんだね? ちゃ〜んと……全部食べたんだね?」
「うん! 残すなんて出来ないからね。いくつかお土産に持って帰っても良かったかも……えへへ」
「……………………体のほうで………何かおかしい感じはしないかい?」
ヒューポーの目は黒く輝き、口元は三日月のようになっている。
空は完全な暗黒に包まれ、星は殆ど見えない。
その中で、銀色の満月だけが異様な光を放っていた。
「んっと………別に何も変じゃないよ?」
(遅効性だからかな…? まぁすぐに効いたらつまらないから………ボクがやらなければいけないことを今のうちしておこう)
ヒューポーは席を立ち、クロノアの傍に近寄る。
「ちょっと早いけど……寝室のほうへ行こうよ」
「うん。部屋でお話したりして遊ぼう」
クロノアとヒューポーは食堂から出て、ヒューポーの部屋へと向かう。
「ん………………?」
「どうしたのクロノア。大丈夫?」
「な〜んか……フラフラするなぁ。お、お酒でも飲んじゃったのかなぁ? でもジュースしか飲んでないし…」
「ほら、肩を貸してあげるよ………もうすぐ僕の部屋に着くからね」
「うん、ありがとう」
先程食べた料理には色々なものがトッピングされていた。
お酒を造るときに使われる小さな果実。
いくつかの薬の原料に使われる軽い痺れ薬。
滋養強壮体力増強に効果覿面な栄養剤。
(アルコールで酔ってしまい、痺れ薬で抵抗は出来ず、栄養をたくさんつけたから今夜は寝付けない………完璧だね)
ヒューポーは心の中で満面の笑みを浮かべていた。
そして……2人はヒューポーの部屋まで辿り着いた。
(さて………最後の仕上げかな)
ヒューポーの部屋
「わふぅ……すっごく大きなベッドだぁ。わぁ、柱と屋根がベッドに付いてるよ♪ カーテンみたいなのも付いてる!
これなら3人……いやぁ、5人くらいでも眠れるかもね! それにこの部屋、なんだか良い匂いがするし♪」
「うん…………クロノア、大丈夫かな? ベッドに腰掛けようよ」
クロノアをベッドに座らせ、自分もその横に腰掛ける。
あらかじめ部屋に御香を焚いておいたため、部屋中に香りが満ちていた。
段々と眠気を誘うような甘い香り。
しかし、食事に混ぜられた栄養剤には覚醒作用のある成分も含んでいたため、眠りに落ちてしまう心配は無かった。
「………………」
「………………」
言葉が見つからずに、会話が途絶えてしまう。
ヒューポーはクロノアの顔を見つめ、クロノアはヒューポーの顔を見つめる。
口の中に溜まったツバを飲み込む。
「パ…パジャマに着替えようよ。お風呂に入ったのに……いつまでもこの服じゃ……」
慌てて立ち上がり、クローゼットを開ける。
「えっと……パジャマパジャマ…………」
柔らかい布で作られた寝間着を2つ取り出し、再びクロノアの横に座る。
「じゃ、じゃあ…き、着替えよっか?」
「うん。………自分の分のパジャマを家から持ってきたけど……ヒューポーが出してくれたこのパジャマにするね。へぇ、柔らかい布だなぁ♪」
服のジッパーをつまみ、下まで下ろす。
そしてクロノアは上半身の服を脱ぎ、ヒューポーが出してくれたパジャマに手を伸ばそうとする。
クロノアの上半身……。柔らかい毛に覆われた体。
頭の中で、前の服を思い出していた。
と、言っても以前は上半身には何も着ていなかった訳だが……。
もう少しだけ、クロノアの体を見ていたい。見て……観て……みて。
(もう……ガマンできないや)
「あっ、そうそう! 忘れてたよ!」
ヒューポーは大きな声を出す。
クロノアは手を止め、ヒューポーを見る。
服を脱ぎ、パジャマに手を伸ばそうとしたところで声をかけられたため、上は真っ裸の状態だ。
ヒューポーはクロノアの体をチラチラ見ながら、言葉を続ける。
「あっ……えっと……お、お菓子…みたいなのがあるんだ。愛用にしてる秘密のね。
クロノアにも食べてもらおうと思って………とっておいたからさ。
お、お菓子っていっても………小さな木の実なんだけど……結構美味しいと思うし……
フォーロックの一部の地方だけで獲れるんだ。び、瓶に入れて……隠してる……わけじゃないけど」
「わかったから少し落ち着いてよ。どんな味の木の実なのかな? 食べてみたいな♪」
ヒューポーは引き出しから瓶を取り出す。
中には赤色の実がたくさん入っている。大きさはサクランボと同じくらい。
実はこの木の実も儀式に必要な道具の一つである。
効能の詳細はすぐに分かるだろう。
「なんか今日はすっごく楽しいなぁ♪ 大きいお風呂に入って、美味しいご飯を食べて、おっきなベッドで…」
「クロノア」
「はにゃ? どしたの? 早くその木の実も食べたい……」
「僕は……クロノアのことが好きなんだけど……」
(あぁ……言ってしまった。僕がクロノアのことを好きだって………意外と頭は冴えてる)
「クロノアは……僕のこと好き?」
「えっ! いきなりだなぁ〜。えっと………う〜んと〜〜…………へへへ♪」
クロノアは小悪魔のような笑みを浮かべる。小さく尖った牙が僅かに光る。
そして、そのままヒューポーに抱きついた。
突然のことにヒューポーは驚く。押し倒されそうになるが、何とか持ちこたえる。
「もっちろん………大好きだよ♪ いきなりどうしたのさ? 何か企んでるなぁ?! ほーら、正直に白状しなよ。ほらほら♪」
チャームポイントである、大きな耳を器用に動かし、体をくすぐる。
そして頬ずりをする。 クロノアは無邪気に笑っている。
だが彼は気付いてなかった。その無邪気な行為が眠りについてる獣を起こそうとしていることを…。
邪悪な魔物を呼び覚まそうとしていることを…。 彼は気付いていない。
「……クロノア」
「ん? 白状する気に………んん?!」
唇を奪っていた。
ヒューポーはクロノアの唇を奪っていた。
すぐ近くにある顔を両手で掴み、自分の唇を相手の唇に押し付けていた。
右手を相手の首に。左手を相手の背中に回す。
予想外の出来事に、クロノアは混乱し、体は硬直している。
毛も逆立っているみたいだ。
「好きなんだ………嬉しいな」
「はにゃ? まにゃ! なな、何するの?! ヒューポー……んぐっ」
「ん……僕もクロノアのこと大好きだよ」
「ま、待って……」
一度、唇を離す。クロノアは息苦しそうに、息継ぎをする。
恥ずかしさからか、息苦しさからか、顔は赤くなりはじめている。
その隙にヒューポーは手元にある瓶のふたを開け、赤い実を取り出す。
そしてそれを口に含み、舌で転がし弄ぶ。
そのままの状態でもう一度クロノアにキスをする。
今度は深いキス。舌を絡ませ、赤い実をクロノアの口の中へと送り込む。
赤い実はドンドンと舌の上を転がっていき、唾液の波に呑まれ、喉の奥へと消えていった。
「ゴクッ! え…何? なんか飲み込んじゃったような」
「美味しい?」
「お、美味しいも何も……丸呑みだから味なんて」
「これはね……舌で味わうんじゃないんだ」
「??」
「ココでね……体で味わうんだよ」
手をクロノアの首筋に伸ばし、胸、腹部、太ももへと滑らせる。
手を股間まで滑らせたとき、クロノアは体をブルッと震わせた。
「ニャ!?」
「クロノア………」
「な、何を……ボク、何を飲んじゃったの?!」
「さっきの赤い実だよ」
「あ、なんだそれなら安心………じゃないよ! い、いきなり何するのさ。き……キスだなんて」
「いいじゃん………好きなんだから」
「で、でも……確かに好きだけど………そういう好きじゃ…」
「駄目」
ヒューポーはクロノアを押し倒した。
胸の毛に頬ずりし、頬と太ももを撫で回す。
クロノアは抵抗し、ヒューポーを押しのけようとする。
「だ、駄目ぇ!」
体を半分起こし、叫んだとき、クロノアの体に異変が起きた。
突然目眩がし、手足の力が少しずつ抜けていく。
頭の中がフラフラして、思考能力が低下する。
「はにゃ……? ぼ、ボクどうしちゃったの?」
「効いてきたんだよ。隠し味がね♪」
ヒューポーはマントを外し、自身の服を脱ぎ始めた。
「隠し味?」
「そう、隠し味。酔っ払って、痺れて、栄養がついて、妙な気分になる………儀式にはもってこいだよ」
「儀式? なんだか話が見えないんだけど」
「えっと………どう説明したらいいのかな?
まず……さっきの赤い実。 あれはね……媚薬なんだ。結構強い成分が入ってるよ。
多分フォーロックでも僕の国の儀式に近いものがあるのかもね」
「ビヤク? ビヤクって何? 美味しいの?」
「フフッ…相変わらずの食いしん坊だね。媚薬っていうのは…………やっぱ内緒。体で覚えた方が早いよ」
クロノアのズボンに手をかけ、少しずつ脱がしていく。
クロノアはうまく体を動かせずに、なすすべも無く生まれたままの姿にされようとしている。帽子もいつの間にか外されていた。
「ん……ひっかかっちゃって……わっ、意外と大きい」
「な、なにして………なんか……おちんちんが………変な感じするんだけど………おっきくなってる?」
媚薬と栄養剤の相乗効果のせいだろうか? クロノアのモノは通常よりも巨大化していた。
それをヒューポーはじっと見つめる。
そしておもむろに瓶に手を伸ばし、中から赤い実を取り出し、2個ほど飲み込む。
「ひゅ、ヒューポー、一体どうしちゃったの? いつものヒューポーじゃないような。それに儀式って…」
「月が満ちる夜……」
「え………?」
「月が満ちる夜……王家の血を引く者……ある年齢を迎え成熟し始めるとき……性交をすることで……神様を満足させなければいけない。
世界を安定させ、平和な世界を保つための儀式なんだよ。
でも…僕は……好きでもない相手と交わるなんて嫌なんだ。まして、初めてならなおさらだ。
大好きな相手とするのが一番良いと思ったんだよ。
大丈夫……本番は今回が初めてだけど、練習はたくさんしたから。
あとは………クロノアが僕のことを好きなのかどうかなんだ。
クロノア。僕のこと…………………好き?」
目の前にあるクロノアの棒を咥える。
蜜で滴っている棒の先を舌で舐める。クロノアは体を震わせ、ギュっと目を閉じる。
「そんなとこ舐めたら……汚いよぉ」
「へぇ? クロノアのここって汚いんだぁ♪」
「そんなことないよ! ちゃ、ちゃんとお風呂に入ったときは体を洗ってるし……」
「そう……美味しいな。クロノア……僕のこと………好き?」
「んっ………好きだけど。でも……………ボクは……親友としての好きだから……こういうことは……」
「そう………仕方ないね」
もうやめてくれるのかもしれない…。
クロノアはそう思ったが、違った。
ヒューポーは自分自身のモノを握り、ゆっくりと刺激し始めた。
その様子をクロノアは見続ける。
「あ…な、何してるの?」
「僕ね………いつもこんなことしてるんだ。クロノアのことが好きで…クロノアのことを想像して……毎日。
体に触れた日なんか2回くらい。日課みたいなものなんだよ。
クロノアは……コレ……したことあるの?」
「えっ…? な、何を?」
「アレ」
「アレって何?」
「?? こういうこと……したことないの? 一度も? 考えたことも?」
「だから…何を?」
(本当に何も知らないんだな。煩悩と本能が無いんだろうか? いや、本能はあるか。食欲と睡眠欲。無邪気すぎるというか何というか……)
「クロノアがしたくなくても………多分僕は無理やりしちゃうと思う。それでクロノアを傷つけちゃって……。
クロノアは僕のことを憎んじゃうかもしれない。でもそれでもいい。憎んでくれても構わない。
でも………僕は……しなくちゃいけないから。儀式を成就させるために」
(っていうのは建前で……。クロノアと触れ合えるのならなんでもいいんだけどね。正直言うと、儀式なんて…………オマケみたいなもんさ)
「ボク……ボク……怖いよ。なんか……今までのように……この先……今までのように振舞えないかもしれない。
ヒューポー。それでも……いいの? 何となくだけど………こういうこと、しちゃいけない気がする。儀式のためでも……」
「そうだね………そうなのかもしれない。でも譲るわけにはいかないんだ。国と世界のためだから。
でも……クロノアの意見も尊重したいとも思うし……………。
あ、良いこと考えたよ! 僕がクロノアに淫らな行為をしているときに………。
『ヒューポー大好き』って一万回言ってくれたら止めてあげても良いよ♪」
ヒューポーは自分の体をクロノアの上まで持っていき、組み敷くような形になる。
「い、一万回も! えっとそれじゃ……ヒューポーだいすきヒューポー大好きヒューポー大好きヒューポーだいす…」
「そんなんじゃ駄目だよ。早口言葉じゃあないんだからさ?
もっと心を込めて。じっと僕のことを見て、ゆっくりと言ってくれなきゃカウントしないよ」
「き、厳しいな。それじゃ……ヒューポー…だ、大好きだよ」
ドクンッ!
体が勝手に動いていた。
その言葉を聞くと同時に、自分の口で相手の口を塞ぎ、自分の体を押し付け、のしかかるようになっていた。
「んっ! んん………」
(媚薬よりも……言葉の力の方が強いなんて。もう少しで意識が飛びそうだったな。
やっぱり僕はクロノアのことが好きなんだな。
これは…今晩だけでも……出来るだけしておかないと。
こうして口を塞いでおけばクロノアは上手く喋れない。一万回も言わせるもんか)
互いの体温が互いに伝わり、どんどん体が熱を持っていく。
股間からは蜜が溢れていき、シーツと毛布を濡らしていく。
クロノアはヒューポーにしがみ付き、ヒューポーはクロノアを抱きしめる。
「んっ……はっ……はにゃ……あ、ヒューポー大好き。ヒューポーだいす……んっ!」
「ほら、まだ2回しか言ってないよ? あと9998回言わなきゃ」
クロノアの頭を持ち上げ、口を開かせる。
その口の中へ股間についてるモノを押し込み、咥えさせる。
熱を持った棒は、舌と頬の内側の肉に挟まれ、締め付けられる。
「んっ……んぐっ!んぐっ! ふ、くるひぃ……」
「噛んだりしないでね………大事なところだから。ホラ、舌を上手く使わなきゃいけないよ」
(クロノアの口を使わせることで喋れなくさせ、さらにもの凄い快感をも得ることが出来る。
今日の僕は冴えてるね。体中は太陽みたいに熱くなってるけどね)
「夢みたいだよ。クロノアに……こんなこと出来るなんて。
すぐに逝かないように気をつけなきゃ……………あ、クロノア結構上手いね」
「ん! ぐっ……んぐっ……」
「頑張って飲み込んでるのは唾液? それとも僕の体液? すっごく可愛いよクロノア」
息苦しいのだろうか? 涙目になりながらも必死になってしゃぶり続けている。
なんだか少し可哀相になってきた。口の中でしゃぶらせずに、口の外で舐めさせるようにしておこう。
棒をほんの少しだけ引き抜き、外に出す。
「苦しいのなら、口の外で舐めてもいいよ」
クロノアの頭を撫でながら言う。
自身のモノは最大近くにまで膨張し、トロッとした蜜が滴っている。
「ヒューポー、大好き。ヒューポー、大好き。ん………ペロッ」
「クロノア……本当に何も知らないの? すごく上手なんだけど」
ヒューポーの股間のモノはどんどんと熱を持って大きくなっている。
クロノアのも、少しずつ熱を持っていく。
部屋の中の甘い香りはどんどん濃くなっていく。
クロノアの頭を軽く抑え、棒を引き抜く。
焦点があってない目で、ヒューポーを見上げる。
ヒューポーはクロノアに覆いかぶさり、そのまま体の力を抜き、体重をかける。
酒と薬と赤い実と御香のせいで頭が正常に働いていないクロノアには、思考能力というものが時間につれて消えていった。
それはヒューポーも同様だった。
痺れ薬は服用していないが、食事の時にアルコールを摂取したことには変わりない。
そして赤い実を2個摂取した。部屋には甘い香りが充満。
ヒューポーはアルコールに耐性があるのだが、それでも頭はボ〜ッとしていた。
そのため、2人は本能に近い状態で動いていた。
ヒューポーは大の字になっているクロノアを抱きしめる。
クロノアはヒューポーにしがみ付く。
顔を正面から近づけ、そのままキスをする。
生まれたままの体を互いに擦り付けるように抱き合う。
股間と股間は上手い具合に密着し、粘膜と粘液が絡み合い、体を動かすたびに棒が擦れあい、音を立てる。
「なんか……ボクとヒューポーのちんちんが……当たってるだけなのに………気持ち良い。おかしくなりそ…」
「クロノア………クロノア……クロノア……」
「ヒューポー……ヒューポー……大好き…ヒューポー大好き。ヒューポー………んっ! なんか…出そう……まぎゃっ!」
「僕も……あっ……」
バシュッという音と同時に2人は射精した。
ヒューポーにとっては数十回若しくは数百回目。クロノアにとっては初めての経験。
まさに第2次性徴。成熟始め。体はまだまだ子供なのだが、機能は少しずつ発達し始めている。
10回近くの痙攣と射精が止む。
下半身はベタベタになり、ベッドは湿っている。
部屋の甘い御香の香りに混じって、雄の体液の匂いが混ざる。
ヒューポーはグッタリと横になり、クロノアは自分の体から出た白い液を眺めていた
「はぁ……やっぱり気持ち良いな………」
「ハァ…ハァ……これ……一体なんだったの?」
「だから言ってるじゃん。『儀式』だって」
自分の耳をクロノアの胸に押し付け、もう一度抱きしめる。
クロノアは顔を赤くして少し慌ててしまう。
「な、ど、どうしたの?」
「ドキドキしてる……。顔も赤くなってるし……カワイイ♪」
射精をしたおかげでほんの少しだけクールダウンし、思考能力を取り戻したおかげで
辺りを見回し自分を確認し考える余裕が出来た。
「あっ!そうだ。 ヒューポー、大好きだよ。ヒューポー大好き。ヒューポー大好き」
「まだ諦めてなかったんだね。ところで………今まで何回言ったのかちゃんと数えてるの?」
「…………………あ……………どうしよう。数えてないや」
「今ので9回目。あと9991回だよ。先は長いよ♪」
「うう……だ、大好きだよヒューポー………うぅ、本当にこれでいいのかなぁ?」
クロノアは頭を掻き、困ったような表情を浮かべる。
それを面白そうに観察するヒューポー。
そして指でクロノアの体を撫で回す。
「そういや、料理の隠し味の詳しい説明をまだしてなかったね。
まずは痺れ薬。食事してたとき、舌がピリピリしてたでしょ? あれはその薬の味なんだよ。
本当だったら一晩は動くことが出来ないんだけど、かなり薄めたからね。
手足が動かしづらい程度だから安心して。動かそうと思えば動かせるから。
次は…お酒の成分が含まれてる果実。
果実を絞って、その果汁を料理にたくさん加えたんだ。
僕は……色々なパーティーで飲むことがあるから、アルコールには耐性があるんだ。
クロノアにはもちろんそんな耐性は無いから………今のクロノアはベロベロな酔っ払いってこと♪
あぁ、でも二日酔いはしないから安心してよ。これはただ酔えるだけの果実だから。
それと……この赤い実。媚薬だってことはさっき言ったよね?
もう分かったと思うけど、これは気持ちよくなるものなんだ。
最後に……栄養剤。
これはね……名前の通りに栄養を含んでいるんだ。
体に必要な栄養、不要な栄養。それらがバランスよく含まれているんだよ。
液状なんだけどさ。これだけでは何の効果も無いんだ。水みたいなもん。
でも、食べ物や飲み物に混ぜることで効果を発揮するんだ。
非常時の非常食に使えば、長期のサバイバルもできるし。
食べ物を節約することも出来るんだ。
1食当たりで約3日分は持つよ。
でもクロノアはさっき……夕食はたっくさん食べたからね。どうなるかなぁ? フフフ♪」
「へ? え? そ、それじゃ……大丈夫なの? お腹壊したり体の調子が悪くなったりしちゃうの?」
「大丈夫だよ。『バランスよく含まれてる』って言ったでしょ?
バランスよく栄養を摂取したんだから、体の調子が悪くなるってことはないよ。
ほんのちょっと肉付きがよくなるだけだけど………そんなに急激に体が変わることは無いから」
「なんか………大丈夫なのかなぁ?」
「不安?」
「うん」
「それじゃ………たくさん運動して、たくさん出さなきゃ」
ヒューポーはクロノアの股間の棒を咥えた。
「わにゃっ?! へ、へ? まだやるの?」
「ん……ペロッ……当然だよ。1回だけで満足出来る訳ないよ。もっとしなくちゃいけない………。
安心してよ。栄養剤と媚薬を同時に摂ったから、力尽きることは無い。
多分……気絶でもしない限り何回でもイケルと思うよ。
覚醒作用のある調味料も料理に使われてたから…………今夜は寝かさない」
舌先で棒の先端と根元を舐めまわし、液を啜る。
するとどうだろうか? さっきまで萎えていたモノがあっというまに熱を持ち、膨張し始めたのだ。
これも栄養剤と媚薬のご利益であろう。
「ふにゃっ! な、なんか凄く気持ち良い。ボクの体……どうなってるの?
なんで……その………ちんちんを触ると……気持ち良いの?」
「それはね………神様が決めたことだから。ほら、もっと昇らせてあげるよ」
クロノアの太ももと棒の根元を擦り、しごく。
左手で棒の根元を掴み、右手の指で棒の真ん中を擦り、そして舌で棒の先端をくすぐる。
蜜がドプッとあふれ出し、クロノアは体を強張らせる。
「ゃっ……ん!! だ、駄目! で、出ちゃ………ニャッ!」
棒の先端からは、先ほどと変わらぬ量の液体が噴水のように出た。
それはヒューポーの口の中へ噴出し、そして溢れ出た。
口から零れた液体は、噴出口である棒へと再び垂れていく。
「クロノア……早いよ。感度が高いんだね」
「も、もう……駄目。ヒューポー、大好き………やっ!」
ヒューポーはクロノアの耳を掴む。力を入れて握る。
「あ、あんまり強く握らないで! 痛いよ」
「僕たち少しお喋りしすぎたね。夜明けまでの時間が勿体無いし…。
それに一応コレは儀式なんだ。
僕がクロノアを儀式の相手に選んだんだから、クロノアには、僕に奉仕し僕を満足させる義務がある。
選択の余地もないし、断ることも無理。
まぁそのために、色々な料理の隠し味が必要だったんだけどね」
「………………………わふぅ」
「だから………………ゴメンね、クロノア。僕はどうしても止めるつもりはないからね」
チャームポイントの一つである長い耳を掴み、咥える。
性器を刺激するのとは別の感覚と衝撃が襲い掛かってくる。
耳を舐められただけで、体は震え、上手く動かせない。
クロノアの性感帯は耳だったのであろうか?
「僕も……また……勃って……大きくなってきた………クロノア。良い耳だね、少し借りるよ」
ヒューポーは体を起こし、クロノアの耳を掴んで、それを股間へと持っていく。
両方の耳で自分の股間の棒を挟み込み、揉み解して刺激する。
あお向けの体勢が辛くなったため、クロノアはうつ伏せ……正確に言うと四つんばいのような体勢になる。
その姿はまさに『奉仕』だった。
クロノアはヒューポーの棒を何も言わずにジッと眺め続け
ヒューポーはクロノアの耳を使って、股間を刺激し続けていた。
(もしクロノアが女の子だったなら………耳だけじゃなくて………胸で……………あぁ鼻血出そう………。
いや、待てよ? もしクロノアが女の子だったら……僕はクロノアを好きになってたんだろうか?
男の子だからこそ、ここまで親密に、好きになって、愛して………。
そうじゃない! 男だとか女だとか関係なく、僕はクロノアが好きなんだ! 絶対そうだ!
でも…………クロノアはあまりその気じゃなさそうだし。
僕が女の子だったら良かったのかな?
でも僕は……『される』よりも『する』方が大好きで………あっ、もう…出そう)
一瞬だけ膨張&痙攣をし、先端から体液が吹き出た。
それはクロノアの顔を直撃し、綺麗でフワフワとフサフサした耳の毛を汚したのだ。
(顔射……ってやつなのかな? は、初めてしちゃった…………いや、そもそもこんなエッチな行為自体初めてで……)
頭の中は青空のように冴え、澄み渡っている。
一方のクロノアは顔中汁まみれで、泣きそうな顔をしている。
「ひ、酷いよヒューポー。耳は痛いし、顔はグチョグチョだし…………ヒック………耳はベタベタして痛いし
顔はグチョグチョだし、体は痛いし耳はグチョグチョで痛いし……ヒック)
(あ……泣きそう。どうしよう…? ここらで一つ。僕の得意な話術で………)
「クロノア……僕はね……ただ快楽のためにクロノアをオモチャにしてるわけじゃないんだよ?」
「ヒック……グスッ………嘘じゃないの?」
「え? いやぁ〜…………ゴホンッ! う、嘘じゃないよ。
実を言うと……僕はこれまで何回か………求婚されかけたり……求愛されたりと……
以前なんか召使いの人にまで誘われて………僕は傾いて堕ちそうになったけど。
断固拒否したんだ。何でだと思う?」
「わかんない……………」
「クロノアのことが好き………クロノア一筋だったからさ。
僕は本当に好きな相手としかしたくないんだ」
(求愛や求婚ってのは真っ赤な嘘なんだけどね。まぁクロノア一筋ってのは本当だけど)
クロノアは困ったような顔をしている。
ヒューポーは甘い瞳で見つめ、クロノアの顔を舐める。
クロノアの体毛とヒューポーの皮膚が触れ合う。
「ずっとクロノアと………一緒にいたいんだ。一緒に………。
クロノア、僕のお城で一生暮らさない?」
「だ、駄目だよ。ちゃんと明日にはお家に帰らないと…」
「そう…………。僕とクロノアが一緒に暮らす………僕がクロノアを飼うってのも面白いかも……」
ヒューポーは立ち上がり、クローゼットへと向かう。
戸を開け、中から何かを取り出す。
その手に持っていたのはクロノアの服だった。
赤いズボン、大きな首輪、靴。
クロノアが不要だと言った服であった。
「それ………僕の?」
「クロノアにはこっちの方が似合うと思うんだ。
あんな新しい服なんかより……この服の方が……クロノアには首輪が似合うよ♪」
クロノアへと近づいていき、大きな輪っかになっている首輪をクロノアの首にかける。
そして少しずつ締めていく。
首輪と首の隙間が少しずつ狭くなっていく。
クロノアは苦しそうに目を強く閉じる。
その様子をヒューポーは笑顔で眺める。
隙間がなくなるほど首輪を絞めた………と同時に首輪を再び緩めていった。
「クロノアは多分………どの世界へ行っても囚われの身なんだと思う。
どこの世界へ行ってもクロノアが安らげる所は無いのかもしれない。
でも……少なくともこの世界は……僕と一緒にいるこの世界では……クロノアは安らげると思うんだ。
自分でも何を言ってるのかよくわからないんだけどね。
まぁ…………他の何かにクロノアを奪われるくらいなら、僕が一足早くクロノアを奪う。
だから………クロノア、僕と一緒に……暮らそう」
クロノアは何も言わずに……ヒューポーにされるがままだった。
舐めて擦って刺激して触れ合って……体液を出しても出してもどんどん溢れ出てくる。
その度に互いの名前を呼び合う。
「クロノア、大好き。クロノア、大好き」
「ヒューポー、大好き。ヒューポー、大好き」
キスをする。舐めあう。手をつなぐ。押し付ける。
そんな単純作業を延々と繰り返す。
本能とはまた違うようなもので動いていたのかもしれない。
「ヒューポー………」
「ん、なに?」
「ボクは……どこにも行きたくない。だから………ヒューポー、ボクを離さないで。
怖いんだ。夢を見るたびに、違うボクが現れて、ボクを連れ去っていって………ボクは消えちゃうんだ。
これはただの夢だから心配は要らないのかもしれないけど。でも…………ボクは怖いんだ。
怖いから………。おかしいよね? なんか………今こんな話するなんて。
よくわかんなくて………ゴメン、何も分からない」
「分からなくていいよ。今は………何も考えなくて良いよ、クロノア」
ヒューポーはクロノアにキスをする。
クロノアはヒューポーにしがみ付くように抱きしめる。
そして……………。
夜は続いていく。
(ず〜〜っと一緒にいるからね。僕らの邪魔なんか誰にもさせないから。だから………今だけ……せめて)
この世界がずっと平和でありますように
儀式の夜から数日後
「ねぇ、ヒューポー! これはどこに運べば良いのさ?」
「適当に置いておけば良いよ! まぁどうせそこらに置いとけば……」
「ダ・メ・! ちゃんと自分の分は自分でしなくちゃ! なんでもかんでも使いの人にやらせるのは良くないよ」
「あ〜そう? じゃあクロノアの持ち物はぜ〜〜んぶクロノアが1人で…」
「あ、あ、困ったときはお互いさま! 協力しあおう!! ってことで手伝って♪」
「ハイハイわかったよ」
儀式の夜。2人がひたすら愛し合った夜。
クロノアが一万回目の『ヒューポー大好き』を言ったとき、夜は明けていた。
そのまま2人はベッドで一日中眠っていた。
そして……………。
「ねぇクロノア。本当にこれでよかったの? 僕のお城へお引越しするなんて……」
「ん………まぁね。引越しって言っても荷物は殆どないし……」
「急に……なんで?」
「…………………………一緒にいたいから」
クロノアはヒューポーにキスをした。
不意打ち。いきなりのキス。突然の襲撃。
呆気にとられるヒューポー。小悪魔のような笑みを浮かべるクロノア。呆然とする城の人たち。
「あ………あ……」
「いつまでもやられてばかりいるボクじゃないからね♪ わっふー!」
「く、クロノア!」
「へへへ、悔しかったら捕まえてみてよ」
「ま、待て〜! く、こうなったら絶対に服従させてやる!」
走り回る2人。その様子を眺める月の女王。
(王位継承と跡継ぎを創るための儀式だったのに…………まさかヒューポーが選んだ相手がクロノアさんだったなんて。
まぁある程度は予想できたことでしたけど……。
一応儀式は成功したから良かったのですが……………。この国とこの世界は今後大丈夫なのでしょうか?)
辺りには賑やかな笑い声がいつまでも響いていた。
こうして王子さまと少年はいつまでも一緒に暮らすこととなりました。
少年は王子さまに奉仕し仕えるようになりました。
これが少年の意志によるものなのか、王子さまの洗脳によるものなのかは定かではありません。
もしかしたらそのどちらでもないのかもしれません。
それは神様にしか、わからないのです。
儀式は成功し、祈願は成就されました。
だけど、王子さまと少年の間では新たな命を宿すことが出来ません。
この先、この国は一体どうなってしまうのでしょうか。
そして、この世界は安定したままでいられるのでしょうか。
平和な世界が崩れることなくいつまでも続くのでしょうか。
それはだれにもわかりません。
もしも真実と未来を知ることができる者が存在するというのなら……。
それを知ることが出来る者はただ1人だけ。
それは神様であるあなた。
そう、あなた自身が決めることなのです。
神様であり旅人でもあるアナタが……………。
平和な世界を創りあげていくのです…………………………。
〜 平和な世界と禁断の儀式 〜
FIN